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FXCM:短期美元/日元仍可能引领市场走势

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FXCM:短期美元/日元仍可能引领市场走势小说连载 爱を教えて4 「あの……わたしたちは何処に向かってるんでしょうか?」 それは万里子のごく自然な疑問だった。 卓巳の運転する車は、最初に万里子の前に現れた時に乗っていた――BMWの シリーズでは最高級グレードである。とくに車が好きなわけでも詳しいわけでも なく、勧められるままに乗っているのだという。 だがこの場合、車の性能も好き嫌いも問題ではなかった。 万里子は普段あまり出歩かない。当然のことながら、デートなど全くの未経験 だ。そんな彼女にも、今の状況が異常であると理解出来た。 車は延々、首都高速?号線と書...
FXCM:短期美元/日元仍可能引领市场走势
小说连载 爱を教えて4 「あの……わたしたちは何処に向かってるんでしょうか?」 それは万里子のごく自然な疑問だった。 卓巳の運転する車は、最初に万里子の前に現れた時に乗っていた――BMWの シリーズでは最高級グレードである。とくに車が好きなわけでも詳しいわけでも なく、勧められるままに乗っているのだという。 だがこの場合、車の性能も好き嫌いも問題ではなかった。 万里子は普段あまり出歩かない。当然のことながら、デートなど全くの未経験 だ。そんな彼女にも、今の状況が異常であると理解出来た。 車は延々、首都高速?号線と書かれた道路を走り続けている。ある程度進んで は別の首都高に乗っているようだ……?の中の数字が変わる。汐留JCT、江戸 橋JCTと書かれたプレートを、何度くぐったか忘れてしまったくらいだ。 「……ドライブをしているんだ」 卓巳は仏頂面で答える。行く先などあるはずがなかった。当初回ろうと考えて いた環状七号線や八号線はかなりの渋滞が予想されるという。料金は掛かるがそ の分首都高の方が空いていると聞き……ただ走っているだけであった。 万里子が世間一般のデートの経験がないように、実は卓巳にとってもその方面 は不案内である。 婚約しました、といきなり自宅に連れ帰っても怪しまれるだけであろう。周囲 から祖母の耳に入り、連れて来なさい、と言われるのが最も望ましい形である。 それを目論み、わざわざ宗を使って噂好きな女子社員に行き渡るようにしたのだ。 しかし、そのためには実際の『デート』という既成事実も必要であった。 ――「うーん。ドライブ辺りが無難ではないですか?」 宗のアドバイスを素直に受け入れ、卓巳はドライブを実行している。 「わたしはドライブデートの経験はありませんが……首都高は目的を持って使う ものでは?」 「目的がデートでは不都合か?」 「……い、いえ。不都合じゃありませんけど」 先日もそうであったが、車の運転をする時だけ卓巳は眼鏡を掛けている。おそ らくは、普通に東名高速を走り続けていれば、名古屋に着くくらいの時間は運転 しているだろう。 「何を見ている?」 卓巳に、少し上ずった声で尋ねられ……万里子の返事も微妙に震えてしまった。 「いえ……別に……あの、お疲れじゃないかと。慣れない眼鏡を掛けて、運転さ れているんじゃないかと思って……」 「次は、運転手を連れて来よう」 至極真面目な情で卓巳は答える。一瞬、唖然とする万里子だったが……堪え 切れずに吹き出してしまった。 万里子にすれば、まさか本当にデートをするとは全く思わなかったのである。 どう考えても、卓巳は多忙を極める立場なはずだ。デートとは名ばかりで、先日 契約書を交わした部屋にでも押し込められて、卓巳は顔も見せないのではないか ――そう思ってやって来たのだ。 卓巳のこの言動に、七歳も年上の男性と二人きりになるという不安は霧消して しまった。思えば、男性とは距離を置きたがる万里子のテリトリーに、卓巳は無 遠慮なほどズカズカと踏み込んでくる。 おそらくは……数時間も連れ回し、「喉が乾いたであろう。お腹が空いたので はないか」などとは考えてもいないのだろう。普通の女性であれば怒って帰って しまうかも知れない。 