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马场理惠子:《九章算术》译注稿05

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马场理惠子:《九章算术》译注稿05 23 Abstract "The Nine Chapters on the Mathematical Art" was the oldest book of mathematics in China before the unearthing of "Suan-shu shu." The aim of our research is to provide a complete translation and annotation of it including annotations of Liu-Hui(劉...
马场理惠子:《九章算术》译注稿05
23 Abstract "The Nine Chapters on the Mathematical Art" was the oldest book of mathematics in China before the unearthing of "Suan-shu shu." The aim of our research is to provide a complete translation and annotation of it including annotations of Liu-Hui(劉徽) and Li Chunfeng(李 淳風) from the viewpoint of our previous work on "Suan-shu shu." This is the fifth article based on our research and results, in which we studied problems 1 to 31 of Chapter 2, Sumi(粟米).  『九章算術』は『算数書』出土以前は数学書としては中国最古のものであった。我々は、 我々の『算数書』研究を起点に、『九章算術』の劉徽注、李淳風注を含めた訳注を完成さ せることを目的としている。 『九章算術』訳注†稿(5) 馬 場 理惠子  中国古算書研究会 大川 俊隆、小寺 裕、角谷 常子、田村 三郎 田村 誠、馬場 理惠子、張替 俊夫、矢崎 武人、吉村 昌之 Translation and Annotation of “The Nine Chapters on the Mathematical Art(九章算術)” Vol. 5 BABA Rieko  †This work was partially supported by Grant-in-Aid for Scientific Research (C) (20500879). 平成21年 2月26日 原稿受理 Osaka Sangyo University NII-Electronic Library Service 24 大阪産業大学論集 人文・社会科学編 6  本論文では、粟米章の算題(1)~(31)に対する訳注を与える。 九章算術巻第二 粟米(1)[1] 注: ( 1)「粟」はもみ殻のついた穀物。「米」は精米度合いによって名称が異なる。今、 この「粟」「米」をもって多くの穀物の代として章名に用いた。   9)李籍音義「上、相玉切、下、莫礼切。粟者、禾之未舂、米者、穀実之無穀。粟者、 米之率也。諸米不等、以粟為率、故曰粟米」。 [1][劉注]以御交質變易。 訓読 :以て交質(2)・変易(3)を御す。 注: ( 2)「交質」とは同質の物品を交換すること。「交」は「交換する」の意。「質」は 沼 田敬忠『小学九数名義諺解』によれば、形質であり、米銭等の形であるという。 しかし、我々は[一]~[三一]の穀物間の交換を交質、すなわち質を交 か えることと 解釈する。すぐ下の「変易」と対をなしていると考える。   ( 3)「変易」とは、上の質を交 か えるのとは対照的に、例えば物品から銭へと質が変わっ てしまう変換をいう。我々は[三二]~[四六]までの問題がこれに当たると考える。 そこで「以御交質変易」を「以て交質・変易を御す」と訓むことにする。 訳: この章では物品の交換と換算をおさめる。 粟米之法[2] 粟率五十 糲米三十 粺米二十七 糳米二十四 御米二十一 小 十三半 大 五十四 糲飯七十五 粺飯五十四 糳飯四十八 御飯四十二 菽、 荅、 麻、 麥各四十五 稻六十 豉六十三 飱九十 熟菽一百三半 糱[一]一百七十五 Osaka Sangyo University NII-Electronic Library Service 25 『九章算術』訳注稿(5)(馬場理惠子) 今有[3] 術曰、 以所有數乘所求率爲實、 以所有率爲法[4][5]。 實如法而一。 校訂 :[一] 2)郭書春は「糵」字に作るが、我々は「糱」字を用いる。 訓読 :粟米の法。     粟(4)率五十 糲米(5)三十    粺米(6)二十七 糳米(7)二十四    御米(8)二十一 小 (9)十三半    大 (10)五十四 糲飯(11)七十五    粺飯五十四 糳飯四十八    御飯(12)四十二 菽、 荅、 麻、 麦(13)各四十五    稲(14)六十 豉 (15)六十三    飱 (16)九十 熟菽(17)一百三半    糱 (18)一百七十五 今有術(19)に曰く、「有る所の数」を以て「求むる所の率」に乗じて実と為し、「有る所の率」 を以て法と為す(20)。実、法の如くして一とす。 注: ( 4)粟は別表の粟系統の穀物で未精米のもの。系統については14)「程禾」の注 1) 参照。   ( 5)糲米は脱穀した粟。『説文解字』七篇上には「糲、粟重一 為十六斗太半斗、 舂為米一斛曰糲、从米万声」とあり、『九章算術』の率と合致する。(16 2―3 :10 = 5: 3)。『史記』太史公自序「糲粱之食」に対する張晏の説では、「一斛粟七斗、米為糲」 となっており、『九章』の説と異なる。また『史記』李斯列伝「粢糲之食」の索隠 に「粢音資、糲音郎葛反。粢者稷也。糲者麤粟飯也」とある。   ( 6)粺米は 9分舂で精白された粟。『説文解字』七篇上に「粺、毇也」とあり、段注に「粺 者糲米一斛舂為九斗也」とある。『睡虎地秦簡』や『算数書』では「粺米」はなく、 「糳米」がそれに対応した用語として用いられている。   ( 7)糳米は 8分舂で精白された粟。『説文解字』七篇上に「糳、糲米一斛舂為八斗曰糳」 とあり、段注に「此糲米亦兼粟米言也。…糲米一斛舂為八斗也、与九章算術、毛 詩鄭箋皆合然。…」とある。   ( 8)御米は 7分舂で精白された粟。『詩経』大雅、蕩之什、召旻「彼疏斯粺」の鄭箋に「言 米之率、糲十、粺九、糳八、侍御七者、其術在九章粟米之法」とある。穀物の精 Osaka Sangyo University NII-Electronic Library Service 26 大阪産業大学論集 人文・社会科学編 6 白度数による比率はそれぞれ 30:27:24:21であるので、これと合致する。この ことから「御米」とは、「侍御米」の省略であることがわかる。「侍御米」とは極 めてよい米のことであり、天子の食用に供される米をいう。   ( 9)小 は細かいむぎこ。『広雅』釈草「小麦、麳也」。9)李籍音義「音敵。麦屑也。 細曰小 。麤曰大 」。『睡虎地秦簡』「倉律」や『算数書』「程禾」では と呼ば れている。    (10)大 は粗いむぎこ。『広雅』釈草「大麦、麰也」。    (1 1)糲飯は糲米を用いた飯。「飯」とは蒸した粟のことで、『太平御覧』引『周書』に「黄 帝始烝穀為飯」とあり、また同じく『太平御覧』引『春秋運斗樞』に「粟五変以 陽化、生而為苗、秀為禾、三変而粲、謂之粟、四変入臼、米出甲、五変而烝、飯 可食」とある。    (1 2)粺飯は粺米を用いた飯。 糳飯は糳米を用いた飯。 御飯は御米を用いた飯。    (1 3)菽は大豆。『毛詩』小雅「采菽」の「采菽采菽、筐之筥之」の鄭箋に「菽、大豆也」 とある。『広雅』釈草に「大豆、尗也」。 荅は小豆。『説文解字』一篇下「荅、小尗也。从艸合声」。『広雅』釈草「小豆、荅也」。    麻は大麻の実を指す。『詩経』豳風「七月」「九月叔苴」の伝に「叔、拾也。苴、 麻子也」とあり、その孔疏に「喪服注云、苴、麻之有実者也。然則叔苴謂拾取麻実、 以供食也」とあり、麻の実を拾い、それを食用に供するとする。殷代遺跡から糧 食としての大麻の実の出土例もある(『中国農業通史 夏商西周春秋巻』2007年)。『植 物名実図考』も、麻を胡麻とする説を斥け、大麻として理解する。    麦はむぎのこと。    (1 4)稲はいねのこと。    (1 5)豉は塩につけて熟成させた豆。『説文解字』七篇下「豉、俗 、从豆」。『説文解字』 七篇下「 、配塩幽尗也」。    (1 6)飱について 4)川原秀城、 8)李継閔は 9)李籍音義「飱音孫。説文曰、餔也」 に基づき「水漬けの飯」とする。しかしながら、「熟菽」との並びから考えると、 煮炊きした穀物もしくは豆類の一種と解釈するべきか。「飱」とは、乾いたものを 温めて調理し直したものをいう。『詩経』小雅「大東」の「有饛簋飱、有捄棘匕」 の毛伝に「饛満簋貌、飱、熟食、謂黍稷也」とある。    (1 7)熟菽は煮豆のこと。 Osaka Sangyo University NII-Electronic Library Service 27 『九章算術』訳注稿(5)(馬場理惠子)    (1 8)糱は馬王堆医書『五十二病方』等に数回見える。「闌者、爵(嚼)糱米、足(捉) 取汁而煎」(330簡)や「冶糱米、以乳汁和」(334簡)など。又、辥にも作られ「小 一犬、漰漰與辥半斗」(41簡)とある。これについて、馬継興『馬王堆古医書考 釈』に「櫱は、穀類(稲・麦・粟等を含む)の種を発芽させた後、酒を醸す麹であ る」とし、『説文』「糱、牙米也」、『玉篇』「麹也。牙生穀也」、段玉裁の注「生芽 之米也」、『説文通訓定声』「凡黍・稷・稲・粱、其米已出於糠者不芽、未出於糠者 漬覆之則芽。麦・豆、糠薄本不去之、故能芽」、『本草経集注』糱条の陶弘景の注「此 是以米為糱耳。非別有米名也」、『本草綱目』「蘇恭言、『凡穀皆可生者』。是矣。有粟・ 黍・穀・麦・豆諸糱。皆水浸脹、候生芽、曝乾去鬚、取其中米、炒研麪用。其功 皆主消導」を引用する。李籍の『音義』に「糱、麹糱也」と云うのをあわせれば、 糱は、穀物を発芽させ、乾燥させた後、芽を取って麹用にしたものであろう。「も やし」の義ではない。    (1 9)「今有術」とは、比例計算を用いる全ての問題に適用できる術。「今有術」とい う術名がみられるのは『九章』のみであり、以後用いられない。「今有」の表現は 『算数書』でもみられるが、算題の数値を与える(given)の意で用いられており、 そこでは比例計算に限定されていない。(『算数書』「里田」「今有廣二百廿里、從 三百五十里」など)。「今有術」は、「今有る所の数」を基準として、「今有る所の率」 と「求める所の率」から比例計算によって「求める所の数」を計算する術である。 冒頭に「今有…」の語句があるので「今有術」と呼ばれたものであろう。    また、 8)李継閔に「今有術」とは古代におけるこの種の計算術の名称で、宋元以 降「互換術」「互換乗除法」「異乗同除法」「三率準則法」等に改称されたとある。    (2 0)今有術の計算式。「有る所の数」とは与えられた物の量をいい、「求むる所の率」 とは求める物の率をいい、「有る所の率」とは与えられた物の率をいう。現在の比 例で示せば、「有る所の数」をa、「求むる所の率」をb、「有る所の率」をc、求め る所の数(答え)をxとすると、a:x = c:bになるので、x = a×b÷cとなる。 訳: 粟米の法   粟率50 糲米30   粺米27 糳米24   御米21 小 13半   大 54 糲飯75   粺飯54 糳飯48 Osaka Sangyo University NII-Electronic Library Service 28 大阪産業大学論集 人文・社会科学編 6   御飯42 菽、 荅、 麻、 麦各45   稲60 豉63   飱90 熟菽103半   糱175    今有術にいう。「今有る所の数(与えられた物の量)」を「求むる所の率(求める物の率)」 に掛けて実とし、「今有る所の率(与えられた物の率)」を法とする。実を法で割る。 [2][劉注]凡此諸率相與大通。其特相求各如本率、可約者約之。别術然也。 訓読 :凡そ此の諸率相与に大いに通ず(21)。其の特 た だ相求むるは各々本率(22)の如くし、約 すべき者は之を約す。別術も然る也(23)。 注: (2 1)「相与に大いに通じ」とは、冒頭で挙げられた全ての物品の比率は、互いに通 じ合う関係にあることを示したもの。    (2 2)「本率」とは、二物を換算する場合のそれぞれの率を指す。    (2 3)「別術然」とは、ここで挙げた以外の物品間でも、この計算法は通用するとい うこと。 訳: ここで挙げたそれぞれの比率は、お互いに全体に通じるものである。特に二物間で求 める場合には、各々ここに挙げた本率に従えばよい。約分することができるものは約 分しておく。他の計算法においても同様である。 [3][劉注]此都術也。凡九數以爲篇名、可以廣施諸率。所謂告往而知來、舉一隅而三隅反 者也。誠能分詭數之紛雜、通彼此之否塞、因物成率、審辨名分、平其偏頗、齊其參差、 則終無不歸於此術也。 訓読 :此れ都術也(24)。凡そ九数以て篇名と為し(25)、以て広く諸率に施すべし。所謂「往 を告げて来を知り(26)」、「一隅を挙げて三隅もて反す」者也(27)。誠に能く詭数の紛雑 を分かち、彼此の否塞を通じ(28)、物に因りて率を成し、名分を審弁し、其の偏頗を 平にし、其の参差(29)を斉うれば則ち終に此の術に帰せざるは無き也。 注: (2 4)「都術」とは比例計算における普遍的な計算法を指す。巻八方程章の劉徽注に も連立方程式の解法について「此都術也」とあり「都術」の語彙が用いられる。    (2 5)「九数」とは九つの章題をいう。16)p.16の訳参照。    (2 6)『論語』学而「告諸往而知来者」。    (2 7)『論語』述而「挙一隅不以三隅反則不復也」。    (2 8)「誠能分詭數之紛雜、通彼此之否塞」とは、怪しげな数量の複雑さを分別し、 Osaka Sangyo University NII-Electronic Library Service 29 『九章算術』訳注稿(5)(馬場理惠子) 互いの数量の比率関係を明らかにすることによって、異なる物品間での計算が可 能になることをいう。「詭」とは、怪しいという意。『淮南子』本経訓「詭文回波」 の高誘注に「詭文、竒異之文。回波若水波也」とある。    (2 9)「参差」については16)注(23)参照。 訳: これは比例計算における都術(普遍的な術)である。およそ九数は篇名となっており、 今有術を諸々の比例問題に用いることができる。所謂「往を告げて来を知り」、「一隅 を挙ぐるに三隅をもって反す」がごときである。誠に怪しげな数量の複雑さを分別し、 互いの滞りを通じさせ、物品に応じて比率を立て、名分を明らかにして、その偏りを ならし、その不揃いを整えていくと、最後にはこの術に帰結しないものはない。 [4][劉注]少者多之始、一者數之母。故爲率者必等之於一。據粟率五・糲率三、是粟五而爲一、 糲米三而爲一也。欲化粟爲米者、(糲)〔粟〕[一]當先本是一。一者謂以五約之、令五而爲一也。 訖、乃以三乘之、令一而爲三。如是則率至於一、以五爲三矣。然先除後乘、或有餘分。 故術反之。又完言之[二]、知粟五升爲糲米三升。以分言之、知粟一斗爲糲米五分斗之三。 以五爲母、三爲子。以粟求糲米者、〔以子〕[三]乘、其母報除也。然則所求之率常爲母也。 校訂 :[一]郭書春云う「「糲」は「粟」の誤り」と。今、郭氏の校訂に従う。    [二]郭書春云う「聚珍版・四庫本訛作『究』。其の後諸本従う」と。今、郭氏の校訂に従う。    [三]郭書春云う「聚珍版・四庫本案「此句有脱誤。當云『以子乘、其母報除也』」其 の後の諸本は此に依りて『以子』の二字を補う」と。今、郭氏の校訂に従う。 訓読 :少なる者は多の始まりにして、一なる者は数の母なり。故に率を為す者は必ず之を 一に等 ととの う。粟の率五、糲の率三に據れば、是れ粟五にして一と為し、糲米三にして一 と為す也。粟を化して米と為さんと欲すれば、粟当に本是れ一たるを先にすべし(30)。 一なる者は、五を以て之を約し、五にして一と為さしむを謂う也。訖れば乃ち三を以 て之に乗じ、一にして三と為さしむ。かくのごとくすれば則ち率は一に至りて、五を 以て三と為す。然れども先に除き後に乗ずれば、或いは余の分あらん。故に術は之を 反にす(31)。又完もて之を言えば、粟五升は、糲米三升と為るを知る。分を以て之を 言えば、粟一斗、糲米五分斗の三と為るを知る(32)。五を以て母と為し、三もて子と為す。 粟を以て糲米を求むれば、子を以て乗じ、其の母は、報除する也。然らば則ち求むる 所の率、常に母と為る也(34)。 