小柴胡湯は、中国・後漢時代に張仲景が著した『傷寒論』『金匱要略』が出典です。7種類の生
薬で構成されており、主薬である柴胡の主成分・サイコサポニンのもつ抗炎症効果が期待でき
る柴胡剤の基本処方です。慢性肝炎の治療薬として有名ですが、胸部や上腹部の炎症性疾患に
もよく用いられます。風邪やインフルエンザの中期以降に見られる、一定のリズムで発熱と悪
寒を繰り返す状態は、小柴胡湯の適応となります。
小柴胡湯とは
投与時の注意
使用目標
(証)
体力・腹力とも中等度で、胸脇苦満(季肋部の不快感、抵抗・圧痛)を目標に用いられる。一
般に、口苦、口粘、めまい、悪心・嘔吐、食欲不振、微熱、全身倦怠感、舌白苔(舌に白い苔
がついている)などを訴える人に良い。虚弱な小児でよくリンパ腺・扁桃腺が腫れる場合にも
使われる。
【脈証】弦
基礎・臨床・
EBM
使用目標は似ているが、より体力が充実し、胸脇苦満が強く、便秘が
ある場合に良い。
胸脇苦満は似ているが、不安、不眠、神経過敏などがあり、腹部大動
脈の拍動を触れる場合に良い。
胸脇苦満は似ているが、体力がやや低下し、両側腹直筋の緊張があり、
肩こり、発汗傾向などがある場合に良い。
参考文献:1)「漢方製剤 活用の手引き」(臨床情報センター)、2) 「呼吸器疾患漢方治療のてびき」(協和企画)、
「ファーストチョイスの漢方薬」(南山堂)、「漢方診療のレッスン」(金原出版)、ほか
禁忌(次の患者には投与しないこと)
1.?インタ フーェロン製剤を投与中の患者
2.?肝硬変、肝癌の患者(間質性肺炎が起こり、死亡等の重篤な転帰に至ることがある)。
3.?慢性肝炎における肝機能障害で血小板数が10万/mm2以下の患者(肝硬変が疑われる)。
また、甘草を含むので、偽アルドステロン症、ミオパシー、横紋筋融解症の発現に注意する。
カンゾウ含有製剤、グリチルリチン酸及びその塩類を含有する製剤との併用注意。
肝機能障害、黄疸が現れることがあるので十分注意し、異常が認められた場合は投与を中止、
適切な処置を行うこと。
・大柴胡湯
・柴胡加竜骨牡蛎湯
・柴胡桂枝湯
効能又は効果 Ⅰ.体力中等度で上腹部がはって苦しく、舌苔を生じ、口中不快、食欲不振、時により微熱、
悪心などのあるものの次の諸症:諸種の急性熱性病、肺炎、気管支炎、感冒、胸膜炎・肺結核
などの結核性諸疾患の補助療法、リンパ腺炎、慢性胃腸障害、産後回復不全
Ⅱ.慢性肝炎における肝機能障害の改善
(上記はツムラ医療用漢方製剤による)
胆石症、胆嚢炎、肝硬変、術後の肝障害、慢性腎炎、腎盂腎炎、咽頭炎、耳下腺炎、耳管炎、
耳管狭窄、中耳炎、鼻炎、副鼻腔炎、急・慢性扁桃炎、蕁麻疹、円形脱毛症、帯状疱疹、慢性
の化膿性皮膚疾患、月経前・中・後期の発熱、産後の回復不全、乳・幼児の便秘、免疫異常、
アレルギー性疾患、心身症、神経症、易感染児の体質改善
しょう さい こ とう
監修:佐藤 弘・木村 容子(東京女子医科大学東洋医学研究所)
応用疾患・
症状 ※1)
●食欲不振
●全身倦怠感
●胸脇苦満
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文献:
川合満ほか.Therapeutic research.1991,12(9),p.3029 関塚永一ほか.診断と治療.1995,83(3),p.579
岡部和彦ほか.診断と治療.1994,82(5),p.871 熊田博光.臨床成人病.1994,24(8),p.1103
内田英二ほか.臨床医薬.1997,13(18),p.4687 Sakaida,I.J Hepatol. 1998,28(2),p.298
Shimizu,I.et al.Hepatology.1999,29(1),p.149ほか
小柴胡湯
柴胡 半夏 黄 大棗 人参 甘草 生姜
警告 1)本剤の投与により、間質性肺炎が起こり、早期に適切な処置を行わない場合、死亡等の重
篤な転帰に至ることがあるので、患者の状態を十分観察し、発熱、咳嗽、呼吸困難、肺音の異
常(捻髪音)、胸部X線異常等があらわれた場合には、ただちに本剤の投与を中止すること。
2)発熱、咳嗽、呼吸困難等があらわれた場合には、本剤の服用を中止し、ただちに連絡するよ
う患者に対し注意を行うこと。
類似処方の使い分け
・気管支炎に伴う咳、痰、喘鳴、胸部ラ音など自他覚所見の改善が期待できる。
・C型慢性肝炎における肝機能障害、肝繊維化マーカーの改善が期待できる。
・肝障害の抑制作用、肝繊維化の抑制作用を合わせ持つ(ラット)。また、肝星細胞及び肝細胞
の酸化ストレスを抑制する(in vitro)。
今
【虚 実】
虚実 やや実 中間 やや虚
口苦、口粘
悪心・嘔吐
白い舌苔
めまい
微熱
腹証
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腹力中等度