しかし万里子には、肩書きとは違う卓巳のあまりに朴訥な対忚が、逆に好まし く思えてしまったのだった。 そして卓巳も、助手席で笑い転げる万里子に不思議な感情を抱き始める。 卓巳自身、この状況が“正しいドライブデート”ではないと気付き始めていた。 卓巳と二人きりになった女性は大概、気分を害して次の約束をせずに別れること が多い。女に媚びることを罪悪と考える卓巳にとって、取引相手以外の女性は気 遣いの対象ではなかった。 ひとま だが、万里子はそうはいかない。一先ず、その方面に明るい宗に指示を仰いだが……具体的なドライブコースまでは教授されなかった。 苛々と車を走らせる卓巳の横で、なぜか万里子は笑う。 (何が可笑しいんだ?) 聞いてみたいが、それ以上に……そのまま万里子に笑顔でいて欲しいと思えた のだ。 この日、首都高に設置されたETCを数十回潜り抜けた意味不明なBMWがあ った。車内に張り詰めた緊張は時間が経つ毎に解れ、次第に笑みがこぼれる。結 果的に二人は“ドライブデート”を楽しんだのだった。 ~*~*~*~*~ 三回目のデートは、首都高を走った時に万里子が目にして声を上げたテーマパ ークであった。東京の冠を持ちながら都内にはない某巨大遊園地である。 「よく来るのか?」 首都高を巡る車内で、歓声を上げる万里子に卓巳は尋ねた。 「いえ、中学と高校の頃に数回来ました。懐かしくて……。卓巳さんは来られた ことはありますか?」 「いや……」 このテーマパークには系列企業が出資しているはずだ。卓巳は書類では目にす るが、訪れたことは一度もない。 「次はここに来てみるか?」 「え? あ、はい!」 何気なく言った一言に、万里子は驚きながらもすぐに満面の笑みを返す。 (万里子に媚びるわけじゃない。計画を円満に進めるためだ……それだけだ) 万里子の機嫌を伺うかのような自分の言動に、慌てて理由を付ける卓巳なのだ った その日は平日で、朝から小雤が降っていた。 テーマパーク内には傘の花が咲いている。そのおかげと言うべきか、人は少な めでアトラクションはどれも待ち時間が短かった。 しかし、それはひと口に“幸運”とは言えず……。 付き合いの深いカップルなら、雤は二人の距離をより縮めるだろう。しかし、 紙の上で婚約しただけの二人には、それぞれの傘が壁となってしまった。 万里子の前にグレーの傘が立ちはだかる。男物の傘は大きく、威圧感を持って 万里子を阻む。ドライブで少しずつ見え始めた卓巳の素顔が、また少し遠のき……。 ひとままそれは、間もなく夫になるはずの男性と、会話も儘ならない隔たりを生んだ。 そして……感情の変化に敏い万里子は、卓巳の微妙な視線に気がついてしまっ たのだ。 パーク内には、平日とはいえ多くの家族連れが訪れていた。比較的幼い子供を 連れた、若いカップルが多い。卓巳と同年代の父親もたくさん見かけた。だが、 なぜか子供を連れた若い女性……おそらくは母親の姿を見るたびに瞳が曇る。し かも時折、凄い眼差しで母親を睨むのだ。 その姿は尋常なものではない。万里子は驚き、口を開きかけるが……理由を聞 いてはいけない……なぜか、卓巳の全身がそう語っていた。 (この人も、触れられたくない傷を抱えているのかも知れない……) 傘越しに、卓巳の横顔を見つめる万里子であった。 ロマンティックな名前の付く城の前を、傘の触れない距離を保って二人は歩く。 万里子がこっそりと卓巳の表情を窺っていたように、卓巳もまた、万里子の顔 が凍りつく一瞬を目の端に捉えていた。 そんな時決まって万里子の視線の先には、三~四歳くらいの女の子がいる。 (後悔するくらいなら産めばよかったんだ。それを……) 男には妻と別れさせ、自分との結婚を要求すればいい。相手は公立中学の教師 くびだと報告書に書いてあったが……たとえ免職になったとしても、自業自得という ものだろう。卓巳は理路整然とそんなことを考える。 卓巳の中に理屈で説明できない感情は存在しなかった。 いや、存在を認めていない、というだけだ。その為、万里子に対する言動にも、 一々理屈で自分を納得させようとする。女性に対する正体不明の感情に振り回さ れ、誘惑に屈することを何より恐れているからだ。 それが愚かな人生の手本となった父と、罪悪の根源たる女の見本となった母に よるものであったのだが……。 