注: (3 0)「本」とは 5及び 3をそれぞれ 1単位としたものをいう。    (3 1)「反」はひっくり返すの意。「今有術」では先にかけ算を行ってからわり算を行 うことをいう。 Osaka Sangyo University NII-Electronic Library Service 30 大阪産業大学論集 人文・社会科学編 6    (3 2)巻一方田章劉徽注に「又馬五匹、直金三斤、完全之率。分而言之、則爲一匹直 金五分斤之三」とあり、「完全の率」とは整数で表した比率の意で、これを分数を 用いて表せば、馬1匹に対し金 3―5となると述べている。ここでも同様に「完言之」 の「完」は整数の意であり、「分言之」と対応する句である。下文の「以分言之」 以下で粟1斗に対する糲米の数量が 3―5であることを述べている。    (3 3)「報除」については17)注(59)参照。    (3 4)[5]李注において劉徽注[4]の末尾「然則」以下の文章の逸脱が指摘される。注 (20)「今有術」の記述によれば、「有る所の率」を法(除数)とするとあり、劉徽 注はこれに合わない。李注に従い「所求之率常爲子、所有之率常爲母」と改める べき。 訳: 少というものは多の始まりであり、1というものは数の元となる数字である。ゆえに、 比率を考える場合には、必ずこれを 1に整える。粟の率が 5、糲米の率が 3であれば、 粟は5で1となり、糲米は 3で 1となる。粟を糲米に代えようとするならば、粟の率は 1単位に揃えることを先にしなければならない。この 1単位は、粟の率を 5で割った 値であり、5をもって 1単位にさせたものをいう。その作業が終わったならばそこで、 3をこれに掛け、 1単位としたものを 3にする。このようにすれば、則ち率は 1単位 に揃い、 5をもって 3となる。けれども、わり算を先に行いかけ算を後に行うと、時 に余りの分数が生じることがある。故に、術ではこれを逆に行う。さらにこれを整数 で表すならば、粟 5升は糲米 3升にあたることがわかる。分数でもってこれを言うな らば、粟 1斗は糲米 3―5斗にあたることがわかる。 5を分母とし、 3を分子とする。粟 をもって糲米を求めようとするならば、分子を掛けて、分母で「報除」するのである。 となれば、「求める所の率」は常に分母となる。 [5]臣淳風等謹按、宜云 「所求之率常爲子、所有之率常爲母」。 今乃云 「所求之率常爲母」者、 脱錯也。 訓読 :臣淳風等謹みて按ずるに、宜しく「所求之率常為子、所有之率常為母」と云うべし。 今乃ち「所求之率常為母」と云うは、脱錯也。 訳: 臣淳風等謹んで按じますに、「所求之率常為子、所有之率常為母」と改めるべきである。 今、劉徽の注では、「所求之率常為母」とあるが、ここには文章に脱落がある。 [一]今有粟一斗、欲爲糲米。問得幾何。荅曰、爲糲米六升。   術曰、以粟(米)〔求][一]糲米、三之、五而一[6] Osaka Sangyo University NII-Electronic Library Service 31 『九章算術』訳注稿(5)(馬場理惠子) 校訂 :[一]「米」は「求」の字の誤り。 訓読 :今、粟一斗有り、糲米と為さんと欲す。問う、得ること幾何ぞ。答えに曰う、糲米 六升と為す。術に曰う(35)、粟を以て糲米を求むるに、之を三し、五にして一とす(36)。 注: (3 5)以下、本章における「術曰」の「術」とは今有術のことである。    (3 6)粟と糲米との比率については、『算数書』等の資料でも同様の比率がみられる。 『算数書』「粟求米」「粟求米、因而三之、五而成一」、『算数書』「粟為米」「粟五爲 米三」。表参照 計算は、10×3÷5 = 6、よって粟 1斗は糲米 6升となる。 訳: 今、粟 1斗があり、糲米に換えたい。問う、どれだけとなるか。答えにいう、糲米 6 升となる。術にいう、粟から糲米を求めるには、これを 3倍して、 5で割る。 九章算術 ①粟系統の穀物 粟 糲米 粺米 糳米 御米 糲飯 粺飯 糳飯 御飯 50 30 27 24 21 75 54 48 42 ②稲系統の穀物 稲 60 ③麦・豆類系統の穀物 小 大 菽、荅、麻、麦 糱 豉 飱 熟菽 13.5 54 45 175 63 90 103.5 睡虎地秦簡 ①粟系統の穀物 (禾)粟 糲米 糳米 毇米 50 30 27 24 ②稲系統の穀物 粟 米 粲毇米 60 30 20 ③麦・豆類系統の穀物 麦 13.5 45 算数書 ①粟系統の穀物 (禾)粟 糲米 糳米 毇米 50 30 27 24 ②稲系統の穀物 (稲)粟 米 毇粲米 60 30 20 ③麦・豆類系統の穀物 菽、荅、麻、麦 13.5 45 説文解字 ①粟系統の穀物 粟 糲 糳 毇 50 30 27 24 ②稲系統の穀物 粟 毇 粲 60 30 20 ③麦・豆類系統の穀物 麦 13.5 45 Osaka Sangyo University NII-Electronic Library Service 32 大阪産業大学論集 人文・社会科学編 6 [6]臣淳風等謹按、 都術、 以所求率乘所有數、 以所有率爲法。 此術以粟求米、 故粟爲所有 數。 三是米率、 故三爲所求率。 五爲粟率、 故五爲所有率。 粟率五十、 米率三十、 退位求之、 故唯云三 ・五也。 訓読 :臣淳風等謹みて按ずるに、都術は、「求むる所の率」を以て「有る所の数」に乗じ、「有 る所の率」を以て法と為す。此の術、粟を以て米を求む、故に粟を「有る所の数」と為す。 三、是れ米の率なり、故に三を「求むる所の率」と為す。五を粟の率と為す、故に五 を「有る所の率」と為す。粟の率五十、米の率三十、位を退け之を求む(37)、故に唯だ三・ 五と云う也。 注: (3 7)「退位」とは、算木において位を下げる操作をいう。