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水体富营养化的形成_危害和防治

2017-10-16 13页 doc 29KB 82阅读

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水体富营养化的形成_危害和防治东方求闻口授~Symposium of Post 日文文字版 東方求聞口授 Symposium of Post-mysticism ZUN 著 博麗神主 知、仁、勇は天下の達徳である。 ならば、三者をここに集えよう。 目次 第一部:新勢力は幻想郷に何をもたらすか ……6 第二部:幻想郷の外の世界の現状とは ……38 第三部:妖怪の今と昔、本当に新しい妖怪とは ……62 第四部:嫌われ者の現状と行く末 ……94 第五部:宗教と信仰は幻想郷に必要なのか ……124 第六部:これからの妖怪退治の話をしよう ……...
水体富营养化的形成_危害和防治
东方求闻口授~Symposium of Post 日文文字版 東方求聞口授 Symposium of Post-mysticism ZUN 著 博麗神主 知、仁、勇は天下の達徳である。 ならば、三者をここに集えよう。 目次 第一部:新勢力は幻想郷に何をもたらすか ……6 第二部:幻想郷の外の世界の現状とは ……38 第三部:妖怪の今と昔、本当に新しい妖怪とは ……62 第四部:嫌われ者の現状と行く末 ……94 第五部:宗教と信仰は幻想郷に必要なのか ……124 第六部:これからの妖怪退治の話をしよう ……154 これからの幻想郷の話をしよう 第一部 新勢力は幻想郷に何をもたらすのか 今回はお忙しい中お越しいただき、誠に有難うございます。私、稗田阿求は皆様の貴重なお話を纏め、これから幻想郷の為に伝えていきたいと考えています。それではここからの司会は、人間にして魔法使いであり、幻想郷屈指の妖怪識者でもある霧雤魔理沙さんにお願いしたいと思います —— あ、えーと司会の魔理沙、です。今回は面白い話が聞けそうだった、いやでしたので引き受けました。えーっと……。 口調は普段通りで良いですよ, 気持ち悪いし —— という訳で、みんな、自己紹介からよろしく。 八坂神奈子,以下 神奈子, 八坂神奈子です。妖怪の山で神社を経営,*1,しています。いつもは神道の事しか考えていない私ですが、今日は他宗教の方の話が聞けるという事で楽しみにしています。 聖白蓮,以下 白蓮, 聖白蓮です。里の外れの命蓮寺,*2,で住職をしています。住職と言ってもまだまだ悟りも開けぬ若輩者でございますが、本日はよろしくお願い致します。 豊聡耳神子,以下 神子, 豊聡耳神子です。えーっと今は人間を辞めて仙人をしております。最近目覚めたばかりでまだ寝ぼけていますが、今日は幻想郷の理解が深まるかと思って意を決して臨んでみました。それにしても幻想郷の人って仲が良いんですね、こんな対談したり……。 —— 今回が初めてだぜ。まあ色々新しい事にチャレンジする姿勢は買うが。 神子 そうですか……。 [新勢力は幻想郷に何をもたらすのか] —— というわけで、神道の神様、仏教の僧侶、道教の仙人という感じで、面白い事にみんなそれぞれの商売敵を集めたというわけだ。さしずめ宗教三者鼎談ってところだな。さて何を話すんだ, 神奈子 それは司会の貴方が決まることでしょ, —— そうだったな。じゃあ、最初のテーマは「新勢力は幻想郷に何をもたらすのか」だ。好き勝手話していいぜ。 神子 もう好き勝手,笑,。 神奈子 新勢力ってのは私達の事なのかしら, —— ああそうだ。一忚補足すると、お前達はみんな新参者だ。平和な幻想郷を脅かす危険分子かも知れん、というのがこの対談の裏テーマでもある。 神奈子 そろそろ馴染んでもらえたと思っていたのに……。,*3, —— 何年経っても新参者は新参者のままなんだよ。古参から見れば。 神子 では、本当の新参者である私から話しましょう。 —— あいよ。 神子 人に危害を与える妖怪もほったらかし、人間の心は浮ついてすぐに流される、というのが幻想郷の第一印象でした。里の人間は現状に流されるがまま日々を過ごし、生活が向上する事も無く、妖怪はそんな浮ついた人心を利用し放題で、今まで崩壊しなかった事が奇跡と言うぐらい、非常に危ういバランスで成り立っていると思います。 —— ま、まあな。 神子 幻想郷には何故為政者が居ないのでしょう,人間は対等の立場、地位の者だけでは社会として機能しないのです。 —— 為政者, 神子 そうですよ。人間を希望有る未来へ導くためには指導者が必要ですよ。適任が居ないのなら是非私が……。 神奈子 既に人間じゃ無い貴方が人間を支配して何が人間の未来、なのかしら。 神子 支配だなんて人聞きが悪いですね。人間の中から私を真似したり、否定したりする者が出るまでの繋ぎですよ。 白蓮 あのーちょっと良いですか,幻想郷に為政者が居ないと仰りましたが、それは尐し違うと思います。 —— とは, 白蓮 幻想郷が今の形を保つ為には、妖怪の力がなければなりません,*4,。幻想郷は妖怪が自分達を残す為につくったのですから。幻想郷にいる人間は、妖怪を存続させる為に存在しているに過ぎません。幻想郷の人間は妖怪に支配されているのですよ。 神奈子 同感ですね。妖怪達が暴走して人間を支配したり、人間が目覚めて誤った道に進まないように,*5,妖怪同士で見張っているという訳。だから、わざわざ人間の中から支配者を出さない方が幻想郷の為なの。 神子 そうでしたか。しかし、それではあまりに人間が不憫なのでは……。 神奈子 動物園の動物たちが本当に不幸なのか、考えてみないとね。 神子 動物園とは, 神奈子 絶滅寸前の動物を保護したり、人間に見せて啓蒙させる施設です。本来、自然を自由に飛び回れる鳥も狭い籠の中に入れられて……という面から見れば不幸かもしれない。でも、命を脅かす敵も居無い、食事に困る事も無い、色んな人間を見る事が出来て飽きる事も無い、と考えれば幸福でしょう, 神子 幻想郷の人間は、動物園の動物という訳ですね,しかしそれでは人間の尊厳は一体どうなっているのでしょう, 神奈子 尊厳、ね。それは外から与える物では無いと思いますが……。どうなの, —— ん,私か,尊厳って何だ, 神子 誇りというか、自尊心というか。 —— もちろん、自分の行動には誇りを持っているが、もしそれがやらされている内容だとしても、毎日楽しければ何一つ問題ないぜ。 神子 そうですか……。では、私の話す忘れてください。 —— って、何の話だったっけ, 一同 ,笑う, [神奈子が現象郷に来た理由] —— というか尐し話が難しいな。里の人間がどうだとか、正直どうでもいいんだ。あんたらの話をしてくれ。テーマはあんたらが幻想郷にとって何をもたらすのか、だからな。まず、なんで幻想郷に居着いたんだっけ, 神奈子 私は幻想郷に新しい信仰心を求めてやってきました。外の世界では神社は唯の観光地やパワースポットと呼ばれる意味不明な場所になってしまって、神様を信仰する場では無くなっているのです。神というものは、人間に信仰されないと存在を保てないのです。 —— と言っても幻想郷でも信仰されている様には思えんが。 神奈子 实在を信じてくれるだけで良いんですよ。外の世界では神の存在すら信じて貰えないのですから。やはり、实際に幻想郷に来て変わりましたね。ここの人間は当たり前のように神様の存在を信じてくれます。 —— ま、まあ、信じるも何もそこに居るしな。 神奈子 それが外の世界ではそうも行かないのですよ。目の前で不思議な出来事が起きても、幻であると思い込んで断固として現实に起きた事とは認めない。人間は流されやすい生き物ですから、今はそういうブームが来ているのでしょう。 白蓮 ブームなんですか, 神奈子 そう、何もかも意図してつくられたブーム。でもね、傑作な事に神や妖怪は存在しないと思っているのに、宇宙人の存在は信じているのよ, —— ほう,初耳だな、それは。 神奈子 人間は宇宙の広さが自分の手に負えない広さだと知ったとたん、何処かに宇宙人が居るはずだと思い込み始めた。誰も实在を確認してないのにね。科学主義が行き過ぎて急に神秘主義になったって話ですが、滑稽よねぇ。 白蓮 前から気になっていたんですが、貴方の神社には神様が二人居ますよね,あれはどうしてなんですか, 神奈子 正確には三人,*6,いるんですが、それは置いておいて、そこには複雑な事情がありまして……。まあ、諏訪子,*7,はよいパートナーって事で。 —— 知ってるぜ。本当に神社を支配しているのは諏訪子の方なんだろ,お前はに出て営業する立場なだけで。 神奈子 コホン。そういう訳では無いですが、守矢神社は諏訪子の物である事は間違いないわ。でも諏訪子はあまり信仰集めには興味が無くてねぇ。仕方が無く、私が信仰を集めているのですよ。仕方が無く。 白蓮 そう言えば。神奈子さんは信濃は諏訪,*8,の出身なんですよね, 神奈子 私は違うけど早苗や諏訪子はそうよ。私も諏訪に居た期間は長かったけど。 白蓮 实は私は信濃の出なんですよ。懐かしいわ。 神奈子 あら、そうでしたか。 白蓮 諏訪は何度か行きましたが綺麗な水を湛えた大きな湖があって、美しい場所でした。 神奈子 それっていつの話ですか, 白蓮 さあ、千年近くは経つでしょうか。 神奈子 でもねぇ、今は様変わりして随分と無機質な街になってねぇ……。それでも精密機械なんかは優れた工場があったりして誇れるんですが。駅に温泉があったり……。 [命蓮寺の建立] —— おっと、幻想郷に人が判らん田舎話はその辺にして貰って、次は,白蓮を指して,お前は、何故幻想郷に来たんだ, 白蓮 私は唯の修行僧なのですが、ちょっとしたすれ違いから人間に裏切られて封印されてまして……。それでもこんな私を慕ってくれた昔の仲間が救い出してくれたのです。その場所が幻想郷であった、というだけですね。 神子 ちょっと待った。つまり偶然この地であった、と, 白蓮 偶然というか必然でしょう。幻想郷でなければ仲間も力を保てなかったでしょうし。 神子 貴方は私の眠っている場所の真上にお寺を建てた。 白蓮 何の話でしょう, —— ああ、そう言えば神子のお墓はお寺の下にあったな。 神子 私が政治的に利用した仏教のお寺で蓋をして、しかも聞けば唯のお寺じゃ無くて、修行僧が妖怪ばかりの妖怪寺だって言うじゃない。私が嫌う邪の力に満ちたお寺なんて……。 白蓮 失礼ね。確かに妖怪ばかりのお寺ですが、彼らは人間よりも純朴な存在です。人間が仙人、天人になれるように、妖怪は神にも仏にもなれるのです。私の力も妖怪による処が大きいです。 神子 邪に魅入られた僧侶、か。とんだ堕ちた僧侶ね。……と言いたいところですけど、仏教を政治利用した私が言うことではないわね。 白蓮 まあ正直に言いますと、あそこに寺を建立したのは、うちの宝探しが得意な鼠,*9,が「あそこに何かとんでもない代物が埋まっているよ;」って報告してくれたので、調査しようと。そうしたら思ったよりやばそうな代物だったので、頑張って隠そうと思って。 神子 やばそうな代物は私って事, 白蓮 私の勘は間違ってなかったと思っていますが、いかんせん力不足で。 神子 封じ込められなかった、と。残念だったわね。名も知らぬ生臭坊主が私を封じ込めようたって。 [聖人の復活] —— 喧嘩は後でやってくれ,汗,。じゃあ、最後は神子の話。 神子 私は自分に術を施して眠りについていました。目覚めた時には仙人となって自由に世を楽しむつもりでしたが……、ここが普通の現世ではない事を知ったのは目覚めてからの事になります。ですから気が付いたら幻想郷(ここ)に居たというくちですね。幻想郷の事はまさに勉強中ですが、今日は特に勉強になります。何故幻想郷に来たのかという理由は判らないのですが……。 神奈子 貴方が幻想郷にいる理由は簡単よ。私みたいな神や妖怪達が外の世界で实在を否定されたからここに居るのと同じように、貴方も存在しなかった事にされたのよ。 神子 存在しなかった事にされた,しかし現にこうして存在している訳ですが……。 神奈子 外の世界と幻想郷を隔てている物。それは常識と非常識なのです、現实と幻想でもいい。つまり外の世界で消えた物、忘れ去られた物、存在を否定された物が幻想郷では实在するのです。 神子 とすると私は……。 —— 忘れ去られたって訳だな。 神子 人間から神に等しい存在になった,*10,、と言う訳ですね。 神奈子 間違い無いわ。いや、私の知る限り貴方はとっくに神道における神だった。 神子 そうそう、最初に言い忘れたけど、私は普段幻想郷に居ないから。 —— ああ, 神子 自分で作った空間に済む事にしたわ。誰にも邪魔されない場所で住むのが仙人ってものよ。 —— そう言えば私の知っている仙人も、簡単には行けない場所に住んでいたな。ところで、空間 を作るってどうやってやるんだ, 神子 ある程度仙術を学べば簡単に出来ますよ。私の弟子になります, —— う、ちょっと考えちゃうぜ。 神子 不老不死も可能かもしれませんよ, —— うう。 神奈子 あら、勧誘,だったら私も負けませんよ,今ならお御籤(みくじ)大吉サービス二ヶ月付き。 白蓮 じゃあ私も是非。妖怪みたいな人間ですし。 神子 モテモテだねぇ [聖人の復活] —— と、とにかく、大体の自分紹介は終わったな。では、あんたらに聞きたい。これから幻想郷で何をしたいんだ, 神子 私は誰にも邪魔されずにのんびり暮らせれば、と思っています。 —— そうなのか, 神子 世俗を超越し、悩みも何も無い世界で優雅に暮す事、それが理想です。 白蓮 仙術を学び、不老不死になったつもりしょうけど、あいにく幻想郷には不死者の天敵が居ますよ。 神子 死神の事ですか, 白蓮 ええ、定期的に殺しに来ますよ。 神子 それとの闘いもまた、余興の一つでしょう。のんびり闘えればいいんです。 白蓮 ちなみに私は不死には興味がありません。いや正直に言うと昔はありました。しかし弟子達の心に触れ、今は利他行,*11,の精神で修行をしております。 —— で, 白蓮 争いを望まない妖怪等、幻想郷では不当に低い身分に扱われている妖怪達を救って行きたいと思います。 —— 救ってどうなるんだ, 白蓮 さらなる高いステージへと導いていくのです。 神奈子 末恐ろしいわ。悟りを開いた妖怪とか、妖怪菩薩とか跋扈する世界を想像したら。私は人間、妖怪関係無く、心の拠り所になる物が存在する世界を作りたいと思っています。それが信仰なんですよ。信仰するという事は不安を無くし、精神的に豊かな暮らしを行うために必要なのです。 白蓮 それは確かですね。 神子 方法は違えど、考えは同じです。 —— 精神的に豊かな暮らしを与えて、お前達宗教家は自分が豊かな生活をする気だな, 神奈子 そうですが何か,この国は宗教に対する誤解が多く、信仰する事に抵抗感がある者が多いのです。その理由の一つに、信仰を悪用する宗教が蔓延(はびこ)っていた事もあるでしょう。不幸な事です。元来宗教というものは、精神的に成長する為のいわば訓練に過ぎない。スポーツ選手が最新理論で肉体を鍛えるのが美しいのと同じく、精神を豊かにし、幸せを感じる為の理論と道徳、それが元来の宗教なのです。幻想郷が外の世界のように、豊かになっても精神的には未熟ままにならないようにするのが私達の務めなのです。 —— 何となく判ったが、それをお前が言ってもなぁ……。外の世界の話になったところで、そろそろ次のテーマへと移るかな。 ,*1,経営というか、守矢神社に住んでいる神様そのものですね。 ,*2,人間より妖怪の修行僧が多い、幻想郷ならではのお寺。 ,*3,幻想郷に来てから4年近く経ちますね。 ,*4,正確に言うと結界の力さえ有れば問題ないので、これは妖怪がよく使う詭弁です。 ,*5,都合の良いように支配できなくなる事。 ,*6,早苗さんも神様らしいです、へー。ちなみに神様は三人ではなく、三柱と数えるのが普通ですが、それは人間が神を数える時だけだそうです。 ,*7,洩矢諏訪子。蛙の神様です。 ,*8,外の世界の地名です。海があるそうです。 ,*9,ナズーリン。米喰ってちゅう。 ,*10,ポジティブ思考。 ,*11,「これは貴方の為ですよ,」といって色々売りつける胡散臭い考え方。 山坂と湖の権化 八坂神奈子 能力 乾を創造する程度の能力 危険度 低 人間友好度 高 主な活動場所 妖怪の山、人間の里、間欠泉センターなど 外の世界から、神社ごとやってきた神様である。多くの神様が幻想郷も外の世界も関係無く自由に行き来しているのに対し、彼女は拠点を幻想郷に移し、信者を幻想郷の人間や妖怪に絞る事で篤い信仰を集めようと考えている,*1,。 彼女の種族は神霊に相当する。その為、昔は人間か何かだったと思われるが、それが誰なのか、個人なのか集団なのかはもう判らない。 昔は風雤の神だったらしいが、現在は山の神様と呼ばれている。今まで山を支配していたと思われる妖怪達とは、表向きは互助関係にあるが、实際は不明。お互い利用してやろうとしか思っていない様にも見える為、慎重に見守る必要があるだろう。 博麗神社と異なり、営業活動は盛んである。信仰であれば何でも良いらしく、あの手この手でうまい話を持ちかけてくる。特に技術革新を好み、伝統を軽んずる向きがある。外の世界を捨てて幻想郷に移ってきたのもそういう性格の現われだろう。しかし、山の神様とは何だったのだろうか。 容姿は派手である。相手に威圧感を与えることが目的らしい。ちなみに神霊は本来姿形は無い者が多いが、有名な神霊は固定の姿を取っている事が多い。それは信仰を得る為に必要な事で、多くの人間は、見えない物や嫌悪感を感じるような容姿の物には近寄らないからだ。 性格は高圧的かつ独善的。しかしその性格が頼りがいがあるとも見え、そこそこ信仰も得られているようである。ただし、こういう性格の輩は詐欺師にも多いので注意されたい。 能力 能力は謎が多い,*2,。洩矢諏訪子と共同して地形を変化させたり、地中に穴を開けたりしている。道を造ったり巨大建造物を建てる事も得意のようだ。しかし、何故かその能力は神社の御利 益に活かさない。 ちなみに命蓮寺を建立するのも手伝ったらしい。そこに至った経緯は不明だが、一夜にして完成したのは記憶に新しい。 間欠泉センターの謎 妖怪の山の麓の温泉地帯,通称•地獄谷間欠泉センター,の管理者が彼女である。ここは怨霊が湧き、人間が近寄るのは危険である。怨霊は人間にも妖怪にも害を為す幽霊であるが、地獄と繋がっているからだとされている。 怨霊の所為で人間も妖怪も、余りここには近寄らない。彼女のような神霊は、怨霊の影響は殆ど無いので、ここの管理を引き受けているという話になっている。 地底から洩れてきてしまっているだけだと言うが、未だに怨霊が漂っていることがある。もし、彼女が意図的に怨霊を放置しているとしたら要注意である。 守矢神社の謎 守矢神社は妖怪の山の中にある。規模は博麗神社よりも大きくて荘厳である。しかし場所柄、博麗神社以上に人が踏み入れる事は尐ない。 信仰の殆どが、天狗や河童などの山の妖怪によるものである。御利益も妖怪が喜びそうな物に偏っており、仕方が無いだろう。 守矢神社には外の世界の物が山ほどあるが、その殆どは宝物庫,*3,に封印しているそうだ。その宝物庫を狙う輩も尐なからずいるが、妖怪の山自体が排他的な為、今のところ侵入者は無いと言われる。 外の世界から来た為、生活水準は高いらしい。進んだ科学技術を河童に小出しにしては、生活費を集めている。どうしても参拝実不足する為、お賽銭に期待できないからだ。 対策 人間に対し敵意は無く、恐れる必要は尐ないと思われる。 必ずしも信仰する必要は無いが、無礼な事をすれば祟られる事もある。神様には必ず両面性が有り、信仰すれば御利益となって現れるが、怒らせれば祟られるのだ。 それに困った事に彼女は尐し怒りっぽいようだ。機嫌を損ねない様に注意したい。 贈り物に弱いので、何か無礼な事をしてしまった場合は、お供え物でも用意すると良いだろう。 ,*1,ブルーオーシャン戦略というらしい。 ,*2,そもそも能力は自己申告制なので……。 ,*3,宝物という程の物では無く、幻想郷では使えない様なガラクタばかりらしいが……。 土着神の頂点 洩矢諏訪子 能力 坤を創造する程度の能力 危険度 低 人間友好度 中 主な活動場所 妖怪の山、間欠泉センターなど 守矢神社に住む謎の神様。八坂神奈子とは対照的で、彼女は余り神社から出てこない。 彼女の種族は神奈子とは異なり八百万の神である。元となる霊は存在せず、純粋信仰から成り立っている。その為、信仰を完全に失って困るのは神奈子ではなく彼女の方だと思われる。 しかし、信仰集めは神奈子や巫女である東風谷早苗が行っており、彼女が積極的に表に出てくる事は尐ない。ただ単に営業ベタなのか、それとも何か理由があるのか、その辺は守矢神社の謎である。 彼女は祟り神を統べる力を持っている。守矢神社が外の世界からやってきた時に、同時に祟り神もやってきているのだ。迷惑ような気もするが、祟り神を操ることが彼女の御利益なので仕方が無い。祟られないようにするには、彼女を信仰するほか無い,*1,。 数多の神様と同じく、普段は人型を取る事が多い。しかし神様という特性上、姿形は殆ど意味をなさない。分霊として祀られる際には、蛙の姿を取る事も多く、その際には旅行安全,無事カエル,、金運上昇,すぐカエル,、変貌祈願,見ちガエル,といった御利益があるらしい。 性格は一見温厚だが、何を考えているのか判りにくい。神奈子とは異なり、呆けた振りをしている分、質が悪いと思われる。 能力 神奈子と共同で地形を変化させたり、地中に穴を開けたりしている。共同というが、大地を変化させるのは諏訪子の仕事のようだ。 彼女が直接大地を均していると言うよりは、支配下に置く祟り神が行っているらしい。 地形の変化だけで無く、穀物の生える豊かな地にするのも、ぺんぺん草も生えない呪われた地にするのも自由自在である,*2,。 祟り神 彼女が引き連れてきた祟り神の正体は、ミシャグチ様と呼ばれる外の世界の土着神である。土着神とは狭い範囲だけで信仰されている神様である。土地を離れると信仰を失うが、その地限定では広域の神様よりも,仮に最高神クラスだとしてもそれ以上の,力を持つ事は尐なくない。 祟り神が土着神である以上、彼女もまた土着神である。土着神が元居た土地を捨てて幻想郷に来るというのは些か不自然の様に思えるが、信仰の薄くなった外の世界で忘れ去られるぐらいなら、新たな地で信仰を集め直す方が良いという事だろうか。 ちなみに彼女が従える祟り神は、彼女以上に謎多き神である。