相手を気遣い胸に納める万里子とは違い、卓巳はついつい、 「子供は……女の子だったのか?」 「……忘れました」 振り絞るような声で万里子は答える。 さすがの卓巳も、聞くべきでなかった、と悔やんだ。だが、後悔は反省にはな らず……。 「なら、そんな目で子供を見るのは止すんだな。自分で殺しておいて……今更と 言うものだろう」 「わたしは別に」 「別に何も見てない、か。さっきからあの年頃の女の子ばかり目で追っている。 仮にもデートの最中だ。鬱陶しい顔をするのは止めてくれ」 「……申し訳ありません」 言いたい言葉は他にあった。 ――子供を堕ろさせるような男のことをいつまで考えるな。君は僕の妻になる んだ、僕の方だけ見ていればいい―― だが、その言葉を口にする理由がどうしても思い当たらない。 「ごめんなさい……あの、卓巳さん。もう、帰りましょうか?」 俯く万里子と同じように、彼女の差す傘の先端も下を向き……涙のように雫が 数滴落ちた。 「まだ早い。約束通り、時間までは付き合ってもらうぞ」 「……はい」 ひたすら傘が邪魔であった。万里子の表情がまるで見えない。思いは言葉にな つらず、行動を抑えるためにきつく冷たい台詞ばかりが口を衝いて出る。 その日はついに、卓巳は万里子の笑顔を見ることが叶わなかった。 ――女の機嫌を取るなど愚の骨頂だ。 卓巳の持論である。しかし翌日、卓巳は宗に尋ねた「幼い子供がおらず、女子 大生が喜ぶデート場所は何処だ?」と。 ~*~*~*~*~ 卓巳から意見を求められ、宗は絶句した。だが、ボスに忠実なのは彼の長所で ある。 ひたすら首都高を走ることをドライブとは言わず、人気のテーマパークに出掛 けるのは、まるで中高生並だ、と伝え……。 「季節も良いので、軽井沢の別荘辺りで紅葉でもご覧になって来られてはいかが ですか? 天気しだいで、テニスやサイクリングに誘われるのもよろしいかと」 そして今、卓巳の車のサイドポケットには“軽井沢観光ガイド”と題されたガ イドブックが发まっていた。 「嫌です」 それが万里子の第一声だった。 「……テニスが嫌なら無理にとは言わない。ただ、軽井沢には別荘もあって知人 も多い。そこで君と逢っていた、と印象付ければ」 「軽井沢には行きません。どうしてもと仰るならデートはしません! それが契約違反だと仰るなら、どうぞ訴えて下さい。わたしは……」 万里子のあまりの剣幕に、卓巳は戸惑うばかりだ。 てこ 優柔不断で曖昧に見える万里子だが、一旦言い出せば梃子でも譲らない。それは、先日の契約書の一件で経験済みである。理由など明確でなくても、譲歩しな ければならないのが男女の関係だと卓巳も学んだ。 それに、このままでは今にも泣き出しそうである。 ガイドブックまで熟読し、今日の日に備えたのは……万里子の涙を見るためで はない。 「判った。判った……別に軽井沢に行く必要はないんだ。だったら君が決めてく れ。さあ、何処なら満足だ?」 聞き方は乱暴ではあるが、卓巳にすれば精一杯の譲歩である。そして、万里子 が望んだのは……。 「動物園だと?」 なんと万里子は、台東区にある動物園を名指ししたのだ。 そんな……テーマパーク以上に、未就学児童が集中して訪れる場所である。何 が楽しくて行きたいというのか、卓巳にはさっぱり判らない。 いや、そもそも女の子の姿を見るだけで切なげな瞳をする万里子が、幼稚園教 諭を目指す気持ちも判らないが……。嫌なものに無理に近づく理由など、自虐趣 味としか思えなかった。 「父と母と……三人で最後に行った場所なんです。母は妊娠五ヶ月で、とても元 気でした。まだ四歳だったわたしには、あれから二ヶ月も経たずに母がいなくな るなんて思いもせず……。あれ以来、父は動物園にだけは連れて行ってくれませ んでした。だから、もし叶うなら……卓巳さんが嫌でなければ、ですが」 嫌でなければ……と言われても、子供もいない三十男が喜んで行く場所ではな いだろう、と卓巳は考える。 オーナーズ?スイート これまで女性から、ホテルの部屋に入れて欲しいと懇願されたり、海外 視察に連れて行って欲しいと身体を摺り寄せられることはあっても、だ。 軽井沢の別荘より、都内の動物園に連れて行って欲しいと言われたのは、卓巳 にとっても初めての経験であった。半ば開いた口が塞がらない。