巻四少広章劉徽注に「微 數無名者以爲分子、其一退以十爲母、其再退以百爲母」とある。 訳: 臣淳風等謹んで按じますに、都術では、「求める所の率」を「有る所の数」に掛けて、「有 る所の率」でこれを割る。この術は、粟から糲米を求めようとするものであり、その ため粟を「有る所の数」とする。 3は糲米の率であるので、 3を「求める所の率」と する。 5は粟の率であるので、 5を「有る所の率」とする。粟の率50、糲米の率30に おいて、位を下げるとこれが求められる。したがって、ただ 3、5とだけいうのである。 [二]今有粟二斗一升、欲爲粺米。問得幾何。荅曰、爲粺米一斗一升五十分升之 十七。  術曰、以粟(米)〔求〕[一]粺米、二十七之、五十而一[7]。 校訂 :[一]「米」は「求」の字の誤り。 訓読 :今、粟二斗一升有り、粺米と為さんと欲す。問う、得ること幾何ぞ。答えに曰う、 粺米一斗一升五十分升の十七と為す。   術に曰う、粟を以て粺米を求むるに、之を二十七して、五十にして一とす(38)。 注: (3 8)計算は、21×27÷50 = 1117―50、よって粟 2斗 1升は 粺米 1斗 1 17―50升となる。 訳: 今、粟 2斗 1升があり、粺米に換えたい。問う、どれだけとなるか。答えにいう、粺 米は 1斗 1 17―50升である。   術にいう、粟から粺米を求めるには、これを27倍して、50で割る。 Osaka Sangyo University NII-Electronic Library Service 33 『九章算術』訳注稿(5)(馬場理惠子) [7]臣淳風等謹按、 粺米之率二十有七、 故直以二十七之、 五十而一也。 訓読 :臣淳風等謹みて按ずるに、粺米の率は二十有七、故に直ちに以て之を二十七し、 五十にして一とする也。 訳: 臣淳風等謹んで按じますに、粺米の率は27であるので、ただちにこれに27を掛け、50 で割る。 [三]今有粟四斗五升、欲爲糳米。問得幾何。荅曰、爲糳米二斗一升五分升之三。  術曰、以粟(米)〔求〕[一]糳米、十二之、二十五而一[8]。 校訂 :[一]「米」は「求」の字の誤り。 訓読 :今、粟四斗五升有り、糳米と為さんと欲す。問う、得ること幾何ぞ。答えに曰う、 糳米二斗一升五分升の三と為す。   術に曰う、粟を以て糳米を求むるに、之を十二して、二十五にして一とす(39)。 注: (3 9)計算は、45×12÷25 = 21 3―5 、よって粟 4斗 5升は 糳米 2斗 1 3―5 升となる。 訳: 今、粟 4斗 5升があり、糳米に換えたい。問う、どれだけとなるか。答えにいう、糳 米 2斗 1 3―5 升である。   術にいう、粟から糳米を求めるには、これを12倍して、25で割る。 [8]臣淳風等謹按、 糳米之率二十有四、 以爲率太繁、 故因而半之。 故半所求之率、 以乘所 有之數。 所求之率既減半、 所有之率亦減半。 是故十二乘之、 二十五而一也。 訓読 :臣淳風等謹みて按ずるに、糳米の率は二十有四、以て率と為すは太だ繁なり、故に 因りて之を半にす。故に「求むる所の率」を半し、以て「有る所の数」に乗ず。「求 むる所の率」既に半に減ずれば、「有る所の率」も亦た半に減ず。是の故に十二を之 に乗じ、二十五にして一とする也(40)。 注: (4 0)李注は、[三]の計算法は計算を簡略にするために、糳米の率24(求むる所の率) を半分の12に約し、またそれに応じて粟の率50(有る所の率)も半分の25に約して いることを説明している。 訳: 臣淳風等謹んで按じますに、糳米の率は24であり、この数を率として計算するのはと ても煩わしい、したがってこれを半分の値にし、さらに「求める所の率」も半分にし、 Osaka Sangyo University NII-Electronic Library Service 34 大阪産業大学論集 人文・社会科学編 6 そして「有る所の数」に掛ける。「求める所の率」がすでに半分にしてあるので、「有 る所の率」もまた半分にする。このため、12をこれに掛けて、25で割る。 [四]今有粟七斗九升、欲爲御米。問得幾何。荅曰、爲御米三斗三升五十分升之九。  術曰、以粟求御米、二十一之、五十而一。 訓読 :今、粟七斗九升有り、御米と為さんと欲す。問う、得ること幾何ぞ。答えに曰う、 御米三斗三升五十分升の九と為す。   術に曰う、粟を以て御米を求むるに、之を二十一して、五十にして一とす(41)。 注: (4 1)計算は、79×21÷50 = 33 9―50、よって粟 7斗 9升は御米 3斗 3 9―50升となる。 訳: 今、粟 7斗 9升があり、御米に換えたい。問う、どれだけとなるか。答えにいう、御 米 3斗 3 9―50升となる。   術にいう、粟から御米を求めるには、これを21倍して、50で割る。 [五]今有粟一斗、欲爲小 。問得幾何。荅曰、爲小 二升一十分升之七。  術曰、以粟求小 、二十七之、百而一[9]。 訓読 :今、粟一斗有り、小 と為さんと欲す。問う、得ること幾何ぞ。答えに曰う、小 二升一十分升の七と為す。   術に曰う、粟を以て小 を求むるに、之を二十七して、百にして一とす(42)。 注: (42)計算は10×27÷100 = 2 7―10、よって粟 1斗は小 2 7―10升となる。 訳: 今、粟 1斗があり、小 に換えたい。問う、どれだけとなるか。答えにいう、小 2 7―10升となる。   術にいう、粟から小 を求めるには、これを27倍して、100で割る。 [9]臣淳風等謹按、 小 之率十三有半、 半者二爲母、 以二通之、 得二十七、 爲所求率。 又 以母二通其粟率、 得一百、 爲所有率。 凡本率有分者、 須即乘除也。 他皆倣此。 