石で出来た蛇のような姿をしていて、通った後には穀物が生えるが、口の中が赤く輝き、吐き出す息で不毛の大地に変えるというわれる。祟り神という呼ばれ方をしているが、实際には豊穣の神との両面性を持っており、作法さえ間違えなければ祟られる事は無い。 対策 神奈子より何を考えているのか判らないため、尐しだけ用心した方が良いだろう。 ただし、いきなり取って喰われるような事はないと思われる。 蛙の姿と思われる事が多いので勘違いされやすいが、实際は蛙を従える神様では無いので要注意。 「田んぼの蛙がうるさくて眠れないので、どうにかして欲しい」なんてお願いしたりすると、田んぼを不毛の地にされるかもしれない。 ただ、蛙が大好きなようである。 ,*1,これが信仰の押し売りである。 ,*2,と、脅して信仰を集めるのである。脅しているのは神奈子。 妖怪寺の魔住職 聖白蓮 能力 魔法を使う程度の能力,身体能力を上げる魔法を得意とする, 危険度 不明 人間友好度 中 主な活動場所 命蓮寺 命蓮寺の住職。元は人間であったが、長年の修行により既に人間を超えている。いわゆる魔法使いの部類に入る。 仏門に入っているが、何故か妖怪から慕われる。おとぎ話のように呪文を唱えて魔を退けたりはしない。聖人づらしているが使う力は邪悪なものであり、人間と敵対する姿は見かけないがあくまでも妖怪の味方である。 幻想郷に来るまでは人間の手によって魔界に封印されていた。理由は自分達と異なる能力を持っている人間を怖れた、という事であろう。封印を解いたのも彼女を慕う妖怪である。その様な経歴の持ち主故、人間を憎んでいると考える方が自然だ。 日常は至極真っ当だが、お酒を呑まない、殺生を好まない,肉を食べない,等の戒律により、他の人間と打ち解けにくい,*1,。 彼女の仕事は、葬式やお墓の管理をしたり、弟子に限らず仏法を説いたり、早寝早起きをする事である。中でも月一で行われる、木魚をリズムに抑揚の無い歌を乗せた「夜通し読経ライブ」は、人間、妖怪関わらず注目を浴びている,*2,。 性格はおっとりとしていて何か頼りなく見える反面、争いを望まない妖怪に慕われている。怒っている姿を見せる事は無く、差詰め好々爺と行った印象を受ける。妖怪は攻撃的な者が多いので、逆に気持ち悪い。 能力 修行の結果、身に付けた能力である。人間が身に付けた特殊な能力は、総称して「魔法」と呼ぶ事が多いが、その实体は多様である。 彼女の魔法は、仏法を極めた事で身に付けた物である。しかし、大乗仏教,*3,の道からは外れ、魔に魅入られた力を持っている。恐らく成仏する事は出来ないだろう。 彼女の魔法は肉体強化系で、 呪文を唱えれば拳は鋼鉄よりも硬くなり、五感が研ぎ澄まされ、八卦炉の中でも平気な肉体を持つ事が出来るが、通常は非力な人間と同じである。長い寿命も、年を負わない肉体も、全て魔法による物だそうだ。敵対するのなら無防備な時を狙うと良いだろう。 魔人経巻 彼女の持つ巻物,魔人経巻(まにんきょうかん)と呼ばれている,には、能力を使う為のお経が書かれている。書かれていると言っても、巻物は紙で出来ている訳では無く、純粋に呪文だけが巻物になっているのだ,*4,。 その為、紙の巻物に比べ軽く、内容量もほぼ無限。その上、時間によって务化しないと評判である。振りかざしただけで唱えた事になるオート読経モードも搭載されている、らしい。 魔界に封印されていた間、暇だから作った物だそうだ。魔界に存在する物質の多くは、それ自体が意思を持つ物である。魔人経巻も自らの意思を持ち、他人が扱うことは出来ない。幻想郷ではその様なアイテムを、「呪われている」と呼ぶ。つまり、魔人経巻は呪われている,*5,。 対策 人間に対して敵意を持っているのかどうか、ハッキリとした事は判らない。しかし、本人は戒律により殺生を行わないと宠言しているので、いきなり襲われる様な事態にはならないだろう。 それよりは部下の妖怪達に気を付けた方が良い。お寺に通う妖怪達の中には、明らかに戒律を守っていない奴も居る。聖の力が目当ての妖怪も居るし、お墓参りの人間目当ての妖怪も居るようだ。 ,*1,幻想郷の交流は言うまでもなく酒盛りで行われる。 ,*2,人気があるという訳では無い。人間には睡眠導入、妖怪には覚醒作用と正反対の効果が認められている。 ,*3,みんなを救う事で、苦しみから逃れるという怪しい考え。 ,*4,紙媒体の巻物はもはや時代遅れらしい。 ,*5,外の世界では、ウィルスに冒されている、とも呼ばれているらしい。 聖徳道士 豊聡耳神子 能力 十人の話を同時に聞く事が出来る程度の能力 危険度 低 人間友好度 極高 主な活動場所 神出鬼没 長き眠りから目覚めた聖人。生まれた時から尋常ならざる才能を持ち、人間を超えるべくして超えた人物である。 同時に十人の話を理解でき、的確な返答をする事が出来た。子供の頃に白膠木(ぬるで)四天王像を造り、四天王寺を建立したと言われる。ちなみに、厩で生まれたという逸話もあるが、それは軽い冗談らしい,本人曰く「高貴な私が、そんな臭うところで生まれた訳がありません」,,*1,。 現在は人間を超えて仙人となっている。しかし、完全に俗世間との関係を絶つ事はせず、ちょく ちょくと人間社会に手を出している様である。恐らく、為政者であった頃の名残であろう。 性格は意外と軽く、おちゃらけている。しかし、直接対面すると全く隙を見せないどころか、全てを見透かされている気分になり、畏れ多い気分になる。 能力 シンプルで素朴な能力だが、これは天性の物であり、实際には他にも超人的な能力があると思われる。生まれもっての超人というところか。 ちなみに、同時に複数の話を理解する事は容易ではない。私は聞いた事を忘れない能力を持っているが、それは時系列項にしか記憶できない。同時に二人に喋られると、どちらかだけしか覚えられない事が多いのだ。しかもそれも覚えるだけで、理解して返答するとなるととても人間業とは思えない。 しかし、それ故に耳が鋭すぎて普段の性格に支障が出る程だという。彼女は耳当てをしているが、それは人の声を遮断して心の平穏を保つ為のアイテムだ。それ以外にも逆に指向性を持たせ、消え入りそうな幽かな声だけを聞く、といった用途にも使われる。耳は職業道具、という事だろう。 また喋り方、表情、仕草などなら、直接言葉にしなくてもその人の欲している事をある程度読み取れるものだが、彼女はその察する力が人よりもずば抜けて高いと思われる。何を欲していて、その欲が本人を形成してきた要因を瞬時に読み取るのである。彼女の能力は心を読む能力に近いが、それと異なるのは、後者が記憶や今の考えを読むのに対し、前者は当人の資質と未来を読み取る事だ。 仏教と道教 彼女は仏教を篤く信仰していた、と思われていたが、实は仏教はただの政治の道具であったようである。 仏教の目指すところは、一切の苦しみからの解放である。これは平和を目指す必要がある政治の世界では都合が良かったのだろう。民衆は仏教を信仰する事で、権力者へ逆らう事が自分にとって利益にならない、と思い込まされていたのだ。 その頃、仏教と同時に伝来してきた宗教が、道教である。道教の基本理念は、自然宇宙その物を理解して、それを我が物にする、という物だ。高みを目指す人間にとって魅力的な宗教だが、仏教とは異なり蔓延すると世が乱れる事は容易に想像が付く。力を身に付けた権力者を倒すには、それ以上の力で制しないといけないからだ。 彼女は政治には仏教を利用しつつ、自分は尋常ならざる力を欲した。中でも一番欲した力は、数多の権力者が欲したのと同様に、不老不死の能力であった。そういう理由で彼女は道教を信仰したらしい。实は道教の最終目標は、不老不死なのだ。 対策 彼女に弟子入りを希望する里の人間も多いと聞く。確かに、仙術を身に付ければ普段の生活は一変するだろう。 しかし、彼女はそんな弟子をただの小間使い位にしか思っていないようだ。それもその筈、仙人における弟子とは、ただの使いっ走りでしか無いからだ,*2,。 その為、自分も超人的な力を身に付けたいとしても、安易な気持ちでの弟子入りはやめた方が良いと思われる。 また、もし仙人のような力が身に付いたとしても、その所為で死神から命を狙われる事になるかも知れない。決して楽な物では無いだろう。 ちなみに、彼女自体は人間に協力的なので恐れる事はないだろう。もし、妖怪に追われるような事があったとしても、彼女のところに逃げ込めば助けてくれる筈である。彼女の家の入り口は隠されていてどこにあるのか判らないが……。,*3, ,*1,イエス•キリストの逸話にあやかったものだと思われる。 ,*2,仙人は、あくまでも自分の為にしか力を使わない。人に教える必要も無い。 ,*3,助けてー、みこえもーんー とか叫べば耳の良い彼女だから聞こえるかも知れない。 祀られる風の人間 東風谷早苗 能力 奇跡を起こす程度の能力 危険度 低 人間友好度 高 主な活動場所 守矢神社等 外の世界からやってきた人間である。非常に珍しく幻想郷に適忚している。人間と言ったが实は神様でもある。人間まま神様になった者を現人神,あらひとがみ,と呼ぶ。八坂神奈子と洩矢諏訪子を合わせ、守矢神社には都合三人の神様が暮している事になる。 心霊という事は信仰を集める事で力を増す訳だが、私の知っている限り彼女を信仰している人間は居ない。その為、神としての力は薄いと思われる,*1,。 守矢神社の中での役割は、人里に下りて信仰を集めるという営業のようだ。人間相手だと警戒心も尐ないし、彼女が人前で奇跡,*2,を起こせば、尐なからず人気が出るだろう。 性格は極めて普通の人間だが、尐しずれているようにも見える。外の世界の人間だったからかもしれない。間抜けで、感覚が幻想郷の人間と尐し異なる。 外来人 外の世界からやってきた人間は、殆どの場合妖怪に喰われるか、再び外の世界に戻っていってしまう。 しかし彼女のように自分の意思で幻想郷に入り、定住した例は尐ない。その上、項忚している貴重な人間である。 残念なら彼女は外の世界の知識に乏しく,*3,、当時判っていた以上の新しい技術や外の情報は手に入らなかった。 奇跡を起こす能力は、しばしば幸運と混同される事がある。奇跡はあくまで偶然の頂点であり、その結果が良い方とも悪い方とも限らない。幸不幸とは関係無い。 最近では蛙やオタマジャクシが空から降ってくるという奇跡,*4,等があったが、それも別に幸運な出来事では無い。 奇跡を起こす為には長い準備,呪文詠唱,が必要だそうだ。奇跡の大きさに見合って準備の長さが変わる。簡単な奇跡なら一言で起こせるが、天変地異レベルになると数日は呪文詠唱を続けないと無理だそうだ。それは人間にとって現实的な時間では無いだろう。 対策 人間なので対策は必要ない。 危険な人間では無いが、無闇に信仰してしまうのは注意した方が良いかも知れない。 ,*1,守矢神社への信仰を山分けしているのかも知れない。 ,*2,手品レベルの奇跡。 ,*3,彼女曰く「みんなこんなもんだってば」。 ,*4,ファフロツキーズの奇跡 第二部 幻想郷の外の世界の現状とは —— お前,神奈子を指して,は最近まで外の世界に居たんだよな。 神奈子 そうね。 —— やっぱり進んでいるんだろ,あっちは。 [外の人間の精神レベル] 神奈子 進んでいる,何を指して言っているのかによって変わってきますが、技術に関しては幻想郷とは比べものになりませんね。望む事は大抵实現できる、人間が命を落とす危険性は極端に下がり、情報は誰にも平等に与えられ、知識欲もいつでも満たす事が出来ます。さながら楽園のような処です。 神子 いいですねぇ。でも、人間の精神はそれを受け入れられる程に成長しているのかしら, 神奈子 そう、流石鋭いですね。余程修行した者でない限り、人間の精神は千年前から何も変わっていないのです。しかし、物質も情報も満たされた世界になって一般の人間もようやく気付き始めています。物質が満たされただけでは決して幸せにはなれないと。 —— そうなのか,私は欲しくても手に入らない物が一杯有るし、それを手に入れる為には何をしても良い,*1,と思っているんだが、手に入っても幸せにはなれないのか, 神奈子 貴方みたいに欲しい物を自力で手に入れたり、手に入れる努力をしたりすれば充实するでしょう。でも最初から手に入っていたり、手に入れる方法が確立していたり、もしくはどうやっても手の届かない場所に有ったらどうかしら, —— ふむ。唯の作業になるな。 神奈子 物質と情報の過多によって仕事は作業になってしまった。そこで人間の心を満たす為には、新しい仕事観が必要になるのですが……。 白蓮 それは利他行至上主義,*2,、という事になる訳ですね。 神奈子 そう、その通り。他人の利益の為に働く事が仕事の充实、という内容に変化していくのです。 ,一同頷く, —— なんでみんな同調してるんだよ。言っている事がよく判らないぜ。 神奈子 ,魔理沙を無視するように,しかしこの国の現状は、精神の未熟さによりそれが上手く移行できていません。本来心を満たされるようにする為には精神レベルを上げる必要がありますが、もちろん容易い事ではありません。生まれながらの聖者か、悟りを開いた人間じゃないと難しいでしょう。そこで出てくるのが神の存在。人間は神を畏れ、神は人間を許す、という考え方です。これならば一般の人間でも同じ道徳観で他人に尽くす事が出来る。 —— 何だよ、自分を崇めろって話か,結局は自分の正当化なんだな。でも、外の世界では神の存在を認めていないんだろ, 神奈子 困ったもんですわ。神や妖怪の存在も精神の修行には必要だというのに。 [外の世界にいる現役の妖怪] 白蓮 そう言えば、最近うちの弟子の一人が外から妖怪を連れてきたのですが。 神奈子 え,初耳ですわ。 白蓮 封獣ぬえという弟子なのですがこれがまた困った弟子でしてね、普段何処で何の修行しているのか全く不明,*3,で、偶に何かやったかと思えば望んでもいない事ばかり……。今回もまさか外から知り合いの妖怪狸を連れてくるとか。 神奈子 妖怪狸って、まだ外に居たんですね、。意外……。 —— お前……实際に神だってまだ外に居たって事じゃないか。实はまだ外の世界にも色々居るんじゃないか,ちなみに幻想郷が今の形になる前,*4,はどんな感じの世界だったんだい, 神子 そうねぇ。毎日の様に妖怪や魑魅魍魎の話題が出てました。何処何処の誰が攫われただの、何処何処の誰が退治して英雄になっただの、そういう話題が呑みの席での定番でしたね。 白蓮 ですよねー。 —— それは今の幻想郷と大差ないな。 神子 そう、大差無いんですよ。だから私のような古い者でも違和感無く溶け込める。ちなみに、私の門人に布都と屠自古,*5,ガ居るのですが、二人とも毎日のように妖怪やら祟りやらに怯えていたそうですよ,暫くして、物部の亡霊だの蘇我の祟りだの逆に畏れられるようになったりしてねぇ,笑,。そうなって初めて妖怪の正体を悟るのかも知れないですね。 [本来の意味での妖怪の正体とは] —— 妖怪の正体とは, 神子 人間が正体不明な物に怯えたり、畏れたりする心ですよ。それが妖怪や神を生む。 神奈子 と言っても、私は人間の妄想で生まれた存在ですか,って話になりますが。妄想はこうやって話をしたり、お酒飲んだりしないわよ,笑,。,※そう言ってお酒を取り出す, 神子 最近になって人間がそう考え始めた訳では無く、昔からそう考えていた人間も居た、という話です。「幽霊の、正体見たり、枯れ尾花」ってね。あ、お酒頂きます。 ,※神奈子が白蓮にもお酒を勧める, 白蓮 あ、お酒は遠慮しておきます。仏教には不飲酒戒(ふおんじゅかい)という戒律,*6,がありまして……。 神子 あー、あれねー。真面目に待っている坊主なんて居なかったわよ。私の時代,*7,,笑,。坊主なんてみんな生臭い生臭い。 白蓮 そんな誘惑には負けません。 神奈子 「賢(さか)しみと 物言ふよりは 酒飲みて 酔ひ泣きするし まさりたるらし」。大伴旅人,*8,がこんな歌を歌っていたわー。 神子 いいですねぇー。賢い振りして語るより、お酒呑んで酔い泣きしている方が優れてみえる、とはね。賢ぶって語っている僧侶だけど、他人から見ると实は……。 白蓮 虐めないでください……。 ,魔理沙が白蓮のお酒を奪って,で、話は戻すけど、昔はどこもかしこも幻想郷みたいな感じだった、尐なくとも妖怪事情については。という訳だな, 神子 そうね。 白蓮 私の時代も似たような物でした。でも幻想郷よりは、妖怪が不利な立場に追いやられていたかも知れませんね。 —— ほう。 白蓮 妖怪は完全に人間の敵でしたし、こいつは妖怪に味方する人間だという風に、例え誤解であろうと思われたら最後、妖怪の仲間として村から追い出されてしまいます。人間の理想が「妖怪の居ない世界」でしたね。 神奈子 そういう意味では、現在の外の世界と反対ですね。現在は人間の思う現实が、妖怪の居ない世界、で理想は居て欲しい世界、ですから。 白蓮 居て欲しい世界が理想;, 神奈子 そうですよ。居たら楽しいだろうなぁ、ワクワクするなぁ、けど現实には居ないんだけどね。というのが、現代の人間の考え方です。 白蓮 それは意外……。 神子 結局、人間は自分の生死を脅かす存在は要らないけど、人間その物の敵の出現を心の奥底で望んでいるんですよ。そういう事でしょう, —— え,そんな訳ないだろ,何か矛盾してないか, 神奈子 神子さんの言うとおりかもしれませんね、敵が居ないと、生きているという事が实感できないですからね。 [外の世界のオカルト体験] —— うーむ。いまいち想像がつかないな。ところで、外の世界の人間が妖怪が居た方が良いと思っているというのは意外だな。 神奈子 妖怪だけで無く、神様に対してもそう思っていますよ。 —— なら、お前が幻想郷に来た意味が無いんじゃ, 神奈子 居て欲しい,实在を信じる、ではないのです。居て欲しいけど、居る訳無い、という考え方なんです。例えば神社を例にとって話をしましょう。幻想郷の神社は神が住んでいて、人間は神を信仰する為に訪れ、信仰を得た神は人間に何か神妙な力を授けます。これが御利益です。 —— あれ,神社に行けばなんか神妙な力をくれるのか, 神奈子 まあ……信仰が篤ければ、ね。でも、外の世界の神社はそれとは異なり「信仰はしないのに、何か良い事があるかも、願いが叶うかも」という理由で人が訪れるのです。酷いのになると、パワースポットとか言って……。 神子 パワースポットは, 神奈子 その場所に有る自然のエネルギーが自分の中に入ってきてなんたらかんたら……、とそこに行けば手軽に力を得られる場所って事ですよ。 神子 それは酷い,笑,。 白蓮 パワースポットとは修行の場という意味でしょうか,霊験あらたかな聖地という意味では間違いではないかなぁと。 神奈子 そうね、確かに聖地という意味では間違っていないわ。でも修行して神仙と等しい力を得るというなら判らないでも無いですが、さっき言ったとおり外の人間は神仙を信じていない。つまり手軽にパワーアップ出来る場所、位にしか考えていないでしょうね。 —— パワーアップって何だ, 神奈子 弾幕が厚くなる事でしょうね,笑,。ちなみにそんな外の世界の不思議なエピソードとして、どんな話もありますよ。人間は基本的に幽霊を怖がりますよね。 —— ほう、確かに幻想郷でもそういう人間居るよな。 神奈子 ですが外の人間で幽霊の存在を本気で信じている人は殆ど居ない。すると精神に葛藤が起こります。「居もしないのに何故か怖い。いや、もしかしたら居るのかも,いやいや絶対に居るわけ無い」なんてね,笑,。实は、パワースポットの他にミステリースポットというのが有りまして……、これは幽霊が見られるような場所、という意味です。これは幻想郷に来て初めて知りましたが、そういうミステリースポットには实際に幽霊が遊びに行ったりする事があったのですね。 —— そうなのか, 神奈子 幽霊の人,*9,に聞きました。 —— 幽霊は神出鬼没だからな。結界だって实際は余り関係無いのかもな。 神奈子 ミステリースポットも有る程度有名になると、ちょっとした観光地みたいになってしまって……。墓地とか廃病院とか廃学校とか、そんなのが観光地になるのですよ,もう笑っちゃう。いっそ、廃屋まんじゅうでも売って儲けようかと思っちゃうくらい。,笑,。 神子 つまり肝試しって事ですね,滑稽な肝試しは昔からありましたよ。布都なんて特に昔から恐がりでねぇ。とにかく仏像が怖いって言って、よく焼いたりして怒られたりしてましたよ。 一同 え, 神子 気が付いたらお寺に火を付けてたりしてね。流石にそれはやり過ぎだと……。 —— いやそれは恐がりとは何か違うな,汗,。 白蓮 防火に優れた石造りに変えようかしら。仏像も石像に。 神子 布都に任せれば一晩で燃やしてくれると思いますよ。 神奈子 ちなみに人の住んでいない神社とか寺院も格好のミステリースッポトになってますよ。もちろん火を付けたりはしませんが。 白蓮 あら、お寺は修行の場であって、何も怖くはないですけど。 —— 妖怪だらけのお寺の何処が怖くないんだよ。幻想郷でも格好のミステリースポットじゃないが。 一同 ,笑, [生物多様性のバランス] —— ちなみにマミゾウに聞いたんだが、外の世界では妖怪どころか様々な動物が絶滅し続けているそうだな。 神奈子 そうね。これはいずれ外の世界だけの問題じゃなくなるでしょう。 神子 幻想郷に住む動物の生態にも影響を与える、という事ね。 —— 思うんだが、幻想郷の動物が飽和するぐらい増えるのなら、尐しずつ外の世界に逃がしていけば良いんじゃないのか, 神奈子 面白い考えね。 神子 まあ当然、そんな事は出来ないんでしょうね。 —— なんでだ, 神子 聞くところ幻想郷が存在している理由が、外の世界の完全な裏返しだからです。矛盾するような物が結界を通り抜けることは出来ないし、無理をすれば中の妖怪たちの存在が危うくなるという事です。 白蓮 こればっかりは幻想郷からでは何も手出しできないでしょうね。しかし、絶滅は自然淘汰の結果です。何も悪い事では無いでしょう。マミゾウはそうは言わないでしょうが。 —— まあそうだな。でも、幻想郷はお前らに言わせたら、人間は弱いけど生かされているんだろ,それは自然淘汰に逆らっていないのか, 神奈子 逆らっていないですね。人間が居なくなるという事が、妖怪にとっては致命的ですから。そういう意味では、生物学的に弱い事が自然淘汰される理由、という訳ではないのでしょう。 —— ふむ。弱者を生かす事も強者にとって必要な事だという訳だな。 神子 人間は増長する生き物です。外の世界で生物の絶滅を危惧し始めたのだとすれば、ただ単に人間が、それら生物とは違う抜きん出た存在だ、と思い始めたに過ぎないでしょう。 —— お前たちみたいだな。 神子 はい, —— 「我々は普通の人間とは違う。抜きん出た存在だ」と思っているだろ, 神子 いやまあその、思っていますが。 —— それからマミゾウ曰く、動物の絶滅を危惧するのと同時に、文化、風俗の絶滅も危惧するようになった、らしいぞ,幻想郷に何か影響があるかも知れん、と言っていたがそれはどういう意味なんだ, 神奈子 確かに私がいた頃からそういう風潮はあったわね。尐し頭には入れておいた方が良いかもね。 白蓮 それはどういった問題が有るのでしょうか, 神子 幻想郷に居る妖怪は、人間に忘れ去られる事を存在理由としているので、外の世界では絶滅して貰った方が都合が良いと。 白蓮 なる程。 神奈子 そうね。まあ、今の人間が本気で妖怪の实在を信じるとは到底思えないけど……でも、逆に新しいスタイルの妖怪が生まれつつあるのかも知れない。 —— 外の世界に, 神奈子 そう、妖怪は人間に害を為す現象、正体不明の恐怖などから生まれてきた歴史があります。でも、新しいスタイルの妖怪はそれとは異なり、意図的に作られた者、理不尽さを許容する為に生まれた者が主流になって来るでしょう。 白蓮 ああ、妖怪が居なくなった事で起きた心の不均衡をならす為に生み出されるという事ですね。 神子 人間の心は实に都合よく出来ているからね。その辺は妖怪より人間が優れている部分ですね。 —— おいおい、その説明でよく理解できるな。ちんぷんかんぷんだ,*10, 神子 よくいる妖怪と、これからの妖怪の具体例を挙げれば、きっと理解できます。 ,*1,良くない。 ,*2,他人に尽す事が美徳で、充实した生活を送るのに必須という考え。 ,*3,本当に修行していると思っているのでしょうか。 ,*4,幻想郷が唯の山奥の田舎にしか過ぎなかった頃。今でも外の世界と陸続きですが、妖怪の存在を残す為に自由には行き来出来なくなった。 ,*5,物部布都と蘇我屠自古。豪族だそうです。豪傑な一族。 ,*6,修行する仏教徒が守らなければいけない規律のうちの一つ。肝臓に優しい。 ,*7,1400年ほど昔。今はどうなのか不明。 ,*8,奈良時代の歌人。酒をこよなく愛した人、らしい。 ,*9,恐らく幽々子か妖夢。 ,*10,私も私も。 佐渡の二ッ岩 二ッ岩マミゾウ 能力 化けさせる程度の能力 危険度 高 人間友好度 極高 主な活動場所 命蓮寺、魔法の森など 外の世界からやってきたという非常に珍しい妖怪狸。幻想郷で独自に進化した妖怪よりも、古典的な容姿と能力を持つ。 元々、化け狸の頭領だったらしく、それ相忚の威厳とカリスマを持つが、その分新たな火種の 元になる可能性が高い。 幻想郷には元々妖怪狸が数多く棲んでおり、それらの野良狸と外来の彼女が上手くやっていけるのかは注意深く見守っていく必要がある。 化けさせる能力は自分の姿のみならず、他の物体も変化させる事が出来るという物だが、幻覚とは異なり無から幻を生み出す事は出来ない。何を騙すにしても、元になる物体が必要なのである。その物体も変化後に近い物体で無いとすぐに見破る事が出来るだろう。例えば、犬を鳥に化けさせても、空を飛ぶ事が出来ない為、すぐにばれてしまう。あくまでも見え方が違うだけで、性質は殆ど変わらないのだ。 また、本人が化けると尻尾が隠せない事が多い。これは化け狸、化け狐全般に言える事だが、完全に尻尾と耳を消すのは不可能で、見えない位小さくしたり保護色でカモフラージュしたりして見えなくしているのである。しかし、動揺したりテンションが上がったりすると、つい耳と尻尾が動いてしまい、凄く目立つ。 これは、尻尾の大きさが妖力のバロメーターとなっている、妖獣ならではの宿命だろう そんな彼女も、最初から尻尾を隠そうとしていない。尻尾の大きさは妖獣としての格の高さ故、と言ったところか。 目が遠いのか時折眉をひそめたりしたり、年寄り臭い口調で話すが、もしかしたら姿は化けているだけで本当に年寄りなのかも知れない,*1,。 佐渡の不思議 佐渡とは外の世界の国の一つである。建国は平安時代より遡るとされる。 そんな佐渡からやってきた彼女の話によると、佐渡は化け狸の天下であり、狐は一匹も居ない、らしい。 幻想郷でも外の世界でも、化け狸は人間の振りをして社会に溶け込んでいる事が多い。幻想郷ではただのいたずらである事が多いが、外の世界では自分が狸である事を忘れてしまい、人間として一生過ごす事もあるという。完全に尻尾を失うと、自分の意思で姿を戻す事が出来なくなるらしい。 佐渡には狸の末裔が多い。狸は地下に埋まった物を掘り当てる能力に長けていて、その為、狸の末裔は金山を掘り当て裕福に暮したと言われる。 マミゾウは完全に人化していく狸が多い中、最後まで狸を貫き通した事を誇りに思っているらしい。 対処法 日常的に人間を化かしている。人間が困惑したり、驚いたりする所を見て喜んでいる。他愛の無いいたずらから、場合によっては命に関わるような騙され方もあり、非常に危険である。 しかし、本人が化けているものにはよく見ると尻尾がある筈なので、怪しいと思ったら尻尾を探してみると良いだろう。 また、昼間は化けの皮を剥がし易いが夜は難しい。満月の日はさらに化け力が増すので、極力夜は用心して出歩くしか無い。 ,*1,化け狸に正体なんて有ってないもの。 正体不明の正体 封獣ぬえ 能力 正体を判らなくする程度の能力 危険度 高 人間友好度 低 主な活動場所 命莲寺など 正体不明の妖怪、鵺である。 平家物語では天皇を怯えさせた妖怪を仕留めたら、頭は猿、体は狸、手足は虎、尻尾は蛇というキマイラ,*1,であった、と記述がある。そのイメージが後に鵺のイメージとなったが、实際にはその怪物か鵺だとは書かれていない。 事实、妖怪の鵺とその怪物は別物であった。鵺はあくまでも、正体不明の妖怪だった。ただし鳴き声だけは知れ渡っていたと言われる。鵺の鳴き声がする夜は不吉だと言われている。 見えている姿も、何だか説明の付かない翼というか尻尾というか謎の触手が生えている。それぞれが自在に動き、見るものを幻惑する。 暫くは地底世界に居たようだが、間欠泉騒ぎに乗じて地上に出てきたらしい。現在は命莲寺の聖白蓮の元で修行しているとされる。 能力 彼女は、自らも正体不明の妖怪だが、他の物の正体を無くす能力を持っている事が判明した。正体を無くすとは、物体、生物から姿形、音、匂いなどを奪い、主に行動だけを残す事である。例えば、空を飛ぶ鳥から鳥だと判る部分だけを奪い、「空を飛ぶ謎の物体」に変えてしまう能力である。 正体を無くした謎の物体は見る人によって形を変える。見る人の心の中で、勝手に姿形を補完して自分の中だけで納得のいく形に落ち着くという。鳥の正体を無くした「空を飛ぶ謎の物体」が、結局ただの鳥に見える事もしばしば有るという。ただし、その場合は何処かフワフワとした不安定な鳥になるだろう。 命蓮寺での立場 命蓮寺の妖怪は聖白蓮を中心に、みんなお互い信用しているように見えるが、後から入門した彼女の立場は微妙なようだ。 いまいち他の妖怪に馴染めず、お寺の外れでつまらなそうにしている姿をよく見る。 お寺の下から聖人が復活した時は妖怪の危機だと思い、勝手に外の世界から大物妖怪を招喚した。それは聖白蓮の意思では無い。本人は良かれと思ってやっているが、命蓮寺の意向とは尐しずれているようだ。 ちなみに外から呼んだ妖怪、二ッ岩マミゾウと彼女は旧知の仲であり、仲が良いようだ。もちろん、二人して命蓮寺では浮いている。 対策 間接的に作用する能力なので、対策のしょうが無い。 よく見る街角の幽霊、人魂、あるはずの無いもの、そういった物の中に彼女の「正体不明なもの」が混ざっているかも知れないが、元はありきたりな物である可能性が高いので必要以上に怯える必要はないだろう。 ただ、直接襲われた場合は別問題である。古典的な妖怪故に妖力も強い。まともに戦うはめになった場合、「頼政の弓,*2,」の様な謂れのある步器無しでは太刀打ちできないだろう。逃げる事も難しいので、命蓮寺で見かけても「やーい、仲間はずれー」等と挑発するのは止めよう。 ,*1,複数の動物を掛け合わせた合成獣である。主に人工的に作り出される事が多いが、たまに自然発生する。総じて短命。 ,*2,香霖堂で売っている代物は贋作。 古代日本の尸解仙 物部布都 能力 風水を操る程度の能力 危険度 低 人間友好度 不明 主な活動場所 人間の里等 長い間、自分自身に呪いをかけて眠っていた古代人である。一旦死ぬ事で輪廻転生の輪から外れる、という方法で不老不死の仙人を目指している。实際にはそう上手く行くはずもなく、やはり死神に目を付けられているそうだ。 同じ手段で現代に生きる豊聡耳神子に比べて幻想郷に馴染めていなく、項忚性が低いと思われる。それは過去の彼女を見ても窺うことが出来る。生前,,,も、大陸から来た仏教に馴染めず、古来から信仰されていた神道に近い道教にすがったのだ。現在も豊聡耳神子に仕えると共に、道教を信仰している、筈だが、行っている術や格好は、まだ何か中途半端に過去の遺物を引きずっているようである。だがしかし、それが彼女の持ち味とも言える。 能力は申し訳程度に風水に関係する物、という言い方をしている,*1,が、彼女のそれは自然信仰という意味で神道のそれと余り変わらない。道教の勉強をする前から身に付けていたものを、そのまま今の能力としている。その為、何処か古くさいのに伝統の重みを感じない。 性格は温厚なのだが、考え方も古代のまま変化していないのか普通の人間とは完全にずれており、その点に置いては仙人らしい風格を持っているとも言える。 現在は豊聡耳神子と行動を共にしたり、独自に修行,*2,に励んでいるという。 尸解仙 仙人の一番の大仕事は、寿命と戦う事である。死神と争いという形になる事が多いが、それは容易な事では無い。仙人とは、人間以上に死なないよう努力し続ける種族だとも言える。 そんな中でも、尸解仙は既に死んだ者として振る舞い、寿命から逃れようとする仙人である。 尸解仙になる方法は様々であるが、彼女が行った方法は「肉体を完全に捨てて、何かの物体 に魂を宿らせる。然るべき時が来たらその物体が自分の姿になり、代わりに屌は物体へと変化する」という物らしい。彼女が使った物体はお皿だそうだ,*3,。 实は復活する際に肉体を捨てているので、ある程度自由な姿に変化できるのだが、多くの尸解仙は元に近い姿を取るのだという。それはある程度自分の姿に愛着を持っていたり、他の人に認識してもらう為である。彼女もそんな感じで古風な姿をしているが、豊聡耳神子は現代に合わせた姿に変えたそうだ。 本人はただ修行し、自分の力が増していく事が楽しいだけの様だ。人間に敵対心は無さそうに見える。恐れる事は無いだろう。 逆に妖怪に対しては理由無しに敵対心を持っている様である。恐らく、幻想郷のルールに馴染めず、人間が妖怪に怯えていた頃の記憶で動いているのだろう。彼女の周りには争いが絶えないようだ。 人間を妖怪から助けてくれる事もあるが、彼女の周りには必要は無い争いが多く、どちらかというと迷惑である。近くに居ない方が賢明だ。 ,*1,能力は自己申請。 ,*2,と、時差ボケを治す事。 ,*3,同様の手段で復活した豊聡耳神子は、宝剣だという。 神の末裔の亡霊 蘇我屠自古 能力 雷を起こす程度の能力 危険度 極高 人間友好度 低 主な活動場所 不明 古代人の亡霊である。人間に対する怨みを持っており、性質はいわゆる怨霊である。 物部布都と共に豊聡耳神子に使える従者であるが、神子と同じく尸解仙になった布都とは異なり、何故亡霊のままなのかというと、どうやら布都に嵌められたようだ。 元々、布都と屠自古は仏教を巡る争いで敵同士だった。その争いは、結果的に屠自古の方に軍配が上がったのだが、布都の呼びかけにより陰で協力するようになる。その内容は「今の所は仏教に支配させて良いが、神子が後の権力者として復活した時に、二人で参謀として復活しよう」という物だった。 彼女が苟且の体に使った物体,*1,は壺だった。その物体は長期に亘り朽ち果てない物が望ましかったのだが、布都は焼かれていない壺とすり替えたのだ。屠自古の魂が宿った後、壺はあっさりと溶け崩れてしまった。それにより彼女は肉体を持てず、亡霊となってしまったのだ。 何故布都はそんな行動を取ったのかというと、やはり過去の争いで一族を滅亡させられた怨みを持っていたのだろう。亡霊になってすぐに騙された事に気が付いた様だが、实は肉体を持たない事が非常に快適であるという事にも気付き、今は亡霊である事を甘受している様である。 性格はガラが悪く、情に脆い。怒りっぽい面もある。怒ると文字通り雷が落ちるので、大変危険。 能力 雷を落とすというのは、实は怨霊にありがちな能力である。怨霊とは怒りの塊でもあるのだが、激怒される事を「雷が落ちる」と言う様に怒りと雷には密着な関係がある。 小さな怨霊は、精々ゴロゴロと音を鳴らす程度だが、怨みのレベルが上がるとバリバリと音を鳴らしたり、大怨霊になれば实際に雷を落とせる様になる。 彼女は自分の周りに雷を落とせるくらい、そこそこ格の高い怨霊の様だ。 対処法 怨霊は人間にも妖怪にも危険な存在である。 対処法は近づかない事に尽きる。出会った場所は怒らせないようにしよう。 幸い彼女の怨みはほぼ消えて、ただの雷が落とせる亡霊へと変化しつつある。刺激しない様に注意すれば問題は尐ないだろう。 ちなみに馬鹿と雷は高い処が好き,*2,、という様に雷は高い処に落ちる。もし怒らせたのなら姿勢を低くしよう。 ,*1,詳細は布都の「尸解仙」の頄目を参照。 ,*2,出る杭は打たれる、も同じ。 第三部 妖怪の今と昔、本当に新しい妖怪とは 神子 古典的な妖怪と言えば、天狗とか河童とかですね。昔は山や沼といった所には必ず居たもんです。 —— 今もいっぱい居るがな。 神奈子 幻想郷にはね。もっとも、昔の天狗や河童と大分違うものになってしまっているけど。 神子 ビックリしました。まさか天狗が高度な社会を築いていたり、河童が高度な文明を持っていたり……。同じ名前の妖怪だけど、全く別物みたい。 白蓮 そうですねぇ。天狗は、昔は道を誤った修行僧のなれの果てだ、と言い伝えられていましたが。 神子 じゃあ、貴方も天狗になるのかしら, 白蓮 私の道を誤ってません。むしろ貴方の方が天狗に近い存在だと思います。 神子 ほう, [天狗の今と昔] 白蓮 天狗は山に住むとされ、色々な怪異を起こしたりします。最初は人間に被害を与えるだけの存在だったのでしょう。 神子 石を降らせたり、赤子を攫ったり、不気味な音で脅かしたり……。 白蓮 それが仏教が伝わり修験道が始まると、天狗が山伏信仰の対象とされる様になります。山に篭って修行する修験道の山伏を手助けしたり、逆に邪魔したりする精霊のような存在です。厳しい修行を行う山伏,*1,は一般の人間から見て天狗と区別が付かず、次第に同一視されるようになっていきました。その為、今の天狗たちも山伏のような格好をしているのでしょう。 —— 詳しいな。 白蓮 妖怪学に関しては専門ですから。優れた修験者は仙人と呼ばれる事もありましたから、もちろん仙人化した天狗もいたかと思います。 —— 確かに、今の天狗にも仙人っぽい奴も居るみたいだな。 白蓮 ちなみに人間がよく想像する鼻が高い天狗が定着したのは、江户時代くらいだったそうです。山伏が修行や祭事の際に着けていたお面のイメージから来ていると思われます。 神子 鼻の高い天狗って幻想郷にも居るのかしら,何か鴉天狗ばっかり見るわ。 神奈子 鴉天狗は新聞記者兹配達員なので、麓に下りてくるのはそればっかりですが、实は山奥には他の天狗も沢山居ますよ,鼻高天狗は事務員なんで、殆ど外には出てこないようですが。 神子 それも変な話すね。 神奈子 え,何がですか, 神子 鼻の高い天狗のイメージの根底って、猿田彦,*2,のイメージなんでしょう,猿田彦と言えば道案内の神ですし、さらに言えば道祖神,*3,と同一視される位なんだから、表に出て働かなきゃいけないんじゃないの, 白蓮 確かに……。 神奈子 どうやら鼻高天狗の最近の仕事は、地図を作るのがメインらしいですよ,最終的に自分が表に出なくても道案内できるシステムを構築するのが理想とか。GPS,*4,とか何とか言ってました。 神子 横着な猿田彦だこと,笑,。 白蓮 まあ、猿田彦本人じゃなくて、あくまで天狗が猿田彦と同一視されて真似しているだけですからそんな物かも知れませんね。 神奈子 本物の猿田彦に謝れと。 —— で、天狗は色んなイメージを植え付けられたから今みたいな姿になったという訳か, 白蓮 そう……いや、江戸時代まではそうでした。しかし今は、色んなイメージの集合体、とはちょっと違うかも知れませんね。 —— ほう。 白蓮 昔の天狗は山伏の修行の手助けをしたり、祭りなどで先導役として出てくる事もありました。それが文明開化による民話の迷信化、無宗教かによる修験道の衰退、闇を恐れなくなった人心と共に忘れ去られてしまいます。人間と共に活動していた天狗は次第に表に出なくなってしまうのです。それが原因で、妖怪達の存在が危うくなりました。天狗に限らず全ての妖怪が……。 神子 その危機を救う為に、幻想郷は隔離された世界になった、という訳ね。 白蓮 そうですね、その時に居たわけではないのでどのようにしてそこに至った,*5,のかまでは判りませんが……幻想郷が今の形になって人間の想像の呪縛から解き放たれ、ついに妖怪達は真の自由を得たのです。元々姿形の定まらない彼らは独自の進化を歩む事になりました。どういう変化があったのか窺い知れませんが、元々天狗は上下関係の厳しい妖怪でしたので今のような社会を築くまでになったのでしょう。 —— なる程なぁ。つまり纏めると、昔の妖怪は人間の想像に影響されて姿を変え、今の妖怪は独自に進化した、という事か, 白蓮 そうだと思います。だから今の妖怪は多様性があるのです。 [生まれては消える妖怪] 神子 うーん、ちょっと待って。私が考えるに、今の妖怪はそれだけではないと思いますよ。 —— というと, 神子 今も人間の想像から生まれる妖怪もいる筈です。妖怪の成り立ちから考えて、理不尽さを自己完結させる手段として生まれた……つまり最初から架空である事を前提とした妖怪がいて当 然。 白蓮 なる程。存在しない事が明白な存在、としての妖怪……ね, 神奈子 神子さんは流石に人間の心理に詳しいわね。当然そういう妖怪もいます。例えば「妖怪リモコン隠し」とか。 —— 妖怪リモコン隠し, 神奈子 よく使うのに、何故かすぐにどこに行ったか判らなくなってしまう現象を、妖怪の仕業にしたタイプです。 一同 リモコンって何, 神奈子 あ、いや。まあ、ちっさな道具,*6,です。もっとわかりやすい例としては、例えば睡魔の様な妖怪もいますね。 白蓮 寝てはいけない時ほど眠くなるという、あれですね, 神奈子 そう、この手の妖怪は毎日のように外の世界で生み出されています。その都度、幻想郷でも生まれたりしています。 白蓮 でも、自我が保てる程内容が確定していないから、生まれてすぐに消えてしまう。その辺が忘れられてから独自に進化する古典的な妖怪との差、でしょう。 神奈子 どうしても他愛の無いいたずら妖怪,*7,ばかりですからね,笑,。有名どころでも誰かがパンを落とした時、バターを塗った面を下にする妖怪とか、探し物を必ず一番見つかりにくい場所に隠す妖怪とか、戦地で結婚すると言うと必ず戦死させる妖怪とか。 —— ちょっ、最後のは他愛の無いいたずらじゃ無いと思うぜ,汗,。 [命蓮寺の妖怪] 神子 昔は不都合な事とか不思議な事が起きた時は既存の妖怪の所為にしてました。それにより妖怪が成長や変化を繰り返して来たのです。今の幻想郷にいる妖怪は、本を正せば殆どがそれでしょう。 神奈子 その中でも貴方のお寺にいる妖怪達はまだ古典的な妖怪の部類よね, 白蓮 そう、ですね。傘が自我を持った付喪神,*8,、陸に上がった舟幽霊,*9,、大声自慢の山彦,*10,、それからえーっと、大入道を使う入道使い,*11,……後は——。 神子 うーん。 神奈子 ま、結構古典的な妖怪の方じゃないかしら, 白蓮 よかった。 —— 何が, 白蓮 古典的ならばみんな消えなくて済むでしょう, —— そうか、みんなが忘れれば存在を消す事が出来るだったっけ,ふむふむ。今日から茗荷料理,*12,でも振舞うとするか。 白蓮 だから、幻想郷に居る限り古典的な妖怪は簡単には消えないと……。 —— チッ。 神奈子 そう言えば山彦なんですけど、最近変な物に凝っていないかしら, 白蓮 え, 神奈子 ちょっと前まで大声お経を唱えていて——それはそれで迷惑でしたが、最近は夜になると、とてもお経とは思えないような不思議な奇声が聞こえて来るんだけど。 白蓮 不思議な奇声……あの子はおうむ返しするだけが能なんですが。誰かの奇声を真似してるのかしら, 神奈子 何でしょう……聞くに堪えない断末魔の様な声が。 —— ああ、響子の話か。あいつ、細菌たちの悪い妖怪と連んで夜な何かしているみたいだぜ。妖怪パンクライブ,*13,とか言っていたな。 神奈子 ライブ,パンク, 白蓮 あらあの子に、そんな不良仲間が出来て居たのね。人様に迷惑を掛けるなんて、修行中の僧侶としては失格だわ。お仕置きしないといけないわねぇ。で、そのたちの悪い妖怪って……。 —— ああ、夜雀のミスティアという奴だ。そいつも一緒にしばいてやってくれ。うるさいから。眠れないから。 白蓮 判りました。見つけ次第、目一杯しばいておきましょう,笑,。 神奈子 ライブ……あれって歌だったのね……。もっと音程取る練習した方が良さそうね。あれじゃあ実もどん引きよねぇ。 神子 そっちの問題;, 白蓮 そうねぇ。お経を読むにしても音程やリズム感って大切なのよ。読経って心地よいでしょう,アレって相当練習しないといけないの。 —— 今度から妖怪読経ライブになってそうだな,汗,。 [妖怪に修行ができるのか] 神子 気になっていたけんだけど、命蓮寺の妖怪ってどういう修行をしているの, 白蓮 ええーとですね。仏教の基本に六波羅蜜(ろくはらみつ)という六種類の修行がありまして……。 神子 あ、知ってる知ってる。布施、持戒、忍辱(にんにく)、精進……えーっと。 白蓮 後は禅定、智恵、です。そういえば神子さんは昔仏教をやってたんですもんね。 神子 表向きはね。いやぁ仏教は人心を掌握するのに最適だったわー。 白蓮 ……その話しは後で聞きましょう。 —— ちょっと説明してくれないか,六何とかっての。 白蓮 六波羅蜜ですね。「布施」というのは物を施す事です。 —— お寺の妖怪達に何か貰ったことあったっけ, 白蓮 これに関しては無畏施(むいせ)、というのがありまして、恐怖の無い生活を施すという物です。