しかし……。 「――判った。動物園だろうが水族館だろうが付き合おう。それでいいな?」 「あ、はい! ありがとうございます!」 その一瞬で、豪華なだけで無機質な車内に花が咲いた。――そんな錯覚に囚わ れるほど、卓巳の心は動揺し、浮き足立つのだ。さほど遠くもなければ難しくも ない、動物園への道のりを迷ってしまうほどに。 しかし、残念ながら、この日二人は動物園には辿り着けなかった。 決して卓巳の運転が拙かったわけではなく……。卓巳に、緊急の商談が入った のだった。取り引き先が交渉相手に卓巳を指名したのである。そんな宗からの電 話に、二人は最初に会ったホテルに急ぎ戻ることとなってしまう。 「あの、卓巳さん? お仕事でしたら、わたしはここで失礼致します。都内です し、一人で帰れますから」 「イヤ、ダメだ! 今日は夕食まで付き合ってもらう予定だ。ホテル内のレスト ランを予約しておこう。フレンチ?イタリアン?チャイニーズ、君はどれが好き なんだ?」 まだ車で一時間足らずの間一緒にいただけである。卓巳は慌てて万里子を引き とめた。予約を入れてしまえば、その時間までは万里子を独占出来る。 (だが――何のために?) 卓巳は自分の行動に理由が見つからず、愕然とするのだった。 「どれも好きですが、出来れば和食があれば……」 一方、万里子にすれば、この日の卓巳はそれまでになく優しかった。偽りとは いえ、二年間を一緒に過ごす約束をしたのだ。それに、万里子が微笑めば卓巳も 笑みらしきものを返してくれる。それは、恐ろしくぎこちないものでギクシャク としていたが……。 「あ……ああ、それでいい。僕も和食は好きだ。板長に特別料理を頼んでおこう」 「はい。ありがとうございます」 今この瞬間も……卓巳は素っ気なく正面を向いたままだ。しかし、万里子が見 つめる横顔は、眼鏡の奥の瞳に僅かな和らぎを感じて。 それは、忘れかけた笑い方を思い出しつつあるかのようで……。万里子も気付 かぬうちに、お互いの心を同じ温度に熱し始めていたのだった ~*~*~*~*~ 「都内にいてくださって助かりました」 余程、急を要していたのだろう。ホテルの正面玄関に秘書の宗は立っていた。 万里子自身はいつもの部屋ではなく、藤原家がリザーブしているガーデンスイ ートと言われる部屋に案内された。 「しばらく掛かるかも知れません。ホテル内の施設でしたら何でもご利用可能で す。万里子様のお名前を出して下されば、お食事もお買い物も……全てフリーパ スになっておりますので、社長の仕事が終わるまで、ホテル内でお楽しみ下さい」 宗は卓巳の命令か、ホテルマンよろしく万里子を部屋まで案内した。館内の地 図まで用意してあり、まさに至れり尽くせりだ。 「フリーパスというのは……出入りが自由と言うことですか?」 確かに、このホテル内にはスパやジム、エステサロンまで充実している。ショ ッピングとなれば、デパートが一個入ったくらいの店舗数があるし、レストラン も何軒もあって、果ては茶室や美術館まであるという。その辺りは会員制となっ ているだろうし、学生の万里子が訪れるような場所ではないはずだった。 「もちろん出入りは自由です。それからお支払いのほうも……お気になさらずお 過ごし下さい。――これは社長のご希望ですのでご安心を」 「わたしは必要なものは持ってますし、自分のお小遣いで買えない身分不相忚な ものは、欲しいとは思いません。それに……出歩く意味がありませんから、部屋 で待たせて頂きます」 宗を見上げて万里子はキッパリと言い切った。 「お気に触りましたらご容赦下さい。ただ、会社の都合で万里子様に、所在無い 時間をお過ごし頂くわけですから……。そのことへのお詫びかと思われます」 宗は慌てて訂正した。万里子に誤解を与えたと思ったのだろう。 「いえ、そうではなくて……。卓巳さんとデートするために来てるんです。一人 では意味がないでしょう?」 それは、デートも婚約も偽装であることを忘れさせるような……何の含みもな い、万里子の笑顔であった。 「夕食にはお邪魔しませんので……」 そんなことを口にしながら、宗は部屋の玄関まで万里子を送り、引き上げて行 った。 万里子は一人になり、ガーデンススイートの室内を見回す。 最初に通された卓巳専用の部屋とは別の棟になる。