訓読 :臣淳風等謹みて按ずるに、小 の率十三有半、半なる者は二を母と為し、二を以 Osaka Sangyo University NII-Electronic Library Service 35 『九章算術』訳注稿(5)(馬場理惠子) て之を通じ、二十七を得て、「求むる所の率」と為す。又母二を以て其の粟の率を通じ、 一百を得て、「有る所の率」と為す(43)。凡そ本率に分ある者は、須く即ち乗除する也。 他皆此に倣う。 注: (4 3)「半」がある場合の計算方法。13 1―2 を通分すると、27という値がでる。これを 「求むる所の率」とする。粟の率(有る所の率)についても同様に 2で通分すると、 100という値がでる。このように値を整えてから計算することを説明する。 訳: 臣淳風等謹んで按じますに、小 の率は13半であり、「半」は 2を分母とするので、 2でもって通分し、27の値を得て、「求める所の率」とする。また、分母 2でその粟 の率を通分し、100の値を得て、「有る所の率」とする。およそ本率で分数があるものは、 みな乗除する。他もみなこれと同様に計算する。 [六]今有粟九斗八升、欲爲大 。問得幾何。荅曰、爲大 一十斗五升二十五分 升之二十一。  術曰、以粟求大 、二十七之、二十五而一[10]。 訓読 :今、粟九斗八升あり、大 と為さんと欲す。問う、得ること幾何ぞ。答えに曰う、 大 一十斗五升二十五分升の二十一と為す。   術に曰う、粟を以て大 を求むるに、之を二十七して、二十五にして一とす(44)。 注: (44)計算は98×27÷25 = 10521―25、よって粟 9斗 8升は大 10斗 5 21―25升となる。 訳: 今、粟 9斗 8升があり、大 に換えたい。問う、どれだけとなるか。答えにいう、 大 は10斗 5 21―25升となる。   術にいう、粟から大 を求めるには、これを27倍して、25で割る。 [10]臣淳風等謹按、 大 之率五十有四、 因其可半、 故二十七之。 亦如粟求糳米、 半其二率。 訓読 :臣淳風等謹みて按ずるに、大 の率五十有四、其の半にすべきに因りての故に之 を二十七す。亦た粟もて糳米を求むるが如く(45)、其の二率を半にす。 訳: 臣淳風等謹んで按じますに、大 の率は54であり、値を半分の27に約することがで きるので、それ故これに27を掛けるのである。またそれは粟から糳米を求めるのと同 様に、その2つの率(大 の率54、粟の率50)をともに半分に約する。 注: (45)粟から糳米を求める計算については[三]参照。 Osaka Sangyo University NII-Electronic Library Service 36 大阪産業大学論集 人文・社会科学編 6 [七]今有粟二斗三升、欲爲糲飯。問得幾何。荅曰、爲糲飯三斗四升半。  術曰、以粟求糲飯、三之、二而一[11]。 訓読 :今、粟二斗三升有り、糲飯と為さんと欲す。問う、得ること幾何ぞ。答えに曰う、 糲飯三斗四升半と為す。   術に曰う、粟を以て糲飯を求むるに、之を三して、二にして一とす(46)。 注: (4 6)計算は23× 3 ÷ 2 = 34 1―2 、よって粟 2斗 3升は糲飯 3斗 4升半となる。 訳: 今、粟 2斗 3升があり、糲飯に換えたい。問う、どれだけとなるか。答えにいう、糲 飯 3斗 4 1―2 升となる。   術にいう、粟から糲飯を求めるには、これを 3倍して、 2で割る。 [11]臣淳風等謹按、 糲飯之率七十有五。 粟求糲飯、 合以[一]此數乘之。 今以等數二十有五 約其二率、 所求之率得三、 所有之率得二。 故以三乘二除。 校訂 :[一]郭書春云う「文淵閣本訛作『此』」と。 訓読 :臣淳風等謹みて按ずるに、糲飯の率七十有五、粟もて糲飯を求むるに、合に此数を 以て之に乗ずべし。今等数(47)二十有五を以てその二率を約し、「求むる所の率」は三 を得て、「有る所の率」は二を得。故に三を以て乗じて二もて除す。 注: (4 7)「等数」は最大公約数。16)注(20)参照。 訳: 臣淳風等謹んで按じますに、糲飯の率は75であり、粟から糲飯を求めるには、まさに 粟の数量を糲飯の率に掛けなければならない。今、等数(最大公約数)25でもって2 つの率を約すると、「求める所の率」は 3となり、「有る所の率」は 2となる、ゆえに 3倍して 2で割る。 [八]今有粟三斗六升、欲爲粺飯。問得幾何。荅曰、爲粺飯三斗八升二十五分升之 二十二。  術曰、以粟求粺飯、二十七之、二十五而一[12]。 訓読 :今、粟三斗六升有り、粺飯と為さんと欲す。問う、得ること幾何ぞ。答えに曰う、 粺飯三斗八升二十五分升の二十二と為す。   術に曰う、粟を以て粺飯を求むるに、之を二十七して、二十五にして一とす(48)。 Osaka Sangyo University NII-Electronic Library Service 37 『九章算術』訳注稿(5)(馬場理惠子) 注: (48)計算は36×27÷25 = 3822―25、よって粟 3斗 6升は 粺飯 3斗 8 22―25升となる。 訳: 今、粟 3斗 6升があり、粺飯に換えたい。問う、どれだけとなるか。答えにいう、粺 飯 3斗 8 22―25升となる。   術にいう、粟から粺飯を求めるには、これを27倍して、25で割る。 [12]臣淳風等謹按、 此術與大 多同。 訓読 :臣淳風等謹みて按ずるに、此の術、大 と多く同じ(49)。 注: (4 9)[六]の粟を大 に換算する術でも「求める所の率」を27とし、「有る所の率」 を25としているので、同様の計算式となることを指摘している。 訳: 臣淳風等謹んで按じますに、この術と(粟から)大 (を求める)の術とは殆ど同じ である。 [九]今有粟八斗六升、欲爲糳飯。問得幾何。