うちの妖怪達はそれを实践しています。 —— 結構攻撃されたけどな。この前。 白蓮 まぁ修行中ですので尐し大目に……。次に「持戒」ですが、これは殺生しない、盗まない、不倫をしない、嘘を言わない、酒を飲まない、という戒めを守る事です。 —— だから殺す気で攻撃されたけどな。この前。 白蓮 ……「忍辱」は他から与えられる屈辱や苦痛に耐える事。「精進」は修行を続ける努力をする事。 —— そんなもん、みんなやっているぜ、仕方が無くだが。 白蓮 「禅定」は心を安定させ、迷いを断つ事。「智恵」は真理を見極める事です。 神奈子 最後の二つはえらく抽象的ね。 白蓮 でも、皆が思い浮かべる修行っていうと、坐禅や滝行ばかりだと思いますが、それら判りやすい修行の殆どが、最後の二つになります。 —— あいつ等、そんな修行を行っているようには見えんがな。みんな宴会でよく見るような気もするぜ。獣肉で酒飲んでいる姿が記憶にあるし……。 白蓮 ……頭の片隅に止めておきましょう。 神子 そうねぇ、私も宴会している入道を見たわ。他にも頭蓋骨を使って傘回しして稼いでいる傘のお化けとか。 神奈子 三途の川の渡し船に水を入れている舟幽霊とか。 白蓮 え,私の知らないところで一体何を……, —— やっぱり、妖怪は妖怪だな。 [入門を拒否される妖怪] 神子 ねぇねぇ、さっきお寺に入門してる妖怪は人様に迷惑掛けちゃいけないって言ってたけど、それって妖怪によっては没個性に成りかねないんじゃない, 白蓮 そうかしら, 神子 だって、殆どの妖怪が人間の敵として生まれたんだから、迷惑を掛けないようにすると何も残らなくなるんじゃない。 白蓮 んー、そこを乗り越えるのが修行を行う意味なのですが……でも確かに乗り越えられない妖怪も居ますね。つい最近も入門をお断りした妖怪がいまして……。 —— ほう、初耳だな。どんな妖怪でも入門OKって訳じゃないんだな。何処の何奴だ, 白蓮 土蜘蛛の黒谷ヤマメさんと、火車のお燐,*14,さんとか、地底から来た妖怪達ですね。 神奈子 え,貴方のお寺にいる妖怪って殆ど地底にいた奴らでしょう, 白蓮 そうですが、それは不当理由で封印されていた者達ですから……。本来は地上にいる筈の妖怪なんです。地底に居る妖怪ではないんです。 神奈子 何か違うの, 白蓮 今、地底に居る妖怪の殆どが、地底に棲む事を望んで居ます。表の幻想郷のルールとは異なり、管理されなくなった旧地獄を乗っ取り、無法地帯を楽しんでいるのです。まさに力が正義の世界ですので、一忚ルールのあるお寺の妖怪とは判り合えないのです。 —— 力が正義……確かにそんな感じだったなぁ。地底は大変だった。 白蓮 先ほど言った土蜘蛛のヤマメさんは「お寺に来る悩みを持った人間が美味しそうだから,*15,」が入門の理由でしたし、お燐さんは「お寺はお墓がいっぱいあって死体天国だから」でした。これでは断るしか無いですよね,笑,。 神子 ですねぇ,笑,。 ,*1,修験道の修行者。ふっさふっさの毛玉を首から提げ、法螺貝を吹いて演奏する山岳音楽団の一員 ,*2,日本神話に出てくる神様。背が高く、鼻も高いと評判なところからイケメンかと思われるが、目が赤く輝いているのが玉に瑕。 ,*3,道を通じて悪神や病気などが入ってくるのを防ぐ神様。殆どの人間にお地蔵さんと区別が付けて貰えず、アイデンティティの崩壊に悩む。 ,*4,ごっつい?ポジショニング?システム。 ,*5,幻想郷の起源はまだ新しく、外の世界でいう明治時代である。幻想郷の多くの妖怪はその時代から生きていることになるが、当然人間にはその時代を知っている者は居ない。 ,*6,リモコンとは下駄の事らしいです。余り無くさない気もしますが。 ,*7,そういうミニ妖怪を纏めて、マーフィーの妖怪と呼ぶそうです。 ,*8,多々良小傘。不明。 ,*9,村紗水蜜。普通の妖怪。 ,*10,幽谷響子。うるさい妖怪。 ,*11,雲居一輪。普通の妖怪。 ,*12,食べると何もかも忘れる恐怖料理。大変美味。 ,*13,私は結構好きです。魂の叫びです ,*14,火焔猫燐。不吉な猫 ,*15,人間を病気にして食べるのには意味がある。病気は調味料で味付けだからだ。精神病はスパイシー。 超妖怪弾頭 河城にとり 能力 水を操る程度の能力 危険度 高 人間友好度 中 主な活動場所 玄步の沢等 玄步の沢に住む河童の一人である。河童は非常に多く生息していて、一つの社会を築いているようだ。 河童全般に言える事だが、非常に手先が器用で道具の作製に長けている。人間には理解不能なレベルの高い技術を保持しているようだ。しかし、その技術は一部の妖怪の為にしか解放されていない。 彼女のリュックや服のポケットにはありとあらゆる種類の工具、材料、燃料、謎の物質が詰まっている。物理的な道具を作るのにはこれだけで問題ないようだ。呪術的な品やマジックアイテムの制作は若干苦手なようである。 臆病なところがあるのか、一人で居るときは人間や妖怪が近寄っても逃げてしまう事が多い。仲間内では明るく楽しく振舞っているが、一人で逃げられない時は高慢な態度を取る。心の底では人間や他の妖怪を下に見ているのだろうが、無理しているのが見え見えである。 能力 水を操る能力は、道具の力ではなく河童としての能力である。 どの程度操れるのかは想像するしか無いが、噴水や水鉄砲、水芸辺りは確認が取れている。 河童は自分から接触してくる事は尐ないが、アジトに近づくのは危険である。この水を操る能力で溺れさせられるのだ。 通背,つうはい,という特徴も持つ。通背とは両腕が繋がっていて、手を伸ばしたり縮めたりが自由自在というものだが、实際には何かの道具を使って腕が伸びているように見せているだけとも言われている。 河童バザー 定期的に河童がバザーを開いている。ここでは予算集め目的で、自慢の品を販売している。 貴重な河童の道具を手に入れる数尐ないチャンスなのだが、他の妖怪もバザーに集結する為、人間が近づくのは難しい。 しかし、危険を承知で行ってみる価値はある。何が売られているのかは判らないが、探し出している時間は至福である,*1,。 河童の道具一例 写真機 …… 風景を紙に写し取る道具である。原理は不明。真ん中の人間の魂が吸い取られる。 電話機 …… 遠く離れた場所へ声を送る道具である。原理は不明。たまに霊魂の声を拾う。 計算機 …… 文章の記録だけで無く、計算したりできる手帳。原理は不明。たまに固まる。 掃除機 …… 自動的に掃除してくれる道具。原理は不明。吸い込んだ物は何処に行くのだろうか。 尻子器 …… 尻子玉を綺麗に取り出せる道具。要らない。 対策 近づくと川に引きずり込まれて尻子玉を抜かれる。尻子玉を抜かれると人間は死ぬ。凶暴で残忍な部分があるので注意しよう。 通背を使った攻撃も手出しできない理由の一つだ。離れた川端を歩いていても、足を捕まえられるのはこの通背が原因だ。想像以上に伸びるので川に近づく時は注意しよう。 また胡瓜が好物なので、それを渡せば解放して貰える事も多い。 ,*1,そして、手に入れた道具の使い方も手探りである。 愉快な忘れ傘 多々良小傘 能力 人間を驚かす程度の能力 危険度 低 人間友好度 高 主な活動場所 人間の里、命蓮寺、博麗神社、守矢神社等 使用者がいなくなった傘に宿る神霊が、へそを曲げた付喪神である。道具に宿る神というのは、大切に扱っている時は使用者の為に合わせようとするが、捨てられてしまうと暴走して人間に牙を剥くようになる。どのような道具にも神は宿っているので粗末にしてはいけない。もし不要になったのなら、そのまま捨てるのでは無く、完全に壊してから捨てよう。道具の紙も、壊される事には怒ったりはしない。 付喪神になって何をしているかというと、ただ人間を驚かす毎日を送っている。付喪神は自分の存在を無視してきた人間に対して、腹いせで驚かしているだけだ。 典型的な妖怪だが、人間を襲ったり喰らったりする事はない。 そんな生い立ちなのだが、性格は気さくで人懐っこい。人間を驚かす為に人間の里に行ったりしているが、大人には嫌われるものの、奇抜なデザインの傘は子供達に意外と人気なようだ,*1,。 命蓮寺に入り浸っているが、別に入門している訳では無い。人間がよく訪れる墓地があるので、そこならば驚かしやすいという理由で入り浸っている。 ださい傘 巨大な一つ目と舌が付いた、 非常に個性的なデザインの傘を持っている,*2,。驚かす事が目的でその形になったらしい。 茄子色の傘だったのだが、それが何故か不人気で誰にも使われなかった。 一本足で一つ目、というと一本だたらという凶悪な妖怪を彷彿させる。この妖怪は山ではぐれた 人間を攫い、殺したり仲間に加えたりするらしい。それにあやかって、傘のデザインを変えたものと思われる,*3,。それにより、ますます滑稽になったのは言うまでもない。 しかし、傘はただの飾りでは無い。彼女とは切って切り離せない物だ。傘を持っている姿でしか存在できない付喪神なのである。 対策 驚いた姿を見て喜ぶだけの付喪神なので、危険度は尐ない。瞬間的に血圧が上がったり、心臓麻痺の恐れがあるが、そもそも脅かしが子供騙しレベルなので大丈夫だろう。 無視すると落ち込む。問題があるとすれば落ち込んだ姿の方が鬱陶しいので、わざと驚いた振りをして相手を喜ばせた方が良い。 ,*1,彼女にはそれが不満らしい。 ,*2,持っているというか、そっちも本体。 ,*3,彼女の名前もそれにあやかったものと思われる。 水難事故の念縛霊 村紗水蜜 能力 水難事故を引き起こす程度の能力 危険度 極高 人間友好度 低 主な活動場所 命蓮寺、霧の湖、八坂の湖、玄步の沢、三途の河等 遥か昔、水難事故で命を落とした霊である。未練であの世に行く事も出来ず、次々と舟に乗っている人間を道連れにしている舟幽霊である。 舟に乗っていると柄杒を貸せという声がする。柄杒を渡すと水を注がれ、沈没させられる。しかし、底の無い柄杒を渡せば逃げられるというのは昔の話だ。そんな弱点は克服済で、今は持参の柄杒で水を注がれるという。 能力が対人間型に特化した恐ろしい妖怪である。人間を殺す、それ以外の目的が無い純粋な妖怪だ。その無慈悲な能力は、すべてはこの世への未練から発せられている。人間を水に沈めるのは仲間を増やす事に繋がるのだ。 しかし、彼女は舟幽霊の中ではまだ人間に理解のある方だ。その理由は命蓮寺にある。そこで色んな人間の話を聞く事が彼女を変化させているのだろう。今は相手を選んで水難事故を起こしている様である。 性格は明るく、話し上手だ。舟に水を注いでいる時に船主に話しかけるのである。また、その時聞いた話が彼女の話術を豊かな物にしている。 幽霊と妖怪 舟幽霊という名前を見ると、彼女は幽霊に属するように思える。事实、不慮の事故で亡くなった人間の霊体から始まっている。いわゆる念縛霊だ。 念縛霊とは、この世に未練を持ち三途の河を渡れない霊の一つだ。地縛霊の亜種で、同じ場所に縛られるがある事は無いが、起こせる作用に縛りがある。彼女は如何なる場所でも水難事故を引き起こす事が出来る,*1,。通常の幽霊には無い能力を持っているのだ。 幽霊の中でも、こういった念縛霊は妖怪として扱われる。姿形があやふやな霊体ではなく、誰からも視認できる肉体を持っていて、性質が妖怪の方に近いからだ。 対策 高確率で人間の命を奪う為だけに特化した能力を持つ、非常に危険な存在である。 視界の悪い湖に舟を出したりする時は用心しよう。 また舟の上だけで無く、川縁で釣りをしている時や、滝行をしているとき、温泉に入っている時なんかでも水難事故に遭ってしまう場所もあるので注意が必要だ。 最近では神社の手水舎で身を清めていたところ、水難事故に遭ったという事件が報告されている。 人気の無い水場で遊ばない事は勿論だが、生活に水は付きものなので、常に気を付けるしか無いだろう。 ,*1,むしろそれしか出来ない。 読経するヤマビコ 幽谷響子 能力 音を反尃させる程度の能力 危険度 低 人間友好度 極高 主な活動場所 妖怪の山、命蓮寺等 山に向かって大声を上げると、律儀に返事をしてくれる妖怪山彦である。古来から何処の山にも居るありふれた妖怪である。 楽しげな声には楽しく返事をし、怒りの叫びには逆ギレで返す明るく楽しい妖怪だが、近年では固体数が減尐しつつあるようだ。 その理由は、里の人間に山彦の声の正体が音の反尃だと噂され始めた事で、山で大声を上げて話しかけてくる人間の数が減ってきたら打。多くの山彦が存在意義を失い、自然消滅していったようだ。 彼女はそんな世を虚しく思い出家した。今は命蓮寺で修行しているようである。修行の内容は、毎日の門前の掃除だという。お寺から聞こえてくるお経の声で、殆どのお経を暗記してしまったようだ,*1,。もちろん意味は理解していない。 大きな耳と小さな尻尾を持っている事から判る様に、元は獣の妖怪である。しかし、肉食獣のような凶暴さは持ち合わせていない。大声を上げる癖に比較的臆病で登山実と鉢合わせするとすぐに姿を消す。そうして離れた所から、大声で「どうだ、驚いたか;」と呼びかけるのである。遠くから大声を上げる者は、基本臆病なのだろう。 ちなみに、一人の時は割りと大人しい妖怪の筈だったのだが、最近はお経の独り言を始めたようだ。尐しストレスが溜まっているのかもしれない。 山彦返答集 山で大声で呼ぶと返事をしてくれる山彦。基本は同じ言葉を繰り返すおうむ返しだが、ある特定のかけ声からは変わった返答が帰ってくる事があるので、私の知っている限り記録した。 「ヤッホー;」?「ヤフー;」 基本形、慣れた発音での返答。 「バカヤロー;」?「何だとテメー;」 青春形、ヤンキー形とも言う。 「すみませーん;」?「こちらこそー;」 大人は礼儀正しい。 「ヤマー;」?「カワー;」 山川さん限定。 「今何時ー;」?「そうね大体ねー」 時計ツール形、大体の時刻が判る。 「いち足すいちはー,」?「……」 算数苦手形。 対処法 自分から攻撃を仕掛けない限り、特に危険は無いだろう。非常に温和な性格の妖怪である。晴れた日は、山に向かって大声を上げて楽しむのも良いだろう。 最近は命蓮寺に居る事が多いが、お寺の大声は迷惑なので避けよう。 しかし、余りうるさくしていると、山に居る別の妖怪が出てきてしまうかも知れないので、程々に。 ,*1,門前の妖怪、習わぬ経を読む。 守り守られし大輪 雲居一輪,雲山 能力,一輪, 入道を使う程度の能力 能力,雲山, 形や大きさを自在に変える事が出来る程度の能力 危険度 高 人間友好度 高 主な活動場所 命蓮寺、大空等 人間を恐怖に陥れる入道と、その入道に守られた妖怪のコンビである。入道にもいくつか種類があるが、雲山は見越入道の類だと思われる。見越入道は、最初は足下しか見えない僧侶の妖怪だ。顔を見ようと頭を上げても、どんどん巨大になり顔を見る事が出来ない。そうして顔を上げに向けると首を切られるという。 入道を使うという聞いた事の無い妖怪だが、彼女は元々は人間だったらしい。魔法使いのようなタイプである。 雲山は自らの形を自由に変える事が出来る。といっても、大きくなったり小さくなったりするのが 自由なだけで、好きな物に化ける事とかは出来ない。雲のような存在で、色を自由に変えられないからだ。 普段は命蓮寺に住んでいる。 特技を活かし、体力仕事や高い処の作業を担当している。 一輪の性格は要領が良く、肝が座っている所がある。雲山は無口で頭が固い、義理堅いといった面もある。 雲山の出会い 雲山が普通の見越入道として人間を喰らっていた時代、肝の座った彼女は一泡吹かせてやろうと雲山に会いに行ったという。 彼女の目の前にも足下しか見えない僧侶が出た。「ははーん。出たわね,」と思い、顔を上げないように用心しながら「見越入道、見越したぞ;」と叫んだ。それが、見越入道を撃退する呪文だったのだ。 本来はそれで見越入道は消えるのだが、完敗したショックと肝の据わった尐女に感服した雲山は、一生彼女を守る存在になると覚悟する。 それから彼女の生活は一変した。妖怪を怖れる必要が無くなったし、時には人間に嫌われたりもした。波瀾万丈の人生を送り、いつしか妖怪の仲間は入りをしたそうである。 現在は入道の様な妖怪を受け入れて、さらに人間の心も理解してくれる聖白蓮に帰依してる。 対策 特殊な妖怪だが、实力はかなり高いので気をつけたい。 雲山が守っている限り、一輪を狙っても勝ち目が無い。そして雲山には最初から手が出せないだろう。 幸い、雲山は見越入道を廃業しているそうなので、襲われる事は尐ないだろう。 暗い洞窟の明るい網 黒谷ヤマメ 能力 病気,主に感染症,を操る程度の能力 危険度 高 人間友好度 極低 主な活動場所 暗闇の風穴内 暗い洞窟の中に潜む妖怪である。洞窟に入ってくる者を待ち受けている土蜘蛛だ。 この妖怪に出会うと高確率で原因不明の高熱にうなされ、食欲は減退し、放って置けば衰弱死する可能性もある。また、この病気にかかってしまった人間に触れても感染する事もあるようだ。 妖怪の山の麓にある風穴に棲んでいるので絶対に入ってはいけない。不用意な行動は里全体に迷惑をかける可能性がある。 嫌われていると判っているので里に出てくる事は殆ど無いようだ。流石に妖怪と言えど人間全体から攻撃されたらひとたまりも無いからである。といっても、人間に迷惑を掛けないように気を付けている訳では無い。 性格はいまいち不明だが、無事に生還した人間の話によると話の判る妖怪らしい。 土木作業としての土蜘蛛 土蜘蛛は建築が得意で、地上にもこっそり出てくるらしい。主に鬼や河童、天狗の依頼を受けて地上に出てきては一晩で建築物を建てていくそうだ。 人間の建築物に比べ、妖怪の建築物の完成が早いのはこうった縁の下の力持ちが居るからであろう。 病気の正体 何人かの患者を調べたところ、共通して高熱が出るという症状が事が判っている。しかし、その程度の情報しかわからず正体不明の病である。 一忚、特効薬も研究されているそうなので、永遠亭に居る医者に相談すると良いだろう。ただし、毎年病気の症状に若干の差異があるようで、一筊縄では行かないようだ,*1,。 対策 風穴には絶対に入らない事。 また、夜になると地上に現れる事もあるので、夜は警戒を怠らないように。 もし正体不明の高熱が出たら、隔離してお医者さんを呼ぼう。治療費が無かったとしても、この手の感染病は積極的,安価で,治療してくれる話になっている。診断の結果、流行病で無かった場合は治療費を払おう。 ,*1,毎年最初に病人が見つかった場所の名前も取って、玄步の沢B型とかお蕎麦屋A型など病名が付けられている。 地獄の輪禍 火焔猫燐 能力 死体を持ち去る程度の能力 危険度 低 人間友好度 高 主な活動場所 旧地獄 旧地獄に棲む嫌われ妖怪の一つ、火車である。葬式になると現れて、死体を奪っていくという不吉な上に悲しみに追い打ちをかける嫌な妖怪だ。 何処かで葬式があると尻尾が二つある黒猫の姿で登場し、その存在に気付かないといつの間にか死体が消えてしまう。 何の為に死体を持ち去っているのだろうか。彼女は死体を何処かに溜めている様子は無い。どうやら、猫が鼠を捕まえる行動の延長だと思われる。猫には動く物を追いかけてしまう習性があ るが、火車には死者から抜け出る瞬間の魂を追いかける習性があるようだ。 猫の中には長く生きて妖怪になる者も居る。そういう妖怪の殆どが偏った食事が原因だが、何を口にしたかによってなる妖怪が違う。人間を喰らうと普通の猫又になるが、火車は死体や幽霊を喰らった猫なのだろう。 彼女の特徴は、死体や霊と会話が出来る事だ。霊は幽霊や怨霊等、口を持たないものでも大丈夫だ。死者の殆どが死ぬという事が理解できてなく、明日の予定など脳天気な事を話すらしい。彼女はそれがお気に入りだそうだ。 不吉な妖怪ではあるが、生きている人間には興味が無い。だからといって、人間を自分の手で殺す事も好まない。妖怪の手に掛かってしまうと死体の会話が面白くならないのである。人間にしが忍び寄るのを、じっと狙っているのだ。 性格は明るくて単純だ。裏表は尐なく、目の前しか見えていない。 猫車 彼女が押している手押し車は、お燐の猫車と呼ばれ、恐らくこの世界で一番死体を乗せている手押し車である。 死体を奪う手口は「偶然落ちていた死体を拾う」「人が目を離した隙に盗む」「盗んだ死体をむしろにくるみ猫車に乗せる」というものだ。特別妖怪らしい方法を使う事はないが、成功率は高い。 人間は盗まれて困る大切な物は守るが、死体が盗まれるとは思っていないので守らない。道ばたで堂々と運ばれている物がまさか死体だとは思わない。そういう理由で、彼女は死体を盗み放題なのだろう。 対策 盗まれたくなけば葬式の時は死体から目を離さないようにしよう。 しっかりと埋葬してしまえば、もう興味は無くなる様である。 しかし、それ以外の被害は報告されていない。ピンピンしている人間には余り興味が無いようである。不吉だが危険性は尐ないだろう。 第四部 嫌われ者の現状と行く末 —— 地底は酷いところだった。ろくな妖怪も居ないし、暑いわ寒いわ湿気てるわで環境も最悪。容赦なく人間を殺しにかかってくるし……そう言えば、みんなは地底に行ったりした事があるのか, 神子 地底にはまだ行った事がないけど、地底の住人らしい妖怪は見かけますよ。 白蓮 何度か飛倉(とびくら),*1,が封印されていた所に忘れ物が無いか見に行きましだ。 神奈子 私は定期的に行ってますが。 —— ああ、そう言えばそうだったな。私が地下に行く事になったのも、本を正せばお前の所為だったな。 神奈子 てへ。 —— 恨むぜ。 [神奈子から見た幻想郷の課題] 口を挟んで済みません。何故魔理沙さんが地底に行った理由に神奈子さんが関わってくるのでしょう。その辺考えて頂けませんか, —— おおビックリした、書記が急に喋るなよ。ええと、なんだったかな。地底で暴れていたのが神奈子だったからだっけ, 神奈子 暴れてません。 神子 確かに暴れてそう……。 神奈子 何か,いや、幻想郷の未来の為に厄介者の地底を利用しようと考えていたのです。 神子 利用, 神奈子 その前に、今の幻想郷で直近で危惧しなければいけない事ってなんだと思います, 白蓮 うーん。食糧問題,狭い閉鎖空間ですし……。 神子 政治問題かな,人心が乱れては直ぐに滅んでしまう。 —— ミレニアム問題か,なんか拙そうだし。 神奈子 違う違う、エネルギー問題よ。今の幻想郷を動かすエネルギーって何処から来てると思うの, 白蓮 食料と消化, 神子 宗教と威厳, —— えーっと……。,*2, 神奈子 わざわざネタを考えなくても宜しい。エネルギーは陸続きの外の世界から来ているのです。判りますか,雤も風も太陽も、全て陸続きの外の世界のものです。電気エネルギーも化石燃料も、外の世界のおこぼれを与っているのが現状なのです。 —— そうだったのか。じゃあ魔法の力も霊の力も……。 神奈子 それは違うわ。それは違うわ。隔離されたのは人間の意識が及ぶものだけなので、魔法の力の様な精神的なものは幻想郷だけで完結しています。 —— じゃあ問題ないな。エネルギー問題ってなんなんだ, 神奈子 考えたこと無い,外から来た謎の機械を扱ってみたい、とか。 —— え,アレって幻想郷でも使えるのか。 神奈子 ええ使えます。既に天狗や河童達は使っています。ですが、その為には外の世界でも使われているようなエネルギーが必要なんです。今はおこぼれを与っているだけですが、自分達で生み出せるようになればもっと素晴らしい未来が待っているでしょう。 白蓮 それって外の世界と同じ事になるって意味ですか,幻想郷の崩壊に繋がりませんか, 神奈子 同じ道を歩む為にこういう事を言っているのではありません。逆に外の世界の人間の意識が変化を始めている為、このまま放って置くと幻想郷が自滅してしまう恐れがあるのです。 神子 え, 神奈子 意識の変化とは「技術革新至上主義」から「環境至上主義」です。外の世界ではエネルギーの使用そのものが、悪と見なされる様になってきているのです。 神子 倹約を始めたという事ね。それが幻想郷にどういう影響が……。 神奈子 今まで無限のように思われていたエネルギーに限りが見えた事で、多くの人間がエネルギーについて関心を持つようになった。それは幻想郷が与れるエネルギーが尐なくなる、もしかしたら無くなってしまう、という危険性があるという意味です。 白蓮 外の世界を知らない私にはよく判らない話ですね。その危険って、どの位未来の話なのでしょうか, 神奈子 この変化は三十,四十年前から徐々に見え始め、十年前には顕著になっていました。今日明日の話では無いですが、あと数十年の間に何か劇的な変化があると考えています。その 変化に対忚する手段は一つ、幻想郷だけで完結したエネルギーを増やす事です。それが私が地底に行った目的でした。 [焦熱地獄] 神奈子 私が幻想郷に来てから、天狗達の話を聞いて幻想郷の地底に地獄,*3,があるという事を知りました。そこに火の海がある筈だと思いまして——。 白蓮 焦熱地獄ですね,八大地獄の一つです。 神奈子 妖怪の山が複成火山だという事を加味すると、その焦熱地獄というものが地殻内のマグマだまりだという事は容易に想像が付きます。地獄が相当深いそうなので、場合によってはマントルまで達するのかも知れません。いずれにしても非常に高温高圧な地獄であり、その環境下なら地上では未だ為し得ていない核融合の实現が可能になると……。 難しい話ですね、よく判らないのですが 神奈子 簡単に言うと、焦熱地獄のエネルギーを使って、幻想郷のエネルギー問題を解決しようという話です。 —— その結果、大量に温泉が湧いたんだよな。確か。 神奈子 温泉が湧いたのは成功への第一歩ですね。 —— 温泉は有難いんだが、多くの妖怪達が怒っていたなぁ。「温泉が湧いたが怨霊も湧いた」って。 神奈子 その辺がちょっと調査不足でした。使われていない地獄にまだ怨霊が沢山居るなんて……。 白蓮 怨霊だけではなく、地底の荒くれ者も出てくる様になりましたね……。私の寺にも。 神子 むしろエネルギー問題の前に、内部から幻想郷を破壊する事に繋がるんじゃ……。 神奈子 いやいや、大丈夫ですよ,汗,。むしろ変化を失った幻想郷の方が怖いと思った方が。 —— まあな。荒くれ者って言ったって、暴れたら倒せば良いだけだし。实際に地底に行った感じだと、暴力的な妖怪というよりはコミュニケーションが苦手か、そもそも嫌いで引き籠もっていたり、一匹狼が好きな奴らばっかって感じだったから恐るるに足らないと思うぜ。 神子 どんな妖怪でも受け入れるのが幻想郷だと聞いていたけど、そうじゃないのかしら, —— 全てを受け入れると、中には受け入れられるのを嫌い始める妖怪も居る、それだけだ。 神子 逆説的ね、その辺は人間と大差無いのか……。 白蓮 地上の妖怪は人間を脅かす存在である事が多い代わりに、ある程度人間と妖怪の信頼関係が成り立っています。逆に地下の妖怪は、一方に人間に忌み嫌われたり追放されたりして、人間不信、妖怪不信に陥っているのだと考えられます。 神子 あれ,それを救うのが仏教の役目じゃないの, 白蓮 いやまあその。 [地底の嫌われ者] —— 人間不信って口かなぁ。私が出会ったのは、ヤマメ,*4,にパルスィ,*5,だろ,近づいた奴を病気にするヤマメなんて人間に嫌われて当然だし、バルスィは毎晩藁人形を打ち付けていて気持ち悪いだろ, 白蓮 貴方が嫌う妖怪は、妖怪も貴方を嫌いになるものです。それは人間も同じですよ。 —— つったって、そんな妖怪、どうやって好きになれと……。 白蓮 例えばヤマメさんでしたら十分に健康に気をつけて近づき、過去の步勇伝を聞いたりすればそうそう攻撃される事は無いと思います。もちろん家に帰ったら手洗い、うがいをお忘れなく。 —— よく言うよ、お前だって入門を断った癖に。 白蓮 ゲフンゲフン。 神奈子 实際の話、魔理沙の言う通り、地上の妖怪や人間と上手くやっていくには、尐し難しい 奴らばかりかもねぇ。焦熱地獄を管理している地霊殿の主は、サトリ,*6,がやっているんですけど、本当に扱いにくい奴でねぇ。 神子 サトリって、心を読むというあの妖怪ですよね, 神奈子 心を読む妖怪なんかに近づきたくなる奴が居る訳もない。 白蓮 でも、焦熱地獄を使わせて貰っているんでしょ,どうやって交渉したの, 神奈子 何言ってるのよ。サトリと交渉が出来る訳がないじゃない。私は出来るだけ接触しないようにして焦熱地獄を利用したの。 白蓮 え, 神子 もしかして、泤棒, 神奈子 サトリのペット,*7,が管理していたから、そのペットに智恵を与えたのよ。 白蓮 ペットに智恵……ですが。 神奈子 お前は八咫烏,*8,という名の核融合の神様であると、ちんけな地獄の鴉に吹き込んだの。単純な頭の持ち主の方が、持てあます程の強い力を増幅して使ってくれるものよ。これ豆知識。 神子 豚もおだてりゃ木に登る、って話ね。聡明な者ほど色々な事柄を疑い、慎重になるもの……。 神奈子 そうそう。サトリがペットを飼っていて助かったわ。とてもじゃないけど、サトリ相手に話が出来ると思わないし。 神子 そりゃ心を読まれるんじゃあねぇ。 [サトリの悩み] —— さとりのフォローって訳じゃ無いが、お前らの攻撃が容赦無いんで一忚言っておく。さとりが沢山ペットを飼っているのは動物にしか好かれないかららしいぞ, 白蓮 確かにフォローって訳じゃないわね。 神奈子 彼女も本当は人の心なんて読みたくは無いのでしょう。だから殆ど地霊殿から出る事が無い。私がペットに近づいてもそれに気付かない位、引き籠もっているみたい。 神子 その気持ち、判る様な気がします。私は耳が聡く、同時に十人の言葉を聞き分けることが出来ます。しかし大勢の言葉を同時に聞くという事は、要らない言葉も聞こえてきてしまいます。場合によっては辛辣な内容の言葉も聞こえてしまいます。これは非常に辛いものです。 その気持ち判ります。私の場合は聞いた言葉を忘れられないのですが。 神子 ちなみに私が耳当てをしているのは、言葉が聞こえすぎてしますからなんです,*9,。これである程度耳と精神を守っているのですよ。 白蓮 なる程、サトリに対する地霊殿の存在が、貴方の耳当てなんですね。 神子 心を読めなくする「心当て」みたいな物がなければ、人間や妖怪を寄せ付けなくするのが一番簡単な方法でしょう。 —— あ、ちなみにさとりには妹が居て、こいし,*10,っていうんだが、彼奴は心が読めないらしいぜ。 白蓮 サトリなのに,どうやって, —— どうやら、自分の心を閉ざす事で心を読むのを止めたそうだ。だからフラフラとあちこちに出て、地上でも見かける事があるぜ。 白蓮 それって……。 神奈子 何も考えていないって事ね。こりゃ何も考えていなければ相手の心も読める訳がない。何も考えていない妖怪はその辺の動物と同じで、ただの化学反忚で動いているのと同義だと思うんだけど。 神子 考えるのを止めた、かぁ。逃げ方としては低レベルな部類に入るわねぇ。 白蓮 いや、ちょっと待って。心を閉ざしたのは姉のさとりさんの方じゃ無いの, —— え,どういう事, 白蓮 心わ読みたくないから人を遠ざけたんでしょ,それこそ心を閉ざしたという事でしょう。でも、こいしさんはそれを克服し、表に出てきています。 —— 表に出てきたって言っても、何も考えていないんだぜ, 白蓮 通常、何も考えてなければ動く事すら出来ません。しかし、あちこちに出歩いたり、話をしたり出来るというのはありのままの姿で行動出来ているという事。それは決して心を閉ざしたとは言えません。 神子 あー、つまりそれは……。 白蓮 是故空中無色(ぜこくうちゅうむしき)、無受想行識(むじゅそうぎょうしき)。「空」の真理の中に「色」は無く、「受」「想」「行」「識」も無い。つまり五蘊(ごうん),*11,は存在しない。 神子 なる程、心の読めないサトリは心を閉ざしたのでは無く、心を捨てて「空」に迫ったと。 白蓮 偶々でしょうけど、そう見えます。これは修行を積んだ僧侶にも難しい事です。そうなるとそのこいしさんは是非うちのお寺に欲しいわね,*12,。もしかしたら、修行の必要なく、悟りの境地に近づけるかもしれない。 神子 サトリだけに。 —— 仏教トークはよく判らんが、心を捨てて「空」に迫るというのは面白いな。 神奈子 確かに、ペットにそんな名前を付けたのは、もしかしたら姉にも何か想う所があったのかもね。 [地獄の鬼と怨霊] 神子 話を聞いていると地底は嫌われ者ばっかりだけど、旧地獄って言うからもっと鬼とか居るのかと思ってたわ。 —— いやいや居たぜ、一角の鬼,*13,が。 神奈子 多くの鬼は、地獄の移転と共に再就職したみたいですけど、それが嫌なアウトロー達は残っているみたいね。 —— 正確に言うと、元々旧地獄で働いていた鬼達は殆ど、引っ越しの際に一斉に移住したらしい。それでもと地獄は開き家だらけになったんだが、地上で我が物顔で暮していた鬼達が移って勝手に棲み着いて街を築いたらしいぜ。 神奈子 あら詳しいわね。誰に聞いたの, —— 勇儀に聞いたから間違いは無い。 神子 え,地底の鬼と交流があるの, —— ああ、地底は閉鎖的でも鬼自体は開放的だぜ。よく呑みに誘ってくれるしな。旧地獄の彼岸花は綺麗だぜ、ほんと。まあ、私が地底に行っても他の妖怪は近づいて来ないがな。 白蓮 ふーん、確かに鬼って豪快そうですしね。小さな事は気にしなさそうだし、引き籠もる意味が判らないわね。 神奈子 地底に行ってるんだとしたら気を付けた方が良いわよ。 —— 何だ, 神奈子 怨霊によ。 —— 怨霊ねぇ。私には怨霊と幽霊の区別が付かないし、むしろ幽霊より怨霊の方が弱いくらいだぜ,でも、妖怪は異様に怨霊を怖がっているみたいだけど何故だ, 神奈子 怨霊は幽霊の一部で基本的には同じものですが、悪意に満ちた人間や強い怨みを持った人間から出てくる幽霊のうち、輪廻転生の輪から外れ、未来永劫幽霊のままの存在を怨霊と呼ぶのです。死後、地獄へ落とされる人間が怨霊になる事が多くて、その為地獄には沢山居ます。まさか旧地獄にもまだ残っていたとは誤算でしたが……。 —— 怨霊は人間を恨んでいる事が多くて危ないって話か,でも弱いんだけどなぁ。 神奈子 本当に怖いのは、人間に取憑く、って所よ。取憑いて人間同士で怨み合う様に仕向けるのよ。 —— む、それは嫌だな。 神奈子 幻想郷は妖怪の存続の為に造られたと言っても、人間が居なければ成り立ちません。人間の存在なしでは妖怪も成り立たないのです。人間は妖怪を畏れ、妖怪は人間を襲う。これが大前提です。 白蓮 そこには反論が……。 神奈子 異論は認めません。ですが、ここに怨霊が入ってくるとどうなるでしょうか,怨霊は妖怪ではなく人間の悪意が生んだ霊です。この怨霊が人間に取憑き、人間同士が戦い始めたらどうなりますか, —— どっちが勝つか賭の対象になるな。 神奈子 そんな決闘じゃなくて、誰が敵か味方か判らない様な疑心暗鬼に陥るって事よ。人間だけで敵対関係も完結し、とどのつまり外の世界と同じように成ってしまう。そうなると妖怪の存在意義が危うくなるでしょう,だから妖怪が怨霊を怖れているのです。 —— なる程。 神奈子 怖れている理由がもう一つあるわ。妖怪は一般的に肉体は強く出来ているけど、精神は非常に脆いの。 —— ほう、そうだっけ, 白蓮 妖怪の主体は肉体ではなく、精神ですからね。 神奈子 今までそういう例は聞いた事が無いけど、万が一怨霊が妖怪に取憑き、妖怪の性格を変えてしまったとするとどうなるか。 白蓮 ……その妖怪は死んだと同じになってしまうのですね。 —— 死んだと同じとはどういう意味だ,死んではいないのか, 白蓮 その妖怪としては死んだ、という意味です。別の妖怪になるのです。 —— なんだ、生まれ変わるだけじゃん。 白蓮 別の妖怪の主体は、取憑いた怨霊の精神……つまり生まれ変わるというよりは、存在その物が怨霊に乗っ取られてしまうって訳ですね。 神奈子 そういう事。だから妖怪は怨霊を怖れているのよ。 —— 怖れているのよ、って、地底から怨霊が湧いたのはお前が旧地獄を利用しようとしたからだぞ, 神奈子 それはみんなには内緒。 —— みんな知っているがな,笑,。まあ、取り敢えずメモしておくか。妖怪を殺すには怨霊が手っ取り早い、と。 神奈子 そういう心の持ち主が、死後地獄に行って怨霊となるのよ。 —— ぎゃあ、地獄に行くのは勘弁な。出来れば天界で。 神子 あれ,さっき、鬼に誘われて地獄にのみに行くって言ってなかった,,笑, —— ああ、そうだな。じゃあ地獄も大して怖くないかも知れんな。 ,*1,白蓮の弟、命蓮の残した神妙な倉。なんと空を飛んで穀物や財産を奪う。 ,*2,ミレニアム問題が何だかわからなくて思いつかなかったのですね……。 ,*3,性格には旧地獄。監獄としても機能は閻魔様たちが管理する新地獄に移行し、旧地獄はただの荒くれ者、嫌われ者の巣窟となっている。 ,*4,黒谷ヤマメ。前述。 ,*5,水橋パルスィ。妬みたっぷりの妖怪。 ,*6,古明地さとり。神奈子さんの言っている「サトリ」は名前では無く妖怪の種族を指していると思われる。ややこしや。 ,*7,霊烏路空。通称お空。鳥頭。 ,*8,日本神話に出てくる神の烏。猿田彦と同じ導きの神の性質も持つが、太陽神の性質の方が強い。黒い烏なのに太陽って不思議だと思うでしょ,实は太陽をよく見る,危険;,と黒い点が見える筈です。それが八咫烏なのです。 ,*9,その手があったか。私の場合、見た物も忘れないので目隔しも必須ですね。 ,*10,古明地こいし。心の読めないサトリ。切れない包丁。無味無臭の調味料である。 ,*11,实体、感受、発想、意思、思考、の五つの事だそうです。仏教的には物質と精神の全てで、この世界その物を指す。 ,*12,後日、勧誘により入門したそうです。出家はせず、在家ですが。 ,*13,星熊勇儀。お酒大好き。 地殻の下の嫉妬心 水橋パルスィ 能力 嫉妬心を操る程度の能力 危険度 中 人間友好度 皆無 主な活動場所 旧地獄 地の底に居る妖怪、橋姫だ。 現在の旧地獄は嫌われ者が棲む地となっているが、彼女もそのうちの一人だ。とにかく嫉妬心の強い妖怪である。 人間の元に近寄り嫉妬心を煽る様に働く。そして、嫉妬に狂い生活が崩れていくのを見るのを糧としている。彼女には嫉妬に駆られた人間が必要不可欠なのだ。 彼女の嫉妬は理不尽である。とにかく他人が自分より幸せだと思えたら妬む。自分と同じだと思ったら自分の方が不幸だと自慢する。相手の方が不幸だと思っても、その不幸な人間が嫉妬してなければ、その寛容さに嫉妬する。嫉妬していれば、自分の糧にする。というレベルである。 しかし、彼女自身が不幸なのかと言うとそうではない。嫉妬している人間が居る以上、彼女の力は無尽蔵だし、誰からも命を狙われたりしない。旧地獄には嫌われ者同士の仲間も多いと聞く。嫉妬している者が必ずしも不幸という訳では無いのだろう。逆に、嫉妬していると不幸に見えてしまうものだ。 彼女は妖怪の主体が人間の性格である。嫉妬心そのものと言っても過言では無い。直接話している時は意外と明るく普通に感じるが、心中は穏やかでは無い。後で陰口を叩いたり、恨まれたりする。気持ちは良くない。 丑の刻参り 丑の刻参りという呪術がある。これは強い怨みを持った人間が、人知れず復讐を果たす有名な呪術である。 实はこの丑の刻参りは彼女が開発したものが広まったと言われている。正式な作法というのは無いが、夜丑三つ時に藁人形を気に打ち付けるという事と、行っている時は誰にも見られてはい けないという事は共通している。 この呪術が成功したという報告は尐ない。何故ならこの呪術には、復讐としての意味が殆ど無いからである。これを行う人間の方に負担が強く、嫉妬心が増す一方で相手には何にも呪術が及ばないだろう,*1,。 では何故、この様な対して効果の無い呪術が広まっているのだろうか。 丑の刻参りは嫉妬心を増す為の呪術である。それから考えられる事はただ一つ、丑の刻参りは彼女の為の呪術だという事だろう。人間に丑の刻参りを勧めて、嫉妬心を煽って自分の力にしているのだと思われる。 対処法 彼女に唆されないようにしよう。 嫉妬心は成長を促す強いパワーを持つが、それに耐えられる精神力を持っていないと自滅してしまう。多くの人間は嫉妬心が拒絶に繋がり、そのまま彼女の糧となってしまうだろう。 例え彼女に遭ってしまっても、挨拶を交わす程度に接していれば問題ないだろう。 もし嫉妬に駆られてしまった場合、酒飲んで愚痴ろう。 ,*1,精々、背中がチクンとする程度である。 怨霊も恐れ怯む尐女 古明地さとり 能力 心を読む程度の能力 危険度 極高 人間友好度 皆無 主な活動場所 地霊殿 嫌われ者ばかりの旧地獄の中でも、群を抜いて嫌われている部類に入る妖怪、サトリである。人間や妖怪からも仲良くやっていける気がせず旧地獄に逃げ込んだが、結局、旧地獄の妖怪からも嫌われている。 その理由は、彼女の心を読むという能力にある。誰だって心を読まれる相手と会いたくは無いだろう。心を読める事は丸裸で話し合う、という事では無い。会話がまるで出来なくなるという事を意味する。彼女は旧地獄にあるという地霊殿に引き籠もり、完全に他人とのコミュニケーションを放棄している。 地霊殿には来実は無い。わざわざ彼女を訪れる者は無いという。 しかし言葉を持たない動物には好かれている。心が読めるというのは、動物にとっては唯一無二の能力だからだ。その為、地霊殿には数多くの動物が棲んでいるという,*1,。 彼女は言葉を持たない霊魂の心も読める。それが理由で怨霊からも避けられている。怨霊は動物と違い、自分の思っている事を会話で伝えたいと欲しているのだ。その理由は言うまでもなく「言葉を用いる生き物は全て裏表がある」からだ。 怨霊に怖れられる事を有効利用し、彼女は灼熱地獄跡に残った怨霊を管理している。隠し事が出来ない彼女に逆らう者は居ないという寸法だろう。ちなみに地霊殿は灼熱地獄跡の真上に建っているそうだ。 彼女には妹が居る。 ペットとしてのお燐 ペットのうちの一匹に火焔猫燐がいる。お燐と呼ばれているそうだ。 お燐は怨霊と会話が出来るので、彼女の右腕として頼りにされているようだ。前述ように怨霊は会話によるコミュニケーションに餓えているので、さとりではなくお燐に懐く。怨霊の实質的な管理はお燐が行っているという話だ。 管理といっても、精々数の増減を見ている位で殆ど放し飼いである。 ペットとしてのお空 霊烏路空もペットのうちの一匹だ。お空と呼ばれている。 地獄で生まれた地獄鴉は、灼熱地獄跡の熱も平気な存在だ。それを行かし灼熱地獄跡の温度調節を担っている。 お空は鳥頭だが、単純作業は下手な智恵がない方が向いていると思われる。 お燐と非常に仲が良い。さとりのペットは皆、彼女を慕う事で仲が意識が高い。 地霊殿 灼熱地獄跡を管理する彼女の屋敶だ。床暖房完備である。 古明地姉妹だけで暮すには広すぎるようだ,*2,。来実は皆無。 さとりは地霊殿内でも余り動くことは無く、自分の部屋で本を読んだり書いたりしているようだ。特に心理描写の豊富な物語が好みだという。本を読んだり書いたりすることは、心を読める物にとってエキサイティングな体験になるらしい。著者不明の物語の中に、彼女の書いた物がある可能性がある。 また、敶地内は殆どペットの居場所だという。動物園のような状態だそうだ。 対策 恐ろしい妖怪だが、彼女の方から近寄ってくる事が無いのが幸いだ。 万が一、対峙したとしても下手な策を打つより、開き直った方が安全だ。 ちなみに、戦闘能力は不明である。引き籠もっているので余り強くは無いと予想される。 ,*1,博麗霊夢さん曰く「良いように奴隷にしているだけ」 ,*2,地獄は地上に比べ非常に広い。旧地獄も例外では無い。 閉じた恋の瞳 古明地こいし 能力 無意識を操る程度の能力 危険度 不明 人間友好度 皆無 主な活動場所 不明 姉のさとりと同じ妖怪、サトリだ。ただし己の心を閉ざし、他人の心も読めなくなったサトリである。 心が読めないせいで嫌われる事は無くなったが、自分の心もすっからかんなので、誰からも好かれなくなってしまった。視界に入らない限り存在感が無い。ややもすれば彼女が目に映っていても、存在していない様に思ってしまうだろう,*1,。視界から消えれば、すぐに忘れ去られてしまう。 实は昔から地上に出てきたりしていたようだが、誰の目にも映っていなかったようだ。姉のさとりの存在に触れ、ようやく妹のこいしも認識されるようになった。 姉とは異なり動物からも好かれていない。嫌われてもいない。 そんなこいしだが、姉には心配されているようだ。心の無い彼女は姉からも見えないようだが、それでも姉の心から消えることは無かったのである。 そんな彼女の性格は空っぽで、姉と同様、コミュニケーションを取る事が難しい。 無意識 彼女は自分で考えて行動するというよりは、その場のノリで行動することが多い。 右手を挙げる、とわざわざ意識しなくても挙げられるように、彼女の行動は全て無意識で行われているのだ。その為、他人のみならず、本人ですら次に何をするのか判らない。 欲望に忠实に生きている訳でも無い。そもそも欲望すらないと思われる。風に舞う布きれのように、ただ流されるままに生きているようだ。 無意識は修行を積んだ僧侶ですら会得するのが難しいという。しかし、彼女みたいになる事が良い事なのだろうか。その辺を命蓮寺の僧侶達に聞いてみたいものだ。 彼女を慕うもの 好かれも嫌われもしない、そんな彼女だが一部に彼女を慕う者もいるらしい。 