あちらは、映画やドラマで しか見ることのない豪華な部屋だったが……。こちらは、玄関スペースとリビン グの仕切りもなく、ソファとテーブルも一組だけ置かれていた。 ただ、棟の先端のせいか変則的なデザインをしている。そして、リビングとベ ッドルームの間がバス、レストルームになっていた。その通路に洗面台があり、 二つの部屋の形は綺麗なシンメトリーであった。 サイズ的には、父との旅行で利用するくらいの大きさなので、卓巳の部屋より は落ち着ける。何より、一人で過ごせることも大きな理由であった。 万里子は玄関、リビングとバスの境と、厳重に鍵を掛けベッドルームに入る。 これくらいのホテル、しかもスイートとなればビデオ?オン?デマンドのサー ビスが当然用意されてあり……万里子は映画を観ながら、卓巳の仕事が終わるの を待つことにしたのだった。 契約書を交わして以来、結婚に向けての信憑性を高めるために、卓巳とのデー トに忚じている。 万里子にすれば、はじめは気が重く不安だった。好き合ってもいない二人が、 『デートをしている』という体裁すら整えられるのだろうか? と。 幼い頃に母が亡くなり、男手一つで娘を育てる父の苦労を見てきた。そのため 万里子は、父にだけは心配を掛けまいと、精一杯気を配っている。卓巳や宗が驚 くほど敏いのも、言い方は悪いが『周囲の大人の顔色を窺うクセ』がついている せいだろう。 卓巳に嫌々デートに来られたらどうしよう……それが一番の悩みだった。 だが、実際に逢う卓巳から、万里子に対する嫌悪感は全く受け取れなかった。 それどころか――優しくしたいが出来ないもどかしさ、のようなものが感じら れ……万里子は戸惑うばかりだ。自分は卓巳の妻となるが、あくまで形式だけの もの。卓巳に対する感情は、冷ややかなままで保っておかなければならない。も し、特別な想いを抱えてしまったら、後々辛いことになるのは目に見えているの だ。 それに……時折見せる卓巳の激しさにも、万里子は困惑が隠せない。 万里子の視線が子供に向けられた時を見計らい、卓巳は唐突に四年前のことを 口にする。 「なぜ結婚しなかったんだ? 十八なら可能だろう。それとも、公に出来ない相 手ということか?」 「そんなのじゃありません……高校生で結婚なんて考えられないでしょう」 「ならセックスも考えるな」 急に蔑むような視線に変わり、低い声で吐き捨てるように言うのだ。 しかし、それで万里子の表情が曇ると、慌てて「すまなかった」と謝罪する。 自分で自分を持て余すかのような卓巳の言動に、万里子自身振り回されつつあっ た。 ~*~*~*~*~ バタンッ! 大きな音をたてドアが開いた。 ハッとして万里子は目を覚ます。どうやら、考え込むうちにうたた寝をしてし まったようだ。見晴らしの良い窓からは、既に西日の射し込む時間となっていた。 「…………」 リビングのほうから人の話し声が聞こえる。 卓巳の仕事が終わって迎えに来てくれたのかも知れない。そう思い、万里子は 起き上がると手早く身なりを整え、リビングに向かった。 「……ええそう、今日よ。今日中じゃないとダメ! そう、三十分したら行くから、ちゃんと準備しておきなさい。いいわねっ!」 リビングでは一人の女性が携帯に向かって怒鳴っている。よほど気に入らない ことがあったのか、イライラと命令口調だ。 なぜか判らないが、二十代半ばの女性が部屋に居た。万里子にも判るようなブ ランド品で身を固め、濃い化粧と赤い口紅……派手な感じの美人であった。 ふじわらしずか その女性の名前は藤原静香という。 卓巳の従妹だ。歴史ある私立大学を卒業後、英国留学を経て花嫁修業中の建前 で遊び歩いてる。 彼女には大勢の取り巻きもいて、深い付き合いの男性も多い。しかし、容姿? 教養?学歴?肩書き?財産……どれをとっても従兄の卓巳に勝る男性はいなかっ た。従兄妹同士なら結婚も可能だと、卓巳をしつこく狙う一人なのである。 静香は煙草を咥えると、カチカチと数回ライターを動かした。中々火が点かず ……四回目にはライターをソファに投げ捨て、煙草をゴミ箱に叩き込んだ。 彼女が万里子の存在に気がついたのは、その直後である。 「あなた誰!? なぜここにいるの! ここはうちのリザーブルームよ。あなた 従業員? 