荅曰、爲糳飯八斗二升二十五分升之 一十四。  術曰、以粟求糳飯、二十四之、二十五而一[13]。 訓読 :今、粟八斗六升有り、糳飯と為さんと欲す。問う、得ること幾何ぞ。答えに曰う、 糳飯八斗二升二十五分升の一十四と為す。   術に曰う、粟を以て糳飯を求むるに、之を二十四して、二十五にして一とす(50)。 注: (50)計算は86×24÷25 = 8214―25、よって粟 8斗 6升は 糳飯 8斗 2 14―25升となる。 訳: 今、粟 8斗 6升があり、糳飯に換えたい。問う、どれだけとなるか。答えにいう、糳 飯 8斗 2 14―25升となる。   術にいう、粟から糳飯を求めるには、これを24倍して、25で割る。 [13]臣淳風等謹按、 糳飯率四十八、 此亦半二率而乘除。 訓読 :臣淳風等謹みて按ずるに、糳飯の率四十八、此も亦た二率を半にして乗除す。 訳: 臣淳風等謹んで按じますに、糳飯の率は48であり、これもまた2つの率(粟の率50、 糳飯の率48)を半分に約してから乗除する。 Osaka Sangyo University NII-Electronic Library Service 38 大阪産業大学論集 人文・社会科学編 6 [一〇]今有粟九斗八升、欲爲御飯。問得幾何。荅曰、爲御飯八斗二升二十五分升 之八。  術曰、以粟求御飯、二十一之、二十五而一[14]。 訓読 :今、粟九斗八升有り、御飯と為さんと欲す。問う、得ること幾何ぞ。答えに曰う、 御飯八斗二升二十五分升の八と為す。   術に曰う、粟を以て御飯を求むるに、之を二十一して、二十五にして一とす(51)。 注: (51)計算は98×21÷25 = 82 8―25、よって粟 9斗 8升は御飯 8斗 2 8―25升となる。 訳: 今、粟 9斗 8升があり、御飯に換えたい。問う、どれだけとなるか。答えにいう、御 飯 8斗 2 8―25升となる。   術にいう、粟から御飯を求めるには、これを21倍して、25で割る。 [14]臣淳風等謹按、 此術半率、 亦與糳飯多同。 訓読 :臣淳風等謹みて按ずるに、此の術の率を半にするは、亦た糳飯と多く同じ(52)。 訳: 臣淳風等謹んで按じますに、この術が率を半分にするのはまた糳飯における術と殆ど 同じである。 注: (52)粟から糳飯を求める計算については[九]参照。 [一一]今有粟三斗少半升、欲爲菽。問得幾何。荅曰、爲菽二斗七升一十分升之三。 [一二]今有粟四斗一升太半升、欲爲荅。問得幾何。荅曰、爲荅三斗七升半。 [一三]今有粟五斗太半升、欲爲麻。問得幾何。荅曰、爲麻四斗五升五分升之三。 [一四]今有粟一十斗八升五分升之二、欲爲麥。問得幾何。荅曰、爲麥九斗七升 二十五分升之一十四。  術曰、以粟求菽・荅・麻・麥、皆九之、十而一[15]。 訓読 :[一一]今、粟三斗と少半升有り(53)、菽と為さんと欲す。問う、得ること幾何ぞ。 答えに曰う、菽二斗七升一十分升の三と為す(54)。    [一二]今、粟四斗一升と太半升有り(55)、荅と為さんと欲す。問う、得ること幾何ぞ。 答えに曰う、荅三斗七升半と為す(56)。    [一三]今、粟五斗太半升有り、麻と為さんと欲す。問う、得ること幾何ぞ。答えに曰 Osaka Sangyo University NII-Electronic Library Service 39 『九章算術』訳注稿(5)(馬場理惠子) う、麻四斗五升五分升の三と為す(57)。    [一四]今、粟一十斗八升五分升の二有り、麦と為さんと欲す。問う、得ること幾何ぞ。 答えに曰う、麦九斗七升二十五分升の一十四と為す(58)。   術に曰う(59)、粟を以て菽・荅・麻・麦を求むるに、皆之を九して、十にして一とす。 注: (5 3)「少半」は 3分の 1を示す語。『雲夢秦簡』傳食律179-180に「御史卒人使者、 食粺米半斗、醬駟(四)分升一、釆(菜)羹、給之韭葱。其有爵者、自官士大夫以上、 爵食之。使者之從者、食 (糲)米半斗、僕、少半斗」とある。    (5 4)計算は30 1―3 × 9 ÷10 = 27 3―10、よって粟 3斗 1―3升は菽 2斗 7 3―10升となる。    (5 5)「太半」とは 3分の 2のこと。『雲夢秦簡』倉律43に「爲粟廿斗、舂爲米十斗、 十斗粲、 米六斗大半斗。麥十斗、爲 三斗。菽、荅、麻十五斗爲一石。●稟 粺者、 以十斗爲石」とある。    (5 6)計算は41 2―3 × 9 ÷10 = 37 1―2 、よって粟 4斗 1 2―3 升は荅 3斗 7 1―2 升となる。    (5 7)計算は50 2―3 × 9 ÷10 = 45 3―5 、よって粟 5斗 2―3升は麻 4斗 5 3―5 升となる。    (5 8)計算は108 2―5 × 9 ÷10 = 97 14―25、よって粟10斗 8 2―5 升は麦 9斗 7 14―25升となる。    (5 9)この術は、[一一]粟から菽へ、[一二]粟から荅へ、[一三]粟から麻へ、[一四] 粟から麦への変換を行うことを承けている。 訳: [一一]今、粟 3斗 1―3升があり、菽に換えたい。問う、どれだけとなるか。答えにいう、 菽 2斗 7 3―10升となる。    [一二]今、粟 4斗 1 2―3 升があり、荅に換えたい。問う、どれだけとなるか。答えにい う、荅 3斗 7 1―2 升となる。    [一三]今、粟 5斗 2―3 升があり、麻に換えたい。問う、どれだけとなるか。答えにいう、 麻 4斗 5 3―5 升となる。    [一四]今、粟10斗 8 2―5 升があり、麦に換えたい。問う、どれだけとなるか。答えにい う、麦 9斗 7 14―25升となる。   術にいう、粟から菽・荅・麻・麦を求めるには、皆これを 9倍して、10で割る。 [15]臣淳風等謹按、 四術率竝四十五、 皆是爲粟所求、 倶合以此率乘其本粟。 