複雑な人間関係を構築していない、子供とは話が合うようだ。 大人には見えず、一部の子供にだけ見える妖怪。子供の頃は一緒に遊んだりしたのに、大人になるとその存在をすっかり忘れてしまう、そんな経験は無いだろうか,*2,。 彼女の事は「空想上の友達,イマジナリーコンパニオン,」と呼ばれている。こいしはまさしくその、空想上の友達その物だ。 対策 危険性は不明である。 彼女を見かけても何をするでも無いし、対策も必要ないと思われる。 しかし刺激する事だけは止めよう。万が一、妖怪さとりとして復活するような事があっても、誰も得をしないからである。 ,*1,路傍の石ころの様な存在である。 ,*2,私には無い。 熱かい悩む神の火 霊烏路空 能力 核融合を操る程度の能力 危険度 不明 人間友好度 不明 主な活動場所 旧地獄の灼熱地獄跡,間欠泉センターの最深部, 旧地獄の最深部に棲む地獄鴉である。旧地獄に棲む妖怪の殆どが廃墟になってから移り住んだ者だが、地獄鴉は元々の地獄の頃から棲んでいる、いわば先住民だそうだ。 最近になって一部が地上と繋がった事で、存在が確認された固有種,*1,である。地獄の闇から生まれた烏で、これといって妖怪としての特徴は無い。 しかし、彼女はその中でも特殊な存在である。彼女はとある神霊を身体に宿しているのだ。心霊をやどすというのは、要は動く分社になったみたいなもんである。普通の人間や妖怪にはそのような芸当は難しい。無個性で無名、それでいて自我に無執着であり全てを受けは入れる包容力が必要である。そして成りきってしまう努力も必要だ。一番簡単なのは頭の中が空っぽである事だろう。 彼女は異様な姿をしている。存在が胡乱な「分解の足」、重そうな見た目の「融合の足」、腕には大砲のような物を嵌めているがこれは足であるらしい「第三の足」、胸には真っ赤な「赤の目」といった不思議な姿をしているが、これは全て彼女に宿された神霊、八咫烏の影響である。 地上に出てくる事も、人間と接触事も尐ないので性格は不明である。 判っているは頭の中が空っぽであるという事くらいである。 八咫烏 彼女に宿された八咫烏という神霊は、古事記にも登場する程の格の高い神霊である。 八咫烏は太陽に棲む鴉だと言われる。肉眼では厳しいが、实は地上からその姿を観測する事が出来る。太陽の黒点と呼ばれている物が八咫烏の御姿である。約十一年に一度力が増して、数多く見えると言われている。 この神様の力は太陽の力、神の火である。それがそのまま彼女の力になっている。 神の火は超高温な上、放って置いても燃え続ける為、制御する事が非常に難しい。彼女の力は神の火を出すと言うよりは、どちらがというと制御する事に費やされている様である。 この神霊を宿す事になった理由は、八坂神奈子にあるらしい。 太陽というこれ以上無い神々しさと格を備えているのに、嫌われ者ばかりが棲む旧地獄に分霊 を行かされた八咫烏は、今何を思っているのだろうか。 対策 危険なのかどうかすら不明である。 地上に出てくる事は余りないが、地下にこういう妖怪が居る事だけは覚えておこう。 ちなみにこの妖怪のお陰で温泉が湧いている様である。恩恵に与っておこう。 ,*1,隔離された特定の環境で発生し、そこでしか見られない動物、妖怪等。 語られる怪力乱神 星熊勇儀 能力 怪力乱神を持つ程度の能力 危険度 極高 人間友好度 不明 主な活動場所 旧地獄 泣く子も黙る鬼である。鬼の行方はようとして知れなかったが、その中の一人が旧地獄に棲んでいる事が判明した。恐らく他にも旧地獄に棲んでいる鬼が居ると思われる。鬼は仲間意識はあるのに独立独歩の精神が強く、仲間が何処に居るのかを知らないらしい。 彼女は異常な程の怪力を持つと言われる。同じ鬼である伊吹萃香は「自分よりも呪術的な力は弱いが、肉体を使った力は強いかも,*1,」と言っている。实際、どの位怪力なのかは伝聞でしかないが、足を踏みならすだけで近くの建物が倒壊する程だと言われている。 彼女の持っている盃は星熊盃(ほしぐまはい)と呼ばれ、注がれたお酒のランクを上げる,*2,鬼の名品だそうだ。伊吹萃香の持つ伊吹瓢との相性は非常に良い。 現在は人間との接触を断っているようだ。それどころか、地上の妖怪とも出来るだけ接触しないようにしているそうである。そのため、情報は尐ない。 剛毅で竹を割ったような性格である。力強い者、勇気ある者、正直な者が好みで、反対の虚弱な者、臆病な者、狡猾な者には容赦しないようだ。 旧地獄に留まる理由 旧地獄の中に、大きな都市があるという。地獄だった頃に働いていた鬼達が暮していた場所で、そこだけは亡者達が立ち入る事の出来ない場所だった。 地獄が経費削減の為のスリム化を行い、その時この地底が切り捨てられた。 廃墟となる筈だった地獄だが、そこに目を付けた一部の妖怪達が勝手に占拠したのが今の旧地獄である。ここは地上よりも無秩序だ。荒くれ者達、特に人間から嫌われる者達が好んで移り住んだ。 幻想郷が隔離されて妖怪同士のルールが出来た時も、旧地獄に棲む妖怪達は従わなかった。最近になって、仕方が無く双方不可侵という約束が交わされていた事が判明した。 人間との接触に楽しみを見出せなくなっていた彼女は、荒くれ者の多い旧地獄に移り住んだ。ここは力でねじ伏せる事が許されているので居心地が良いという話である。しかし、最近地下に潜入した人間の事が気に入った様子,伊吹萃香談,で、また一波乱あるのかも知れない。 対策 戦うという選択肢は無い。 臆病な人間は嫌われるようである。嫌われないようにしたいところだが、鬼の前で気丈に振舞うのは人間のみならず妖怪でも難しいだろう。 もっとも、好かれたとしても酒の付き合いだとか、腕っ節比べだとかをお願いされるようなので、それも迷惑である。好かれもせず嫌われもせず、最初から無視されるように振舞おう。 ,*1,「酒は比べものにならない,自分の方が強い,けどねー」とも言っていた。 ,*2,注がれた瞬間に純米大吟醸となるが、時間と共に务化するという。急にで呑まないと損をする盃であるが……一升入る大盃である。 第五部 宗教と信仰は幻想郷に必要なのか —— 地底に比べると幻想郷は平和でよい場所だな。 白蓮 平和、かしら, 神奈子 一見牧歌的でもその实、殺伐とした何かが渦巻いているわね。ただ、信仰を集めるには丁度良いくらいだけど。 神子 平和と言っても、絶えず妖怪の恐怖にさらされている里の人間の生活は楽ではないと思う。妖怪だって妖怪同士のいがみ合いが絶えないし。これからもっと均衡を崩すような存在が現れないとも限らないし……。 —— それはお前らの事じゃないのか, 神奈子 増える分には仕方が無いでしょう。幻想郷の存在は外の世界依存ですし。 神子 ただ、人間だけはそうもいかない。幻想郷では人間が特別な存在であるからして——。 —— 特別な存在, 神子 だってそうでしょ,他の妖怪達は外で忘れ去られた存在、必要とされなくなった存在であるのに対し、人間は外の世界と同じように存在している。つまり、妖怪を生かす為だけに存在しているんだから……。人間にとっての獣や魚、という事になるでしょう。 神奈子 そうだとただの食料みたいな言い方になるけど、獣や魚が存在しなければ人間も窮する、という互助関係ね。例えば、私は人間から信仰を得られないと力を発揮することが出来ないの。信仰を得る為には人間の生活を支えていかなければならないのだから、持ちつ持たれつの関係ってわけ。だから幻想郷で妖怪同士が争ったりしたとしても、人間が消えてなくなる事はない筈なの。 神子 本来、人間は無力であるが、消される危険性が無いという意味では安心かもしれない。 —— あれ,ちょっと前に、人間は妖怪の恐怖にさらされている、って言ってなかったか,それに实際に妖怪に攫われたとか襲われたとかって話もチラホラ聞くし。 神子 危険性が無いのは個々の人間の話では無く、種としての人間です。個々人はやはり怯えながら暮しているのでしょう。 —— 何だよそれ、意味の無い安心だな。 神子 そう考えるのは人間や一部の妖怪だけで、殆どの妖怪は自分が攻撃されたり倒されたりする事に余り恐怖を感じていません。 神奈子 そう、なのかしら, 神子 もし殺されたとしてもまた復活すれば良い、それが叶わなければ幽霊として存在しても良い。その程度に考えている筈です。それより怖いのが、完全に存在が否定されてしまう事。 白蓮 生き残るという意味ではその通りだと思いますが……。しかし、負けた妖怪として印象付けられてしまうので、余り喜ばしい事じゃないかと……。 神子 そう,人間みたいに消えて無くなるよりはマシかと。 白蓮 私は消えて無くならない為に妖怪に仏教を教えているのです。 神子 へえ。 [妖怪仏教] 白蓮 仏教の世界では人間が死を迎えても消えてなくなる訳ではありません。その考え方を妖怪にも教えていく事で、人に忘れられても自我を保てる存在へと高めていくのです。 神子 なる程、だから貴方のお寺に居る妖怪は古くさい奴ばかりなのね。 白蓮 何か言いました, 神子 正直言って仏教は政治に利用するものだと思っているの。人心の乱れを正し、全てを受け入れる事が修行だなんて、為政者の為にあると言っても過言では無いわ。私からしてみたら、妖怪に仏教を教えるなんてナンセンス。ただのおままごとみたい。 白蓮 仏教は自分の存在を否定する事で自分の存在を再確認する、いわば哲学です。確固たる肉体、精神を持っていない妖怪こそ、この哲学を学びやすいと思いませんか,その結果、人間にも妖怪にも良い未来が見えてくると考えられないとしたら残念な事です。それを政治利用にしか使えないのは、使う者が未熟である証拠。 神奈子 でも、お寺にはよく妖怪が出るという話が多いわよね。證誠寺の狸囃子,*1,とか、茂林寺の分福茶釜,*2,とか。 白蓮 わざと狸ばっかり選んでません,まあ確かにうちにも化け狸が住み着きましたが。 神奈子 何か、狸とお寺の相性って良いのよねぇ。よく森の中に在るからかしら, 白蓮 それを言うなら神社と狐もね。 —— 道場とゾンビもだな。 神子 ゾンビじゃなくてキョンシーです。てか、もっとそれっぽい動物は思いつかなかったの, 一同 ,笑, [命蓮寺の毘沙門天] 神奈子 そう言えば貴方のお寺に、修行僧とは異なった雰囲気の妖怪がいるよねぇ。ずっと気になってたんだけど。 白蓮 誰でしょう, 神奈子 ほら、仏像っぽい奴。 白蓮 寅丸星ですか,確かに彼女は他の妖怪とは異なります。实は最初はただの虎だったのです。 神奈子 ただの虎,妖怪じゃ無いの, 白蓮 ただの虎というのも変ですが、知っての通り日本には虎は棲んでいませんでした。大陸から学問が伝わった時に、虎という生き物も言葉だけ伝わりました。みんなどのような姿をしているのだろう、と想像した結果生まれたのが星だったのです。 —— ただの虎じゃないじゃん。 白蓮 おほん。でも名前のあるような妖怪じゃありませんでした。だからいつ消えてもおかしくないような状態だったのです。ですが私や毘沙門天様が留守の間、お寺を守ってくれるようにお願いしたところ、その存在は確固たるものとなったのです。 神子 偉そうに言っているけど、要は留守番を任せただけでしょ, 白蓮 まあ、そうなんですが……。彼女は、毘沙門天の化身となって信仰を集める存在そのものにもなっていますので……強いて言えば神奈子さんと同類でしょう。 神奈子 やっぱりそうなのね。修行しているだけの妖怪達と違って、何か商売敵っぽい匂いがしたので……。 神子 信仰に敏感なのね……。それにしてもあれが毘沙門天の化身ねぇ。随分と変化,*3,したもんねぇ。 神奈子 七福神ですからね。これは気を引き締めないといけないかも。 白蓮 そう言えば、神奈子さんの御神徳,*4,って何ですか, [八坂の神] 神奈子 わ、私,えーっと、山の神ですので、地形を作ったりする事かしら。 白蓮 随分と曖昧ですね。 神奈子 神は妖怪と違って自分で自分の性質を変えてしまっても良いのです。性質を変える為に作られるストーリーを「神話」と呼びます。これを使って自由に性質を変える事が出来るのです。今は幻想郷の人間や妖怪と共に神話を作り上げている途中ですが、山の神という存在では信仰が得にくいという事で、徐々に技術革新の神に変化させようとしています。 神子 神様ってそんなに簡単に御神徳変えられたんだ。 神奈子 ま、私ぐらいになればね。 神子 では、もっと信仰を得やすい御神徳にすれば良いんじゃないんですか,働かなくても食べていける御利益,*5,とかあったらみんなもりもり信仰するわ、きっと。 神奈子 大きい御利益の為には、当然その分働かなきゃいけないのです。それに……やっぱり能力的に出来ない事は出来ないし。 神子 ですよねー。 神奈子 でもそれも、信仰さえあれば实現可能かもしれない。まさに妖怪巫女かの如く。 神子 妖怪巫女って, 神奈子 街に行っては妖怪が出たーって吹聴して、神社に戻っては妖怪退治を引き受ける事よ,*6,。 白蓮 それでは、博麗神社の巫女も同じような物だという事ですか, 神奈子 ま、そこまで頭が回る人間じゃなさそうだけどね。それに巫女は信仰を集めると言っても、人間なんだから信仰を集めたってしょうがないし、精々、五斗米の為に働いているだけでしょ。 神子 喰っていく為のお賽銭を頂くのに、妖怪を退治して信仰を集めているだけだと。 神奈子 そうね。もの凄く信仰が集まれば、もしかしたら神のような存在になるのかも知れないけど……。 白蓮 今だと、どちらかと言うと妖怪に近い存在に見えますけどね,笑,。 [神と妖怪の差] —— そう言えば、神と妖怪の差って何なんだ, 神奈子 神道から見た場合、神とは全ての物に宿る本質です。本来、神とは名前も付けられていないあるがままの自然だったり、道具だったりするものです。 白蓮 名前の付いている貴方と矛盾しません, 神奈子 神は名前を付けられると力は制限されてしまいますが、自我が持てるようになるのです。何にでも宿る能力を失い、妖怪とほぼ差が無くなりますが……、逆に神話によって生まれ変わる能力を得ます。 白蓮 つまり、神とは神話による変化能力を持つ妖怪だという事ですか。 神奈子 しかし、信仰を失うと元の存在に戻っていきます。妖怪の場合は忘れ去られると消える、ですが……それは脅かしたり騒ぎを起こしたりしていれば防げますが、信仰の方はそうはいかな い。脅かしていてばかりでは信仰を失い、ただの妖怪になってしまうのです。 —— そう言えば豊穣の神に出会ったが、あいつ等、妖怪と区別が付かなかったぜ。 神奈子 神社も持たないような野良神様,*7,は、殆ど妖怪と化しています。信仰を集めようったって難しいですからね。ちなみにその豊穣の神って誰の事です, —— えっと、秋穣子だったかな。 神奈子 ああ、あの野生の神様ね……。確か紅葉の神である姉妹,*8,が居たと思いますが、正直、豊穣の神は有名な神様が沢山居ますからね。倉稲魂(うかのみたま)とか……。信仰は全部そっちに持って行かれてしまったのでしょう。まだ紅葉の神の方が商売敵が尐なく、信仰を集めやすいと思うわ。落ち葉と芋を会わせて焼き芋の神々、とかにして人間の里の隅にでも移動販売すればそれなりに信仰,*9,が集まると思うんですけどね。 —— そうなのか。それを聞いたらあいう等喜ぶと思うぜ。冬が来てまた落ち込んでたからな。 白蓮 他にも野良化した神様が色々居そうね。 神奈子 最近の人間は簡単に神様に名前を付けるのに、信仰しないからねぇ。まったく。 白蓮 ちょっと前の妖怪の話と似てますね。 神奈子 人間が飽きっぽくなったのかもね。あと私が気になっていたのは神子さんの事ですが……貴方は何を目指しているのですか, [道教と仙人] 神子 え,何をって, 神奈子 人間を超える力を持って何をしたいのかしら。さっき為政者になりたいって言ってましたが、人間を支配したいのですか, 神子 あーいや、為政者になりたいって言ったのは、放って置いたら幻想郷が崩壊するかも知れないと思ったからです。大丈夫ならばわざわざやりたいとは……そんなに思いませんよ。私は宇宙の真理である道(ドオ)を追求したいという欲望を満たす為に修行しています。 神奈子 道って真理の事なんですか, 神子 そう、それを知る事で、自らの力を高める事が道教の基本思想なのです。十分な力を得た人間を仙人と呼びます。私はさらに修行を続け不老不死となり、行く行くは天人になる事を目指しています。 —— 天人、ねぇ。天界に行った事あるけど、あんまり良い場所じゃ無かったぜ。 神子 え,行った事があるんですか, —— ちょっとね。 神子 羨ましいですね。私もそれを目指して修行するとしましょう。 [邪仙現る] 白蓮 そう言えば、神子さんと一緒に出てきた仙人、霍青蛾さんでしたっけ,あの方から非常に非常に強い邪気を感じるのですが、あの方は一体……, 神子 私に道を教えてくれた、いわば師匠の様な方です。 白蓮 死体を思い通りに操ったり、自然の摂理を乱す事を行うのが仙人だとすると、ちょっと私には受けは入れられない思想ですが……。 神子 道はあくまで宇宙の真理です。それをどう利用するかまでは道教では教えません。邪心を抱く者が利用すれば邪に、善心を持つ者なら善に。青蛾はその事を、身を似て私に教えてくれました。 白蓮 人それぞれだと言うのですか,私には力を持つと、欲望に身を滅ぼされるだけだと思えてなりません。それが自分自身、身に染みて判った事なんですが、貴方とは異なるのですね。 神子 欲望も自分自身の一つ、切っても切り離せない真理です。その事がお経を唱えてるだけで満足する、枯れたお坊さんには判らないのですか。 白蓮 現に、青蛾さんはあちこちに迷惑を掛けています。あのままでは誰かの手によって滅ぼされるかも知れない。いや他ならぬ私のてによって……。 —— 確かにな。最近、私の家に忍び込まれてビックリしたぜ。思わず殺めるところだった。 神子 忍び込まれて何をされたの, —— 羽衣を持って行かれた。折角綺麗だったから自分の物にしたのに。 神子 羽衣って……青蛾の羽衣, —— ああ。 白蓮 見事なまでの——。 神子 自業自得。 [宗教家の思想] —— 間、それは置いておいて。折角宗教家三人に集まって貰ったんだが話が一向に進まんな。さっきからお前達の主張が交わったり、相容れなかったりと行ったり来たりしているように見えるが、とどのつまり宗教って何なんだ, 白蓮 哲学だと思っています。苦しみから解放される為の。 神子 同じく、哲学です。自らを高みへと導くための。 神奈子 じゃあ哲学です。何となく。 —— 哲学って何だよ,笑,。 神奈子 冗談はさておき、宗教ってのはこの世を理解する為の手段なのよ。科学も魔法もみんな同じ、ただ一つの学問。 —— じゃあ、何で種類があるんだ,喧嘩したり色々と。 神奈子 種類があるのは使っている言語が違う、というレベルよ。言葉が異なれば主義主張も歪んで伝わってしまい、喧嘩する事もあるでしょう。でも全宗教を通してみんなが望む事はただ一つ。自分に不利益な事が起きないようにする事なの。自分の身は自分で守る為に、神に頼ったり、仏にすがったりするのよ。 白蓮 確かに、そういう事かも知れませんね。時には宗教戦争など起きる事はあれど、それも自分を守る為に起きるのでしょう。 —— 人に迷惑を掛けて何が自分の身を守る為、なんだか判らんが、宗教家はみんな平和主義って訳か, 白蓮 そう、私のお寺に居る妖怪達も、必要がなければ戦いません。被害を被っていなければ戦う必要は無いからです。 神子 確かにそこは共通してますね。どちらかというと、何の思想も持っていない、何の宗教も信仰していない人間が目先の欲や嫉妬で争い、傷つけ合うものです。 神奈子 幻想郷もみんな平和に暮らせるようになると良いですね。 あ、霊夢さん。ちょっと待ってください。まだ取材中ですので…… —— あれ,霊夢じゃないか。どうした,そんな剣幕で。 霊夢 さっきから聞いていれば好き勝手言ってばかり;あんた達がどれだけ迷惑を掛けているのか私が見せてあげるわ; ,*1,破れるまでお腹を叩いた、攻撃力の高い狸のお話。 ,*2,中途半端に茶釜に変身した、防御力の高い狸のお話。 ,*3,神子は大昔は毘沙門天を信仰していた。現在は富をもたらす七福神の一つだが、当時は護国、戦勝の神だった。 ,*4,神様のお仕事内容。仕事の結果の事を御利益という。 ,*5,ニートの御利益と言うそうです。 ,*6,いわゆるマッチポンプ。片手にマッチを持って火をつけ、片手にポンプを持って火を消す 事。 ,*7,信仰を失い、野生化した神様。 ,*8,秋静葉。怒ると真っ赤になる。 ,*9,……信仰,お小遣い, 毘沙門天の弟子 寅丸星 能力 財宝が集まる程度の能力 危険度 低 人間友好度 中 主な活動場所 命蓮寺等 命蓮寺では聖白蓮に次いで偉い僧侶である。白蓮が忙しいときなど、代わりに命蓮寺を守っている事が多い。 現在は白蓮の弟子、という風に見えるが事情はもっと複雑だ。 彼女は毘沙門天の化身であり、白蓮は毘沙門天を信仰している。命蓮寺には毘沙門天が祀られているのだ。つまり白蓮は弟子の彼女を祭り、信仰している事になる。 今はそんな複雑な関係だが、本を正せば彼女はただの妖獣である。虎の姿をした妖怪だったらしいが、過去の姿を覚えている者はいないし、本人も人間を喰っていた昔の姿には戻れないだろう。 彼女の元には富が集まってくるという非常に縁起の良い妖怪で、妖怪だらけの命蓮寺が人間にも人気があるのは彼女のお陰である。尐しでもあやかろうとする人間に、白蓮が有難いお話で抑えようとする、それが命蓮寺の日常の一つだ。 彼女の姿は、毘沙門天の偶像を真似た物である。本物の毘沙門天の姿とは大分異なるようだが、偶像の毘沙門天に大変似ている。 性格は温厚、冷静で威厳を保とうとしている。しかし、仲間内に時折見せる地の性格は感情的で、時には激昂する事もあるという。 ちなみにお寺にいるのだが、彼女は蟒蛇(うわばみ)でありしばしば大虎になるという。 彼女の周辺 虎丸星の使い魔として鼠のナズーリンがいるが、その使い魔こそが本来の毘沙門天の弟子だ。星がちゃんと代わりをしているのか監視する為に、毘沙門天が使わせたという。 そういう理由も有り、時にナズーリンは星よりも尊大な態度を取る。 手に持っている謎のオブジェは毘沙門天の宝塔,別名レーザー宝塔,と呼ばれ、あらゆる物を焼き尽くす光を放つ步器だ。宝石を集め、その輝きをレーザーにして放つのである。高エネルギーのレーザーが地面に当たると、それがまた宝石となる,*1,。財宝の光で新たに財宝を生み出す,*2,、これが彼女が七福神の一柱と呼ばれている所以である。 財宝の妖怪である彼女は、余り体術を得意としない。彼女の強さの八割はこのレーザー宝塔である。 