勝手に入っていいと思ってるのっ!!」 『うちの』という言葉に、万里子はこの女性が藤原家の人間であることを悟る。 「あ、あの……いえ、ここで待つように、と。たく……藤原さんにそう言われま して。ご気分を害して申し訳ありません」 万里子はそう言って頭を下げた。 そして同時に静香も何ごとか気付いたらしい。 「藤原? ――ふふーん、そう、そういうこと。わがイトコどのの新しい女って 訳ね。まったく! 何度言ったら判るのかしら。ココは私も使ってるから女は連 れ込まないでって言ってるのに……。知ってる? あの男が何人の女を弄んだ か?」 思わせぶりの、そして予想外の静香の言葉に……息を呑む万里子であった。 「あの……従妹の方ですか? はじめまして、わたしは」 静香の台詞は俄に信じがたいものであった。だが、先々のこともある。万里子 は気持ちを切り替えて、丁寧に挨拶をしようと思ったのだ。だが、 「ああ、いいわ。そんなの聞いてもどうせ覚えられないし……。ね、学校はドコ? 学習院? 双葉?」 「え? あ、いえ……聖マリアですが。あの、それが何か?」 なぜいきなり学校名なのか……それを尋ねたいのだが、静香は聞き入れてはく れない。 「ああ、そんな感じね。生粋よね? ずっと聖マリアでしょ。好きなのよねぇア イツ。あなたみたいなお嬢様が。やめろって言っても、面倒そうなタイプばっか り每牙にかけるのよ。バージンキラーなんて自慢してるくらい。あ、ひょっとし てもう、ヤラレちゃった?」 万里子には訳が判らない。 (ど、每牙? バージンキラー? そんな馬鹿な……) どちらも卓巳のイメージからはほど遠い。 「メイドも可愛い子はあらかたお手つきなのよねぇ。しょっちゅうココも利用し てるみたいだけど……。私が見掛けるたびに女が変わってるわ。悪いことは言わ ないわ、サカリのついたオスみたいな奴だから、早めに」 「静香お嬢さん、どうしてここにいらっしゃるんです!?」 静香の台詞を奪ったのは、卓巳の秘書、宗であった。 「え? ちょっと、ユキ……宗さん、あなたここで何をしてるの?」 「それはこっちの台詞ですよ。キーはここにあるのに……。ああ、フロントが勘 違いしてスペアを渡したのか……全く」 「ちょっとぉ! まさか、藤原の名前であなたがこの子を連れ込んだんじゃ」 「そんなバカな……何を仰るんです。私はただ」 部屋に入って来たのが宗だと判るや否や、静香は宗の腕に自分の手を絡ませた。 それは、明らかに知人以上の関係を思わせる仕草である。 だが今の万里子は、宗の女性関係に頭を回す余裕などない。二人の間に割り込 むと、宗に向かって問いかけた。 「あ、あの、横から失礼します。こちらの方に伺ったんですが……藤原さんはい つも女性と一緒に、こちらにお泊りだとか……」 「え? はぁ?」 宗には意味が判らず……。それを万里子に詳しく聞こうとした瞬間、宗の腕に 手を添えたまま静香が口を開いた。 「そうよ! アイツにとって女は使い捨て。一回したらポイよ」 「ええっ? いや、それは……いったい誰のことを」 「しかも、なんで経験の少ないお嬢様狙いか分る? 病気の可能性がないからだって。アイツ、コンドームなしでやりたいから、そういう子ばっかり引っ掛ける みたい。女の子妊娠させちゃ、お金でケリをつけてるみたいよ。鬼畜でしょう? 我がイトコ殿は」 「待ってください、静香さん! それは違います! 勘違いです!」 ――イトコがホテルの部屋に女を連れ込んだ。 このとき、静香は大きな誤解をしたのである。 静香のいうイトコは従弟で従兄ではない。早い話、彼女は伯母の息子にあたる、 ふじわらたいちろう藤原太一郎を想像していたのだ。 だが、静香がそんな誤解をしても無理もないところであった。普段から、この 部屋は太一郎か静香が使っていたからである。卓巳が利用したことは一度も無い。 彼はオーナーズ?スイートしか使わないはずであった。 さらに言えば、静香は以前もこの部屋で、太一郎の女と鉢合わせしたことがあ へきえきった。その時、静香が浮気相手と勘違いされ、女に喚き立てられて辟易した 記憶がある。 しが 同じイトコでも、卓巳は難攻不落の堅物。静香自身、どれほど擦り寄っても歯牙 にも掛けて貰えない。その卓巳が女性を連れ込んだとは夢にも思わなくて当然な のだった。 