術欲從省、 先 以等數五約之、 所求之率得九、 所有之率得十。 故九乘十除、 義由於此。 訓読 :臣淳風等謹みて按ずるに、四術(60)の率ならびに四十五、皆是れ粟の求むる所と為り、 倶に合 まさ に此の率を以て其の本の粟に乗ずべし。術、省に従わんと欲すれば(61)、先に Osaka Sangyo University NII-Electronic Library Service 40 大阪産業大学論集 人文・社会科学編 6 等数五を以て之を約し、「求むる所の率」は九を得て、「有る所の率」は十を得。故に 九もて乗じ十もて除す。義、此に由る。 注: (60)四術とは、[十一]~[十四]までの菽・荅・麻・麦の穀物に関する計算式をいう。    (6 1)「術欲従省」は、以下粟米章の中の李注でしばしば用いられる語句。計算にお いては数字を前もってできるだけ簡略にしておくことを示す。「省」は簡略にする こと(省約ともいう)。巻四少広章に「臣淳風等謹按、諸子悉通、故可幷之爲法。 亦宜用合分術、列數尤多。若用乘則算數至繁、故別制此術、從省約」とあり、こ こでは「従省約」という文言がみられる。 訳: 臣淳風等謹んで按じますに、四術の率は同じく45であり、みなこれは粟によって求め られるところのものであるから、一様にこの率をもってその本の粟の数量(「有る所 の数」)に掛けなければならない。計算法は簡略にしておきたいので、先に等数 5で これを約し、「求める所の率」は 9を得て、「有る所の率」は10を得る。故に 9倍して 10で割る。(ここで 9や10という数が現れる)理由は、このこと(等数 5で約したとい うこと)による。 [一五]今有粟七斗五升七分升之四、欲爲稻。問得幾何。荅曰、爲稻九斗三十五分 升之二十四。  術曰、以粟求稻、六之、五而一[16]。 訓読 :今、粟七斗五升七分升の四有り、稲と為さんと欲す。問う、得ること幾何ぞ。答え に曰う、稲九斗三十五分升の二十四と為す。   術に曰う、粟を以て稲を求むるに、之を六して、五にして一とす(62)。 注: (62)計算は75 4―7 ×6÷5 = 90 24―35、よって粟 7斗 5 4―7 升は稲 9斗 24―35升となる。 訳: 今、粟 7斗 5 4―7 升があり、稲に換えたい。問う、どれだけとなるか。答えにいう、稲 9斗24―35升となる。   術にいう、粟から稲を求めるには、これを 6倍して、 5で割る。 [16]臣淳風等謹按、 稻率六十、 亦約二率而乘除。 訓読 :臣淳風等謹みて按ずるに、稲の率六十、亦た二率を約して乗除す。 訳: 臣淳風等謹んで按じますに、稲の率は60なので、また 2率(稲の率60・粟の率50)を Osaka Sangyo University NII-Electronic Library Service 41 『九章算術』訳注稿(5)(馬場理惠子) 約してから乗除する。 [一六]今有粟七斗八升、欲爲豉。問得幾何。荅曰、爲豉九斗八升二十五分升之七。  術曰、以粟求豉、六十三之、五十而一。 訓読 :今、粟七斗八升有り、豉と為さんと欲す。問う、得ること幾何ぞ。答えに曰う、豉 九斗八升二十五分升の七と為す。   術に曰う、粟をもって豉を求むるに、之を六十三して、五十にして一とす(63)。 注: (63)計算は78×63÷50 = 98 7―25、よって粟 7斗 8升は 豉 9 斗 8 7―25升となる。 訳: 今、粟 7斗 8升があり、豉に換えたい。問う、どれだけとなるか。答えにいう、豉 9 斗 8 7―25升となる。   術にいう、粟から豉を求めるには、これを63倍して、50で割る。 [一七]今有粟五斗五升、欲爲飱。問得幾何。荅曰、爲飱九斗九升。  術曰、以粟求飱、九之、五而一[17]。 訓読 :今、粟五斗五升有り、飱と為さんと欲す。問う、得ること幾何ぞ。答えに曰う、飱 九斗九升と為す。   術に曰う、粟を以て飱を求むるに、之を九して、五にして一とす(64)。 注: (64)計算は55× 9 ÷ 5 = 99、よって粟 5斗 5升は飱 9 斗 9 升となる。 訳: 今、粟 5斗 5升があり、飱に換えたい。問う、どれだけとなるか。答えにいう、飱 9 斗 9 升となる。   術にいう、粟から飱を求めるには、これを 9倍して、 5で割る。 [17]臣淳風等謹按、 飱率九十、 退位。 與求稻多同。 訓読 :臣淳風等謹みて按ずるに、飱の率九十、位を退く。稲を求むると多く同じ(65)。 訳: 臣淳風等謹んで按じますに、飱の率は90なので、位を下げて( 9にして、粟率を 5に する)。稲を求める場合と殆ど同じである。 注: (65)粟から稲を求める計算については[一五]参照。 Osaka Sangyo University NII-Electronic Library Service 42 大阪産業大学論集 人文・社会科学編 6 [一八]今有粟四斗、欲爲熟菽。問得幾何。荅曰、爲熟菽八斗二升五分升之四。  術曰、以粟求熟菽、二百七之、百而一[18]。 訓読 :今、粟四斗有り、熟菽と為さんと欲す。問う、得ること幾何ぞ。答えに曰う、熟菽 八斗二升五分升の四と為す。   術に曰う、粟を以て熟菽を求むるに、之を二百七して、百にして一とす(66)。 注: (66)計算は40×207÷100 = 82 4―5 、よって粟 4斗は熟菽 8斗 2 4―5 升となる。 訳: 今、粟 4斗があり、熟菽に換えたい。問う、どれだけとなるか。答えにいう、熟菽8 斗 2 4―5 升となる。   術にいう、粟から熟菽を求めるには、これを207倍して、100で割る。 [18]臣淳風等
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