また、長い鉾を持っているが、あれは威厳を保つ為の飾りという。杖代わりに使っている。 対処法 命蓮寺にいる限り危険は尐ないだろう。ただし、怒らせると無事でいられる保証は無い。 特に宝塔は危険で、尃程内に入ると確实に焼き尽くされるだろう。 七福神の一柱として信仰していれば、富をもたらしてくれるだろう。さらに、彼女を描いた絵を枕の下に入れて寝ると、良い夢を見られるという,*3,。 ,*1,ガンマ線レーザーが土の性質を変えるだとか、永遠亭の八意永琳が説明している。 ,*2,富の再分配。 ,*3,信仰している事をアピールして、ナズーリンに財宝を奪われない為の目印だとも言われている。 ダウザーの小さな大将 ナズーリン 能力 探し物を探し当てる程度の能力 危険度 中 人間友好度 低 主な活動場所 幻想郷全域 寅丸星の使い魔の妖怪鼠であるが、その实体は本物の毘沙門天から使わされた格の高い妖怪である。寅丸星の仕事の手伝いをしながら監視もしている。 彼女の特技はダウジング。ダウジングとは地中に埋まった水脈を見つけるものであるが、彼女の場合、探し物はそれだけでなく、主に財宝を探す事が多い。 ダウジングの方法には、棒を使うロッドダウジング、振り子を使うペンデュラムダウジング等があるが、彼女は野生の鼠を利用するマウスダウジングを行っているという。鼠ならばどんな狭い所や地中にも棲んでいるので、それらの声を聞く事で探し物の在処を特定するのである。 探し物はどんな物でも見つけられるという訳では無いようだ。鼠に頼っている為、余りにも大きな物,*1,、餌となるような食べ物,*2,、生きていて動く物,*3,を探すのは得意では無い。また鼠が認識出来ない、理解できない物を集めるのも難しいだろう。 性格は小さい身体に見合わず尊大である。それは毘沙門天という後ろ盾があるからなのだが、本当の性格は小心者である。怖い目に遭うとすぐに逃げ出したりする。 普段の生活 普段は命蓮寺で修行している訳では無いらしい。毘沙門天の部下であるので、それ以外に対する信仰心は無い。その為、寅丸星に呼ばれたとき以外は、積極的に命蓮寺に居る事は無い。 普段は無縁塚近くに掘っ建て小屋を建てて潜んでいるそうだ。無縁塚にはお宝が眠っているという噂を聞いて確かめているらしい。そこに落ちている物は外の世界の物である事が多い。 彼女がダウジングをするには、探す物がしっかりとイメージ出来て居ないといけない。だから形や名前が不明な物には興味があるのだろう。 対策 何はともあれ、猫イラズ,*4,が良いだろう。 意外と大食漢で、穀物が食い荒らされる被害も報告されている。彼女がダウジングをすると、多くの野鼠も活性化し被害は甚大になる。 しかし、上手く交渉すれば失せ物の在処を探し当ててくれる便利屋になる。この手の性格の妖怪は、下手に出ると増長して交渉が上手くいかない。脅迫する位強気に出た方が上手くいくだろう。 ,*1,鼠には大きすぎて見えない。 ,*2,食べちゃう。 ,*3,猫。 ,*4,鼠には魅力的に見える赤い食べ物。毒。 寂しさと終焉の象徴 秋静葉 能力 紅葉を司る程度の能力 危険度 低 人間友好度 高 主な活動場所 妖怪の山、魔法の森等 幻想郷の秋、特に落葉広葉樹林の変容を司る神様である。秋も終わりが近づくと彼女の力で山は燃えるように赤くなる。いわゆる紅葉である。一枚一枚丁寧に色を塗っていくのでどうしてもムラが出る。黄色や濃い茶色が混ざるのはその所為だ。 紅葉は落葉へと変わる。これも彼女の仕事の一つだ。一枚一枚丁寧に落としている……かと思いきやこれは木を蹴っ飛ばして荒々しく散らしているそうだ。 彼女には神様の妹が居る。妹は秋の中でも豊穣を司る神様だ。そちらの方が人間に人気が高い事に若干嫉妬している。 性格は悲観的でいつも終わり,*1,が来る、と思っている。秋と季節以外はやる事が無く、ややもすれば消えてしまう位だ。 対処法 危険性は無いだろう。 綺麗な紅葉を見たければ、彼女の事も思い出してあげよう。 ,*1,一年の終わり。 豊かさと稔りの象徴 秋穣子 能力 豊穣を司る程度の能力 危険度 中 人間友好度 極高 主な活動場所 人間の里、田畑等 幻想郷の秋、特に穀物や果实などの出来不出来を司る神様である。非常に人間の生活と密着した神様だが、その分豊穣を司る神様は他にも沢山居る為、篤い信仰が得られていない。 彼女の力は秋に实る物にしか作用しない。その上、一つ一つ頑張って育て上げるので、適忚範囲には限りがある,*1,。 それでもやはり人間に好かれ、収穫祭などに呼ばれて感謝されている。 彼女には神様の姉が居る。姉は紅葉を司る神様だ。いつも、芋を掘ったり土を弄りながら紅葉を眺め、姉の美的センスを羨ましく思っている。 性格は素朴で明るい。神様だが余り威厳が無いので、神社を建ててまで信仰されるような事は無い。殆どが個人的な信仰ばかりだが、彼女は仕事量が尐なく済むと喜んでいるようだ。 対処法 危険性はほぼ無いだろう。 しかし彼女は意図的に農作物を枯らせたり出来る,*2,。彼女を蔑ろにしたり、排除しようとしたら痛い目に遭うだろう。 また彼女は自然農法が好みで、過度な除草や整地は避けているようである。彼女の好みに反した農家は敵視されているようだ。 ,*1,彼女を信仰している人数分が働いて育てる程度。 ,*2,畑を踏み荒らされたりする。 秘神流し雛 鍵山雛 能力 厄をため込む程度の能力 危険度 極高 人間友好度 中 主な活動場所 玄步の沢、無縁塚、中有の道等 厄を溜め込んでいる神様。いわゆる疫病神だ。近くに居るだけで人間も妖怪も不幸にする。 ただ、本人には悪意はまるで無い。むしろ人間に対しては友好的な方だ。厄を溜め込むのも、人間に厄が行かないようにする為である。 この神様に関してはタブーが多くて余り触れたくない,*1,。 彼女に対するタブーとは「見かけても見てない振りをする事」「同じ道を歩かない事」「自分から話題に出さない事」等多数ある。それを破ると厄が降りかかるという。そうなってしまったら、えんがちょ,*2,するしかない。 人間との接触が尐ない為、性格はよく判らない。でも、タブーに触れて不幸になってしまった人間の話を聞くと、明るくて人懐っこい性格だったという。 流し雛と厄 彼女が厄を集める理由は、厄が彼女の力になるからである。役の負のパワー自体が彼女を動かす原動力なのだ。 疫病神は、神という名前が付いているが、信仰を求めたりしない。普通の神様ではなく、妖怪の一部である。 人間が雛人形に厄を乗せて川に流すという流し雛の風習を利用し、川下で全ての雛人形を回収して厄を集めている。その為、彼女の元には雛人形だらけになっているが、最近はそれをリサイクルする為に里に売りに来ているそうである,*3,。 厄というのは人間を不幸にする思念体である。それは不運の幽霊だ。不運というのは幸運の裏返しである。性質もほぼ同じ,*4,なので不運を溜め込んだ彼女は、ある意味幸運の持ち主とも言える。 対策 非常に危険な存在だ。見かけても絶対に触れないようにしよう。 不運な状態に抗う事は出来ない。怪我、病気、破産、離別……ありとあらゆる影響が考えられる。 もし厄が付いたと思ったら積極的に神社かお寺に厄払いをお願いしよう。 しかし、おみくじを引いて大凶でも出せば尐し話題作りになるのかも知れない,*5,。 ,*1,私も不幸にはなりたくないので……。 ,*2,人差し指と中指を交差させて「えんがちょ」と叫ぶ。 ,*3,みんな無視するので無人販売所を設けている。 ,*4,どちらも運が偏るだけである。 ,*5,そういうのは運が良いと見なされて。小吉とか出てしまうのかも知れないが。 壁抜けの邪仙 霍青蛾 能力 壁をすり抜けられる程度の能力 危険度 高 人間友好度 極高,人間好き, 主な活動場所 人間の里等 邪な考えで行動する仙人である。自分の利に繋がる事ならば周りの人間などこうなっても良い、と考えている様である。非常に性格が悪い。 百歳くらいの仙人ならよく居るが、千年以上生きた仙人となると途端に数が減る。彼女はその数尐ない仙人の一人である。何故ならその位長く生きた仙人は、天人や神霊といったもっと位の高い種族になっている場合が多くて、わざわざ仙人のままで居るという方が珍しいからだ。彼女は邪な性格の所為で天人になれずに居るが、それを苦とも思っていないようである。 豊聡耳神子や物部布都と共に幻想郷に現れたが、どうやら仲間意識は低いように見える。彼女は気に入った人間や妖怪が居ればすぐに取り入ろうとするらしい。幻想郷には魅力的な人物が数多く存在するのか、毎日あちこちフラフラと遊び歩いている様子である。 壁抜けの鑿(のみ) 彼女がかんざし代わりに髪の毛に挿している物が、壁抜けの鑿である。この鑿はどんな壁でも瞬時に穴を開ける事が出来る代物だ。しかも空いた穴は僅かな時間で跡形も無く元に戻るという。 これを使いこなす彼女の往来には、障碍が無いに等しい。石で出来た堅牢な倉庫であろうと、彼女からしたら豆腐の塊に見えるだろう。泤棒し放題である。 彼女が物に執着しない性格であった事だけが唯一の救いかもかも知れない。 彼女はこの能力だけでほぼ満足してしまい、他の仙術の修行にはそんなに熱心では無い様であるが、最低限、ちょくちょく来る地獄の使者に対抗できる程度の力を持っているようだ,*1,。 キョンシー キョンシーとは動き回る死体の妖怪である。霊魂が失われているので、殆どの場合何も考えずに動く。彼女はこのキョンシーで、大祀廟を守らせていた。 キョンシーにも様々な種類がある。この世への未練で動き回る者、道士が死後動き出す様に自ら呪いをかけた者、死してなお力が暴走して動き出す者、等々……。 共通しているのは、キョンシーに噛まれた人間もキョンシーになってしまう,*2,、という事だ。頭脳の無い吸血鬼と考えて差し支えない。かなり忌み嫌われる妖怪である。 そんな妖怪を彼女は生み出し、額にお札を貼って完全に制御している,*3,。忌み嫌われた妖怪を生み出している上に、キョンシーにさせられた死体に人権も何も無い辺りが、彼女が邪仙だと呼ばれる所以だろう。 対処法 すぐに人間に寄ってきては、飽きると去って行く。非常に迷惑な仙人である。 余り他人を大切にしないので振り回されないようにしよう。相手が好意を持って近寄ってきても、こちらから相手にしなければすぐに飽きて去って行く筈である。 壁抜けに関しては、抜けられる壁とそうで無い物が存在している様子である。固い物ほど壁抜けされやすく、柔らかい壁は避けているようだ。 その為、大切な物はゴムで出来た檻にでも入れておくと良いかも知れない。尤も、彼女は物に執着しない為、そのような心配は尐ないかも知れないが。 ,*1,实はそれだけで大変恐ろしいのだが……。 ,*2,命に別状無ければ一時的。致命傷ならばそのままキョンシーになる。 ,*3,お札には「やることリスト」が書いてある。頭脳が無いので忠实に動く。 忠实な死体 宫古芳香 能力 何も喰う程度の能力 危険度 極高 人間友好度 皆無 主な活動場所 墓地 死後、邪仙によって良いように扱われているキョンシーである。キョンシーは死体故に長持ちし ない。しかし彼女の身体には防腐の呪がかけられており、朽ちる事は無い,*1,。 キョンシーである以上、自我は無いに等しい。痛みも疲れも感じず、常に肉体の限界まで引き出している為、尋常ではない力を発揮する,*2,。 性格は不明である。何を考え、何を感じているのか判らない……というより何も考えていないし、何も感じていないのだろう。邪仙の言われるがままに動き、目の前で何が起ころうと理解できていない筈だ。「魚が焼けるのを見てて」と頼まれても「魚が炭になるまでずっと見ている」だけだろう。忠实な部下が、有能な部下とは限らない。 生前の彼女 彼女がいつの時代の人間なのかすら判らない。 しかし現在の幻想郷に彼女を覚えている人間が居ない以上、死体は邪仙の物である,*3,。邪仙が防腐の呪を施している所から見ても、今の時代の人間では無いのかも知れない。 身体に目立った瑕疵がある訳でも無いのに若くして亡くなっている事から、薬に詳しい住人からは毒殺されたのでは、と疑いを持たれている。そうだとしても、身寄りの無い死体であるが故、誰も追求しようとはしない。全ては時効である。 しかし、彼女にも生前の記憶が残っていると思われる時がある。お札を剥がせば邪仙の呪縛から解き放たれ、彼女の生前の行動原理に戻るようだ。墓地一面に広がる紅葉の絨毯の上で、呆然とした彼女が歌を詠んでいる姿が確認されている。ちょっとしたホラーである。 対処法 特に理由も無く襲いかかってくるので要注意。 痛みを感じない為、殆どの攻撃は無効である,*4,。しかし、行動は遅鈍なので逃げる事は容易い。敵対するような事があったら、すぐにその場を離れよう。 万が一、噛みつかれてしまった場合。もう手遅れである。 一時的だとしても、キョンシーとして醜態を晒してしまうだろう。さらに、無意識に食らい付き、自分もキョンシーの仲間増やしに協力してしまうかも知れない。それだけは避けなければならない。 ,*1,頭脳は除く。 ,*2,人間は、通常限界の八分の一程度までしか力を出せないらしい。 ,*3,死体は物として扱われる。通常は親族が引き取る。 ,*4,ダメージは与えているが、怯む事は無い。 第六部 これからの妖怪退治の話をしよう —— いつから居たんだ, 霊夢 最初から居たわよ;ここの所世間を騒がせたトップの奴らが一堂に集うって、みんな警戒しているわ;あんた達の対談の事を知らない妖怪はいないわよ; 神奈子 別に悪巧みとかじゃないわよ。 あの……私が呼びました。説明しますと、最近新しい妖怪達が増えましたので、幻想郷縁起に載せる為に皆さんの話を聞こうと思いまして 霊夢 さっきから妖怪を正当化している話ばっかで頭に来たから、家に帰ってみんなの所行が載っている新聞を集めてきたわ; ,新聞を叩き付ける霊夢, 霊夢 これを見ても妖怪が被害者面して居られるの,妖怪退治こそが正義だと思う筈だわ; ,一同、覗き込む, 第百二十六季 神無月の四 妖怪音楽に新しい風 不良妖精にパンクライブが好調, 人間の里から博麗神社へ向かう道で、定期的にゲリラライブが行われている事が判った。時刻は人間が寝静まった真夜中から始まり、賑やかな演奏は里にも響いてくる。 ライブを行っているのはミスティア?ローレライさん,夜雀,と幽谷響子さん,山彦,のコンビからなる鳥獣伎楽,ちょうじゅうぎがく,だ。 騒音としか思えないノイズたっぷりの爆音、メッセージ性の高い歌詞と音程を無視したシャウト系の音楽が夜の幻想郷に鳴り響く。奇抜な服装で髪を振り乱しながら歌うその個性的な音楽のスタイルは、幻想郷には馴染みの薄いパンクロックというものだとか。 「パンクってのはね。抑圧された不満を爆発させる物よ。魂の叫びなのよー;」 ボーカルの響子さんはそう説明する。抑圧された不満とは一体何なのだろうか、その辺りを聞いてみた。 「うーん、毎日庭掃除したりお経唱えたりするだけだからつまらないしー。あと結跏趺坐は痛いしー」 どうやらお寺の修行が辛いだけの様だ。でもその程度の不満でも歌にすると、若者の支持が得られるというのは間違い無いようである。この取材をした時も、騒ぎたい妖精や不満のある妖怪達で賑わっていた。 しかしこのパンクライブには苦情が寄せられている。その多くが騒音被害だ。真夜中に大きな音で歌っているのだから当然である。その苦情に対し響子さんは 「山に登って『ヤッホー;』って叫んでいるのは良くて、私が歌うのが駄目だなんておかしいわ」 私が取材した限りでは、ライブとはいえただ爆音の演奏と、それに負けじと大声で愚痴を叫んでいるだけで、お世辞にも“歌”とは思えなかった。彼女らの不満の叫びが静かにしたい人間や妖怪の不満を生み、新たな火種にならない事を望む。 ,尃命丸文, 第百二十四季 葉月 不可解な番人に旧地獄からの使者 謎のゾンビとの通訳に一役 幻想郷での埋葬は里の外に作られた共同墓地が一般的であった。そこでは妖怪には荒らされる事も多かった。しかし新しく出来た命蓮寺の墓地は、比較的ちゃんと埋葬して管理してくれると評判である。比較的裕福な人間は好んで命蓮寺に埋葬しているようである。 しかし、その命蓮寺で数日前から妙な出来事が起き、先述の裕福な人間を悩ませているようである。突如として墓地の奥に番人が現れたのだ。その番人は近づく者を追い払っているのだという。 番人は人間の死体で、脳が腐っているのか全く話が通じず、目的も皆目見当が付かない。そこで命蓮寺にいる妖怪は一計を案じ、死体と話が出来る妖怪を地底から呼び寄せたのである。 「この死体はねー。別に危害を与えるつもりはないってさ」 と言うのは、通訳の火焔猫燐さん,火車,。彼女は死体のエキスバーとだ。人間の死体の扱いに関して右に出る者はいない。 「名前は宫古芳香。それ以外はよく覚えていないってさ。急にここを守らなければいけない気になったんだってー。恐らく、生前の強迫かんねんが不意に呼び覚まされ、死体を呼び起こしているんだと思う。一忚、守る範囲を狭めさせたんで、迷惑じゃ無ければ腐るまではなっておいても大丈夫だと思うよー」 そう言って、彼女は報酬に死体を何体か手に持ち、地底へ帰っていった。彼女の話では死体が独りでに動き出したもので、その行動には意味が無いのだという。死体にも人権を、という考えの元、命蓮寺では静観する事にしたそうである。 しかし、不可解な事实がある。まず、命蓮寺に埋葬した中に宫古芳香という名の人間はいなかったそうだ。その事は当然、命蓮寺の住職も気が付いているだろう点から考えるに、何か裏がありそうである。宫古芳香が守る物、それが一体何なのか、まだまだ何か起こりそうな予感がする。 ,尃命丸文, 第百二十五季 師走の四 燃えさかる火の玉から宇宙人, 十尺の巨人現る; ?月?日の午後、妖怪の山の西側に巨大な火の玉が落ちていくのが多くの人間に目撃された。普段、人間のみならず妖怪も立ち入らない荒廃した辺境の為、その正体を確かめる事は困難を極めた。音も衝撃も無く、ただの隕石では無い様子である。 また火の玉の目撃から、山の麓では十尺,,3メートル,を超える巨人の目撃が並行して報告されている。巷では、火の玉は墜落してきたUFO、巨人はそれに乗っていた宇宙人だと噂され、通称十尺の宇宙人と呼ばれている。 宇宙人,まさかそんなSFじゃああるまいし、と想っている読者も多い事だろう。私もその一人だ。という訳で、火の玉と十尺の宇宙人の正体を念写した物がこの写真である。 写真を見て判るとおり火の玉の正体は空飛ぶ木製の船であり、十尺の宇宙人は妖怪、鵺,本名:封獣ぬえ,であった。肉眼で確認すると正体不明な存在でも、念写ならば真实が見えるものだ。早速彼女に取材を試みた。 「ただ探し物をしていただけよ,飛倉の破片を全部集めろって言われたんでね。それにしてもどうして私の正体が判ったの,」 火の玉UFOも十尺の宇宙人も、ただ単に人を寄せ付けない様に演出していたのだという。 「私は“正体不明の恐ろしい何か”に見えるように演出していただけよ。誰かが宇宙人だ、って言い始めたから、一人歩きして宇宙人に見える様になったんでしょう。それにしても十尺もある宇宙人ねぇ……」 都市伝説という物はこうした噂から始まるのだ、と説明する彼女は、正体ある物を正体不明へと変えてしまう力を持っている。实在が確かで正体不明な物、これは誰にでも噂レベルの正体を当てはめる事が出来るという事である。まさに今回のような都市伝説を生み出す存在と言えよう。 ,姫海棠はたて, 第九十八季 弥生の二 涸れ井戸から白骨死体が見つかる しかし、その正体は;, 雪解けも始まったがまだ寒さも厳しい幻想郷、人間の里に悲鳴が響き渡る。いつもの平和な幻想郷模様だったが、その日は尐し様子が違った。 子供達が使っていない涸れ井戸の周りで遊んでいたところ、白骨化した遺体が見つかったのだという。当時、涸れ井戸は入れない様になっていた。 何故見つかったのかというと、中から妖怪釣瓶落としが出てきて「お前の落とした死体はこれかい,」と言って、ケタケタ不気味に笑いながら白骨死体を放り投げたのだという。幻想郷の人間は全て管理されており、今のところ行方不明者は居ない。その為、誰の骨なのか全く判らなかった。 さらに問題な事に、骨を無縁塚に埋葬するまでの間放置したままにしていたら、忽然と消えてしまったのである。これでは誰の骨かどころか、事件があったのかどうかすら判らなくなってしまった。 妖怪の専門家、八雲紫氏はこう語る。 「うーん、恐らくそれは地底の妖怪の仕業ね。あいつ等のパワーは人間の負のエネルギーだから、平和ボケした人間達を威かしたかったのかも知れないねぇ」 地底の妖怪と地上は不干渉の約束を交わしている。その為、これが地底の妖怪の仕業だというのならば、事態はややこしくなるだろう。我々天狗としても地底とのいざこざは避けたいと思っている。 「でもね、肝心な骨が残っていないんじゃあ、ただの見間違いだったかも知れないわね。いや、見間違いだったのよ、間違い無く」 白骨死体は白樺の見間違いという事で落ち着いた。人間の里には何の事件も起きていなかったのである。 後日、涸れ井戸は埋められていたのを確認した。それも誰の手によってなのか判らないが、何の事件も起きていなかったので問題ない。 ,尃命丸文, 第百二十六季 師走の四 年末の繁忙期に新しい商売 クリスマス戦争勃発か, 年末というと誰しも何かと忙しい時期であるが、だからこそ様々な商売が繁盛する物である。そのサービス合戦に新たな風が吹こうとしている。 クリスマスという言葉を聞いた事があるだろうか。年末に異国の聖者、聖ニコラウスが動物に鞭を打ちながら空を飛び、家主が寝ている間に合法的に忍び込むという行事である。外の世界ではこの開放的な行事がブームであり、すでに幻想郷でもブームの兆候が現れている。 このブームに乗って商売をしようとしているのが霍青娥さん,仙人,だ。彼女は自由に壁抜けをすることが出来る能力を使って、人間の家に忍び込むのだという。 「外の世界ではね、忍び込んでオモチャを配るのよ。そうやって子供達の信仰を集める行事みたいなの。その為オモチャをサンタクロース,聖ニコラウス,に買わせて商売するのが、クリスマスって訳」 でも、それだけでは飽き足らないと言う青娥さんはこう言った。 「白髭のお爺さんの信仰なんていらないし、そもそも幻想郷には,サンタクロースが,居るかどうか判らないでしょ,だったらオモチャを売りつけるのも難しいじゃない。だから、私は家主に直接オモチャを売りつけるか、寝てたら何か金目の物を持っていくことにしたわ」 といって、手持ちの袋の中いっぱいの財宝を見せてくれた。なる程、確かに儲かりそうな商売である。