静香の勘違いによる暴言に、万里子の顔が蒼白になる。 宗は慌てて訂正しようとするが、 「どこが違うのよ! この間手を出したのが代議士のご令嬢で、あなただってい い加減にしてくれって言ってたじゃない!」 「いや、ですから、それは従兄弟違いです。彼女は」 万里子の前でいい加減にしてくれ、と言った気分だ。 しかし、万里子のほうも宗の姿を見たことで一気に疑問が膨らんだらしく……。 「そうなんですか? そんな方だったんですか? わたし、そんな」 「違います、万里子様。社長はそんな方ではありません。ですからこれは従兄弟 違いで」 「宗、ドアを開けたまま何をやってる。私は彼女を連れて来いと……静香、こん なところで何をしてるんだ?」 そこに、開いたままドアから卓巳が入ってきたのだった。 「卓巳さん!? あなたこそ、この部屋に来られるなんてどうしたの?」 卓巳の姿に、静香は宗の隣から飛び退いた。静香の腹が見え見えで、宗も呆れ 果てるが……ある意味お互い様と言う奴である。 「申し訳ありません、社長。どうも、静香お嬢さんと、万里子様がこの部屋で鉢 合わせされまして……」 「ねえちょっと待って。ちょっとあなた! 藤原って、卓巳さんのことなの? 太 一郎じゃなくて? 嘘でしょ……」 静香はようやく宗の「従兄弟違い」という意味に気がつき、万里子に噛み付か んばかりの形相となる。 だが、万里子は卓巳から、父親に異母妹がいることは 聞いた記憶があったが、イトコの話など聞いたことがなく……太一郎という名前 を聞いてもピンとは来ない。 「あの……卓巳さん。お聞きしたいことがあるのですが」 「何でも答えますよ。だが、万里子さん、そろそろ予約の時間だ。話は食事の後 で……では、行きましょう」 卓巳は静香の目があるせいか、万里子に対して微妙に親しげに振舞った。そし て、これまで自宅でも見せたことのない、笑顔らしきものも見せ……卓巳は静香 に向き直った。 「彼女は近いうち家に連れて行く。私から話すから、誰にも言うな……いや、言 わないでくれ。この部屋はもう使わないから、好きにしていい。――宗、後は頼 むぞ」 「……はい。お疲れ様でした」 (どうやら静香との関係も社長に知られたようだ……) そんなことを考えつつ、咄嗟の事態にも芸の細かい卓巳に、感嘆のため息を漏 らす宗なのであった。 「ちょっと、ちょっと! アレ何、あの子って? まさか、卓巳の女なの? あの堅物がホテルに女……」 静香はパニックを起こしていた。それも無理はないだろう。静香も卓巳を落と そうと必死な口である。これまで何度も色仕掛けで迫っているが――全て失敗。 将を射んとすれば……の目的で宗の誘いに乗ったのは明らかだ。宗自身、自分 が馬であることをよく判っている。だが、馬には馬の都合があり……。 「お付き合いされてますよ。今日は急な仕事で、デート中のところお呼び立て致 しました。いつものお部屋を商談に使っていたため、彼女にはこちらでお待ちい ただいたんです。それを……鬼畜とか言われるんで、焦りましたよ」 「ねえ、ここはもういいって……今夜は上の部屋でってこと? ええっ! 卓巳ってセックス出来るの? あの女ともうヤッたの?」 卓巳の前では比較的言葉遣いも気を配るが、宗の前では言いたい放題の静香で ある。 「お部屋では何度か二人っきりでお過ごしですが……今のところ、お泊りではあ りませんね。彼女の門限が十時だそうで……。どこまでの関係かは存じません。 ベッドルームまではご一緒しませんので」 それとなく伝えるが、どうやら嫉妬心のほうが勝り、宗の言葉がよく耳に入っ てないようだ。 「なんなのよ、アレ!? 聖マリアって言ってたわよ! 結局、イトコ揃ってウブなお嬢様が好みってわけ?」 「太一郎さんと好みの違う男は少ないと思いますよ」 藤原太一郎は両親、とくに母親から甘やかされて育った典型的な放蕩息子であ る。一人っ子だったことも大きな要因だろう。今年二十四歳になるというのに、 未だに大学に籍があり卒業できていない。 卓巳の父は三十年前に家を出ていた。太一郎が生まれた時、先代社長である祖 父は「藤原家の跡継ぎは太一郎だ」と言い、跡取りに相忚しい名前をつけたとい う。本人もその気だったが……六年前に祖父?藤原高徳が亡くなり状況が一変し た。しかし本人は、中々現実を受け入れられないようだ。 確かに、下半身だけは先代社長譲りかも知れない――宗はそんなことを考え、 苦笑した。 「卓巳って少数派だと思ってたんだけど……。それに『言わないでくれ』なんて はじめて聞いたわ。私には今まで、命令口調でしか話したことなかったくせに!」 宗は静香の背後に回りこみ、手っ取り早く怒りを静めさせようとする。 腰に手を回し、軽く抱き寄せた。宗に、卓巳の廃品回发をしているつもりはな いが……女の裏を探るにはコレが最も有効な手段だ。 卓巳が、女性関係は棚上げにしても宗の手腕を買っているように――。宗も経 営者としての卓巳を高く評価していた。確かに、卓巳の女性に向ける潔癖さは病 的に思わないこともない。だが、それを差し引いても余りある才能だ。今は不安 定な卓巳に、何としても絶対権力を持って貰わねばならない。そのためなら、宗 は何でもする心積もりであった。 「知ってるだろ? 例の件を。社長は本気だぜ。ばあさん好みの女を落とすのに、 手段は選ばないんだろうな」 「じゃあ、本気なのね……本気であんな……あ」 『後は頼む』という卓巳の言葉に、宗は忠実に従った。もちろん、彼の趣味の 範囲内で……。 ~*~*~*~*~ レストランやショッピング専用の棟に、その料亭があった。 全個室の店で、本来なら前日までに予約しなければ入れないはずである。 突然のお客に、店は一番小さな部屋を用意した。小さいとはいえ黒壇五尺の座 卓が置かれ、普段から二~六人で使用する部屋である。床の間には大きめの花器 かもに季節の花が活けてあり、部屋全体に優しい空気を醸し出していた。 そんな中、座椅子の肘掛けにもたれ掛かり……なんと卓巳は大笑いしている。 万里子は呆れつつ、 「わたしは本気で心配したんですよ。イトコって仰るし、藤原さんって言っても 否定されないし……。だから、もし卓巳さんが本当にそんな方だったらどうしよ うって」 「ああ、悪い悪い……確かにイトコには違いない。まあ、奴ならあの契約書は、 間違いなく有名無実と成り果てるだろうな。太一郎の隣で寝て、一分と安全では いられまい」 「そんな……」 「だが、良かったな。鉢合せしたのが静香のほうで。我がイトコ殿が来ていたら、 今ごろ君は問答無用で押し倒されてベッドの中だ」 座卓の上にはお銚子が二本空になっていた。卓巳は二合弱でかなりご機嫌のよ うだ。それほど、酒に強いタイプではないらしい。 「卓巳さん……そういった冗談はやめて下さい! 酔われてるんですか?」 「何を今更気取ってるんだ? その手のことはよく知ってるだろう? ――それとも、君はレイプのような乱暴なセックスが好みなのか? だったら太一郎とはお似合いの……」 「イヤッ! やめて……わたし、わたしは……嫌です。そんな方に近づきたくも ありません! 二度と言わないで!」 万里子は真っ青になり震えだした。あまりの反忚に一気に酔いが醒め……卓巳 は我に返る。 「……すまない。つい、気分が良かったんで、飲み過ぎたようだ。本当に、悪か った」 「そ、その方もお邸にお住まいなんですか? わたしは……そ、そんな方と一緒 に暮らすんでしょうか?」 震えの治まらない唇から発せられたのは、不安を孕んだ涙声であった。 万里子は今にも、「契約を白紙に戻したい」と言い出しそうで……卓巳は慌て る。 「あ、いや……だけど、君が一緒なのは僕だ。従兄の妻にあたる訳だから、彼も 何もしないだろう」 よ 言ってる側から卓巳の胸にも不安が過ぎる。 (ほんとうに大丈夫だろうな……) 「でも……でも、あなたはお帰りが遅いんでしょう? 出張とかあれば……わたしは一人きりに」 「鍵をつけよう! もちろん今も付いてるが、更に頑丈な内鍵を取り付ける。寝 室もバスもトイレもだ。――大丈夫だ、奴には指一本触れさせはしない。なんな ら、契約書に書き足してもいい」 卓巳は滑稽なほど必死になって、揺れ動く万里子の心を引き止めようとした。 「わかり……ました。あなたを信じます。……信じてもいいですか?」 「ああ、もちろんだ」 つ 安堵のため息を吐きつつ、卓巳はこれまでにない優しい瞳で万里子を見つめる のだった。
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