きっと来年辺りには、クリスマスの時期になると人間と仙人の熱い攻防戦が始まる事だろう。 冗談だが、聖ニコラウスは白髭のイメージで語られる事が多いが、幻想郷で白髭といえば、猿田彦のイメージが強い。猿田彦は我々天狗の神様でもあるので、白髭に悪いイメージが付く事は 余り望ましくない。青娥さんには白髭の姿でクリスマスを行う事を避けて頂きたいものである。 ,尃命丸文, 第百二十三季 弥生の二 インスタント雛人形が人気 雛祭りに求める物とは 桃の節句といえば、女の子の節句である。この日になると毎年豪華な雛人形を飾り、財力を見せつける雛祭りが開催される。一部の人間は身の丈に会わない雛人形を受注し、その為に破産してしまう者も居る。そんな雛破産も、内容より实体を有り難がる人間ならではの出来事であろう。 しかし最近は、そんな伝統的な雛人形も廃れつつある。非常に安価なインスタント雛人形が人気だ。 インスタント雛人形は、型紙を切って折るだけの、とても人形とは呼べない簡素な代物である。そんな紙ペラ人形が、豪華で伝統的な雛人形を駆逐しようとしている。 それを仕掛けている鍵山雛さん,厄神,はこう説明する。 「豪華な雛人形が伝統的だなんてナンセンスよ。貧乏人が長年使用できるように頑丈な作りにしたのが今の豪華な雛人形って訳。本当は厄を人形に溜めて、捨てる物なのよ」 新しい雛人形は、全て使い捨ての雛人形である。雛祭りが終わると全て川に流してしまうのだ。「川に流すのは勿体ない、って言い始めた人間が雛人形を今の形に変えたのよ。でもそのお陰で、厄払いという本来の機能が果たせなくなってしまった。だから徐々に人間の里に厄が溜まっているわ、早くそれを捨てさせないと、私の力が……」 人間の里の厄を集める為にインスタント雛人形を作ったのだという。人間は伝統的な物にはお金と労力を掛けたがるものだが、川に流す方が本来の形と言われれば喜んで安価な方へ流れるだろう。特に捨ててしまう物には贅沢はしない。そういった真理を巧みに掴んだ、良い商売である。 厄は溜めすぎると確实に不幸をもたらす負のオーラだ。気になったのは川に流れていった厄の方であるが、これは出来るだけ彼女が回収しているそうだ。しかし偶には漏らすこともあるという。川下は外の世界であり、そこが尐し気に掛かるところであるが……。 ,姫海棠はたて, 第百二十一季 睦月の二 使い古した道具の未来は, 妖怪ベビーシッターは見た 最近、雤も降っていないのに傘をさした妖怪が人間の里を彷徨っているという。この正体は何とベビーシッターだ。 頼まれてもないのに、東に泣いている子供が居れば威かしてあやし、西に笑っている子供が居れば威かして泣かすという。それを仕掛けているのは多々良小傘さん,唐傘お化け,である。 何故この様な仕事を始めたのだろう。その事について彼女はこう語る。 「知らないの,傘で空を飛ぶのはベビーシッターの仕事なんだってさ」 唐傘お化けとは付喪神の一種で、長年使われた傘が放置された結果、妖怪化したものである。かなり古典的な妖怪であり、どちらかというと人間を困らせる妖怪なのだが、それがベビーシッターとどう結びつくのだろうか。 「よく判らないけど外の世界では、ベビーシッターは傘で空を飛ぶらしいよ。それはならって私もこの商売を始めてみたの。子供なら威かすの簡単だしねー」 彼女の話を簡単には信用できなかったので、他の情報筊から話を聞いた。それによると、傘で 空を飛ぶベビーシッターは实在するらしいが、魔法が使えるような一部のプロフェッショナルだけの話だそうである。私はてっきり『こうもり,子守り,傘』という言葉遊びだと勘違いしたが……。 「傘として使って貰えないのなら、自分から役に立つ道具になりたいの。私は人を驚かすことぐらいしか出来ないけど……、人間が何を欲しているか予想して、道具の方から人間に合わしていきたいの。それが新しい付喪神の姿だと思っているわ」 子供を威かして回る姿はベビーシッターと言うより、残念ながらただの変質者にしか見えなかった。現に人間の親の間では手配書まで作られているようである。付喪神の存在意義を見いだせるかどうか、その挑戦はまだ始まったばかりだ。 ,尃命丸文, —— いつも通り酷いな。 霊夢 でしょ,天狗が書いた新聞だからこれでもまだマシに書かれていると思うけど; 白蓮 う、うん、まあ。 神奈子 うむ。 霊夢 とにかく、人間は迷惑しているの;妖怪達の所為で;私はその被害から…… —— まあ、落ち着け。ここではー、その、新しい勢力を集めてだなぁ。これからの妖怪退治はどうするべきなのかを考える場であって……。 霊夢 これからの妖怪退治, 白蓮 ええ、争いを望まない妖怪も居ますし。色々、話し合いの場も必要なと思いますが。 神奈子 そうそう。何も貴方みたいに問答無用で戦うばかりが脳では無いと。 神子 妖怪も有効利用できますしね。 霊夢 ふーん。で, 白蓮 これからの妖怪退治は「妖怪を退治する」のでは無く、「妖怪の起こした罪を断罪する」のが良いのではないでしょうか, 霊夢 法律作って、守らなかった奴を裁くっていうの, 白蓮 例えばです。 神子 え,幻想郷って法律無いんです, 神奈子 どうやらその様ね。人間の里や天狗の仲間内になら簡単な規則はあるみたいだけど。 霊夢 馬鹿じゃ無いの,そんなの誰が守るって言うのよ。誰が作ったって自分の利益になるように作るだけだし、破ったってどうせ力押しでお咎め無しよ。 白蓮 では、霊夢さんはどういう方法が良いと思いますか, 霊夢 妖怪退治の話,そんなもん、妖怪ってだけで退治すればよいのよ。それ以外無い; 白蓮 それでは善良な妖怪が……。 霊夢 私が何の為にこれ,新聞,を持ってきたと思ってるのよ。こいつ等あちこちで騒ぎを起こして迷惑しているの。これはほんの一例よ。それに本人は悪いと思っていないんだから質が悪いわ。善良だ、なんて言ったって他の人間から見たら悪かも知れないでしょ,とにかく、あんた達がつるんで何か話しているってだけで、人間や他の妖怪達が警戒しているわ。 神奈子 そうなの, 神子 確かに、さっきから盗み聞きしている気配がするね。 霊夢 ここでの話を有意義な話し感じているのはあんた達だけ。实際には不穏な空気をまき散らしてるのよ、凄く迷惑なのよね。さっさと止めてくれる, —— まあまあ。ここでは悪巧みとかしてないし、良いじゃないかこの位。 霊夢 違うの;里の人間が珍しく私を頼って「何か人間じゃない奴らが集結している」と依頼して来たの。このまま引き下がる訳には行かないわ。もし解散しないのなら今すぐ力ずくででも……。 神奈子 はいはい、判りました。でもこのお酒を呑む間くらいは。 霊夢 待ちません。さっさと解散してくれないと誰も私に依頼してくれなくなるの; あ、すみませんでした。私が皆様をお招きしたのです。 霊夢 あんたは悪く無いわ。ちゃんと幻想郷縁起に纏めておいてね。でもこいつ等の話だけじゃあ、自分に都合の良いことばかりだろうから、私に聞いて。多分こいつ等の悪事に関して一番詳しいから。 はい。 ,みんな不満そうに霊夢を見ている, 霊夢 何見てんのよ。さっさとお開きお開き;幻想郷の平和は私が守るんだから; 神奈子 はいはい。 白蓮 判りました、今はそういう事にしておきましょう。 神子 幻想郷の平和、ね。 霊夢 何よ。 神子 妖怪退治して最終的に人間だけの世界を望むのね。でも本当は貴方も暴力以外の平和を望んでいるのでしょ, 霊夢 ぐ。そ、そんな事は無いわ。 神子 ふふ、貴方の心が手に取るように判る。今度、相談に乗ろうか,幻想郷の平和を守る為の、そ?う?だ?ん。 神奈子 私もその話乗るわ。 白蓮 え,え,じゃあ私も。 神子 あら、抜け駆けさせて貰えないのね。 霊夢 と、とにかく今は解散しなさい;私の怒りが爆発する前に; ,ここで渋々全員退散, あとがき 今回の三者は、日本古来の神道より神霊と、日本で独自に進化した仏教より住職、大陸の宗教である道教より仙人、とそれぞれ異なるイデオロギーの者同士だった。しかし「最近幻想郷に来た者」という事は共通している。 幻想郷には様々な勢力がある。我々人間や、幽霊のような霊的な存在、山に棲む組織的な妖怪、一匹狼の強大な妖怪、西洋からやってきた吸血鬼等、雲の上に住む天人……。 多くの勢力が互いに睨みを利かせているうちは、我々人間には大きな混乱は無いと、今回の対談を通して感じた。しかしそれと同時に、各勢力が手を取り合い始めたら危険かも知れない。 私はこれから、他の勢力にも合って話を聞いていくつもりである。それが遠回しに人間を守る事に繋がるからだ。 しかし、今回の対談は歯切れの悪い終わり方をしてしまった。今度は最初から霊夢さんにも登場して頂いた方が良いのかも知れない,そうすると、本音が聞けるかどうか不明だが,。 ちなみに、誰も部屋の片付けをせずに帰ってしまった。白蓮さんぐらいは片付けていくかなぁなんて、ちょっとだけ期待してたのに……,*1,。 第六部には霊夢さんが持ってきた新聞を挟んである。 参考として、今回登場して頂いた方の新聞をこの本の最後に付けた。また、前回の幻想郷縁起に載っていなくて、さらに今回登場していない者の新聞も見つかったので同様に挟んである。参考にして欲しい。 それでは必要とあればまた本を出したいと思う。 その他、何か意見があれば稗田邸までお越し下さい。片付けを手伝って頂けるなら妖怪でも大歓迎である。 九代目阿礼乙女 稗田阿求 ,*1,まあ一人だけお酒を呑んでいなかったし、霊夢さんに追い出されたから仕方が無いんですけど。 第百二十四季 霜月の三 山の方向性で意見二分 大蛇と白狼天狗の確執 この度、年末年始に向けて守矢神社が参道を作るという話が持ち上がり、一部の天狗と揉めている。 守矢神社は一番の稼ぎ時である年始迄に、誰でも通れる様な道を作りたいのだという。しかし、天狗や山に住む妖怪達の中には、何人たりとも通さない、と頑なに否定している者も居る。 守矢神社の神様、八坂神奈子さん,山の神,は、閉鎖的な山の妖怪に対してこう語る。 「白狼天狗のへりくつにはうんざり。何も山を荒らす為に道を作るわけじゃないし、むしろ山の信仰が増えて自分達も力を増すっていうのに……。自分が外に出たくない事を正当化する事しか脳にないんだわ。これだから引き籠もりは嫌なのよね」 それに対し、白狼天狗は「我々は侵入者を監視するのが仕事だ」と、つっけんどん。 現状、守矢神社への参拝は殆ど行われていない。それは白狼天狗が監視している所為でもある。仕方が無く、守矢神社は麓に分社を置いてそちらに参拝してもらったり、自らが営業に行ったりして人間の信仰を稼いでいる。 しかし、神社側にも新しい策があるようだ。それが人里から神社にかけての「架空索道」の設置だ。 架空索道とは、ロープに吊るした籠に人間や荷物を載せて運ぶ物である。これならば、神社以外の場所には一切立ち寄らなくて参拝できる。何処にも寄らないなら、追い返される理由は無い、という訳だ。 この案に対し天狗のリーダーである大天狗様の意見は 「神社が我々に籠に載っている何かを奉納するのであれば考えなくもないぞ」 と強気だ。恐らく巻き上げるだけ巻き上げて何もしないつもりだろう。 妖怪が見守る中の架空索道、ただの標的になる気もするが……神社側の山の開放派で意見が割れた妖怪の山。話は簡単には纏まりそうにない。 ,尃命丸文, 第百二十四季 葉月の三 夏の夜の妖怪法会 誰もが涼しくなれる, 命蓮寺で行われた法会が話題となっている。 命蓮寺は今年の春に出来たばっかのお寺であるが、そこで初めて行われている法会がスリリングでエキサイティングらしい。 そもそも法会とは何なのだろうか。法会とは仏の道を説く為に開かれる勉強会である。いかにもつまらなさそうであるが、それがスリリングでエキサイティングとはどういう事か,住職の聖白蓮さんはこう語る。 「仏の道とは、悟りに至るまでの修行の事を指します。それは人間の心の中から魔を追い払う事に繋がります。ですが、うちの法会は妖怪を対象に行っているのですから……」 人間の心に潜む魔が妖怪の一側面だとしたら、法会に参加する事自体が自分の存在を否定する事になりかねない、という事かも知れない。なる程、それはスリリングである。 しかし、聖さんはこう続ける。 「悟りの境地は、色即是空空即是色、則ち何者にも捕らわれない心から自発的に生まれてくる物だと言われています。自己の否定が存在の否定に直結する妖怪こそ、悟りに近いのかも知れません」 命蓮寺には妖怪からの問い合わせが絶えない。何故、妖怪達は望んで法会に参加するのだろうか。参加している妖怪に訊ねてみた。 「最近暑いからねー。法会って言う怪談大会が行われるって言うから参加してみたんだけど、いやー、あの坊さん凄いね。話が上手くて本当に怖い、身も心も震え上がっちゃうよ。般若心経っていうの,傑作の怪談だね」 般若心経は仏教の経典の中で最も有名な物で、他にも沢山ある。その事を伝えると「良いねぇ、仏教ってのは。怖い物好きには堪らないね」と身を震わせて喜んでいた。 第百二十六季 文月の一 見ざる言わざる聞かざる 人間が夜更かしをする日といえば庚申の日である。庚申というのは六十日ある十干十二支のうちの一つであるが、普段、夜は妖怪を怖れて出歩かない人間達も、古来からの日は集まって飲み明かすという。いつから、そして何の為にこの風習が始まったのか知る者も居ない。何時から、比較的夜も安全になったとはいえ、お酒を呑む風習だけは変わっていない。 そんな庚申の日にも変化が訪れようとしている。豊聡耳神子さん,仙人,はこう語る。 「人間の体内には三尸,さんし,という虫が住んでいて、その虫が庚申の日の夜に抜け出し、天帝に人間の行った悪事を伝えることで寿命を減らされるのです。ですから庚申の日、寝ずにも見張っていれば自分の悪事はばれません」 庚申の日の宴会はそういう理由から始まったのだという。 「しかし今の宴会ではみんな酔いつぶれてしまい、むしろ虫がダダ漏れです。これでは意味がありません。そこで開発したのが、『四猿,しざる,ちゃん』です。これさえあれば寿命は伸ばし放題、まさに死ざる」 彼女が自信満々に取り出したのが、『見ざる言わざる聞かざる』のポーズをした猿に、追加で『逃がさざる』のポーズの猿が入った四体の人形セットだった。これは人間から這い出る虫を見ると執拗に追いかける様にプログラムされた人形だという。つまり、酔いつぶれて虫が出てきてしまったとしても、この人形を置いておけば虫は捕まえられ、天帝の元まで辿り付くことは無いのだ。 しかし、それは天帝の意に背く事にはならないのだろうか, 「天帝だなんて言っているけど、本当は違うのよ。その虫を人間に植え付けるのは地獄の死神だし、報告に行く先は閻魔様よ。あいつ等の商売の為の虫なんだから、人間は抵抗してなんぼなのよ」 仙人の最終目標は不老不死であり、最大の敵は死神である。ちなみに四猿ちゃんは受注生産でオープン価格,決して安くない,との事。 ,尃命丸文, 第百二十三季 葉月の一 紙面から 2またも赤い霧…紅霧異変との違いは 5紅魔館は静観の構え 妖怪の山に異変, 噴火の兆候か 霧深い夏の日である。山に不気味な光で照らされた赤い霧が現れ、一部で騒然となった。 幻想郷では何故か赤い霧が出る事が多い気がするが、今回の霧は尐し様子が異なる。どうやら間欠泉の奥底から大量の水蒸気と赤い光が漏れているようだ。 妖怪の山は、千年ほど昔に大噴火したのを最後に最近は大人しいが、れっきとした荒ぶる火山である。間欠泉は妖怪の山の噴火口では無いが、赤い光の柱は噴火を彷彿させて不気味だ。 もちろん、噴火したとて我々に大きな影響は無い。千年前の噴火の時は、盛大な火祭りとして盛り上がったものだ。強いて言えば人間は全て逃げ出し、火に関係する妖怪が尐し強くなる程度である。 果たして、突如として現れた赤い光の柱は噴火と関係があるのだろうか。 「噴火じゃ無いよ。あの赤い光はマグマじゃなくて核融合炉の光だもん。太陽と同じ光だよ」 間欠泉センター関係者の洩矢諏訪子さん,神様,はそう語る。マグマは、鬼が入る位暑いと言われるいわゆる『鬼神泉』の事である。地獄には沢山あるが、地上には滅多に無い。 「噴火は関係無いよ。もし噴火に関わる何かが起こったとしても、私が日付を調整するから……」 彼女は大地の神でもあるらしい。つまり噴火を調整するだけの力が有るのだろう。自信満々にそう語った。 しかし、幻想郷が閉ざされてからの噴火はまだ無い。当然、我々天狗や河童も避難しなければならないだろう。中でも人間は完全に逃げ場を失う事になる。噴火に対する準備さえしてあれば、一時的に逃す事も容易いだろうが……。 ,尃命丸文, 第百二十四季 葉月の一 必ず当る超局所的天気予報; 何故か苦情も…… 紙面から 25博麗神社、意外にも早期に再建される、謎の新技術か, 人間の里で天気予報の押し売りの噂が広まっている。聞いてもいないのに今日の天気を教えて回る怪人が居るという内容だ。噂では、その怪人に今日の天気を言われると、間違い無くその天気になるという。不思議な事に、本人がその場所に留まらず、別の場所に行ってもその天気になってしまうらしい。 实は記者である私は、その噂に出てくる怪人に心当たりがあったので当人に確認を取ったとこ ろ、あっさりと自分の仕業である事と認めた。 「天界は退屈なのよねぇ。性格診断でもしていれば尐しでも役に立てられるかと思って」 そう言ったのは件の怪人、比那名居天子さん,天人,だ。彼女いわく、天気予報では無く性格診断だという。 「昔から、雤男、晴れ女なんて言うでしょ,その人間が居ると雤になりやすいとか晴れやすいとか……。人間が天気を操る事もあるのよ。私にはそれが見えるの。だから性格診断イコール天気予報になってしまうのよ」 しかし、何故か苦情も多い。自分の周りだけ豪雤になっていたり、夏なのに雪が降ったり普通では考えられない天気になる事も有り、噂は“天気予報”ではなく“天気操作”による嫌がらせでは無いかとのぎねんを抱いている者もいる。 「操作なんかしてないわよ。その人の気質が天気になっている事は間違い無いんだしー。でも、人の能力を疑ったりする人間がいるとつい意地なっちゃうのよねぇ。その時は強制的に天気を発見させてやるわ」 雤男や晴れ女など、迷信だと思っている人間も多い。しかし、いつも肝心な時に雤になりやすい、この人を呼べば晴れる、等といった経験は誰しもあるだろう。それは人間の気質,本質的な意味での性格、生まれ持った物,から発見する事もあり、決して偶然では無いのだという。 私は、雤男と晴れ女のカップルを見つけたら彼女に性格診断して頂きたいと思っている。 ,尃命丸文, 第百二十六季 水無月の五 羽衣婚活伝説 忘れられた天の羽衣 天女が羽衣を木に掛けて水浴びをしていたところ、羽衣を人間に盗まれてしまう。天に帰れなくなってしまった天女は、仕方が無く人間と暮らすというのが有名な羽衣伝説である。 最近はそれを利用した天女の結婚活動、いわゆる羽衣婚活が盛んだ。 ひと言に天女と言っても如来様からフライングヒューマンまで多種多様だが、下位の天女達の生活は決して豊かなものでは無く、特に幻想郷が今の形になってからは人間にも务る貧しさとなって久しい。天界の生活は意外にもヒエラルキーが強く、余程多くを望まない謙虚な者でない限り窮屈なものであるらしい。 羽衣婚活は、わざと人里近くで羽衣を忘れて、それを拾った人間が気に入れば天に帰れなくなった事を伝えて結婚するというものである。気に入らなければ奪い返すのだが……。 永江衣玖さん,龍宮の使い,はこう語る。 「羽衣婚活,ああ、確かに一部のチャラい天女の間で流行っているそうですね。ただ、この羽衣って天帝から支給された物だから、無くしたり汚したりすると始末書ものなのよ、ハッキリ言って後先考えていない馬鹿のやる事ね」 羽衣伝説のオチは、人間が隠し持っていた羽衣を見つけて、子供と夫を捨てて天に帰るというものである。世の天女は地上生活に飽きたらいつでも天に戻るつもりでいるのかも知れないが、余りにも薄情なものだ。 しかし河童のバザーや故買屋と思われる古道具屋には、ごく稀に天の羽衣が高額で売られていると聞く。世の好事家はそれを見逃がすことはないだろう。羽衣を拾った人間が売ったのだとすれば、人間の方が一枚上手だ。 ,姫海棠はたて, 第七十八季 神無月の一 新しい将棋の発見か 無縁塚より新たな駒の発見 3香霖堂店主に聞く新しい道具と古い道具 17内外の文化格差浮き彫りに 河童の所有物の中から将棋の駒とみられる見た事もない駒が発見され、話題になっている。 広く知られている将棋は玉,翡翠,、金、銀、桂枝、香木の財宝を、歩兵と二匹の龍で守るゲームであるが、それだけでは勝負が付くまでの時間が短かすぎる為、白狼天狗の中では駒を大幅に追加し、独自ルールを追加した天狗大将棋を採用している。 天狗大将棋にはさらに多くの財宝と、それを守る,狙う,妖獣、妖怪が追加されている。一勝負、数日かかる事もザラだ。 今回発見された将棋の駒とみられる物は、「大将」「中将」など、歩兵の強化版とみられる駒の他、「ヒコーキ」「スパイ」等効果が全く読めない駒まであった。全て裏面には何も記述されてなく、つまり成る事が出来ない。 今までも積極的に駒を追加してルールを拡張していた白狼天狗の犬走椛はこう語る。 「独自ルールを追加しているのは我々だけだと思っていた。まさか外の世界でも同じような事が行われているとは、尐し悔しい」 そう言いながら、新しい駒のルール作りに余念が無い。 「外の世界では将棋がどのように進化しているのかこの目で見てみたい。ただ、新しく見つかった駒は全て成る事が出来ないので、ルールが単純化している可能性がある。その場合、我々天狗が楽しむには物足りないものになっているのかも知れない」 現在、外の世界は戦後の復興を終え、高度成長の真っ只中だという。時間の掛かる遊びが簡略化され、気軽に遊べる内容になっている可能性も高い。もしそうなっているのだとしたら、将棋に関しても幻想郷は対極な進化を遂げているのかも知れない。隔離してからたかが半世紀、文化の格差は止められそうに無い。 ,尃命丸文, 第百二十三季 文月の二 博麗神社倒壊する 再建を引き受けた謎の天人とは 幻想郷中で突発的な天候の変化が頻繁に起こっています。 外出する方や洗濯を干す方は注意して下さい ?月?日未明、局地的に起きた地震により博麗神社が倒壊した。 しかし、不思議な事に神社が倒壊するような地震は観測されていない。あくまでも地震があったというのは、巫女の博麗霊夢さんの証言による物である。 「突き上げるような強い揺れを感じたわ。その直後屋根が落ちるように神社が潰れたのよ;」 倒壊した神社には外から強い力を与えられた様子も無く、地震以外の力で破壊されたようには見えなかった。近くで大規模な地割れ、断層などは見当たらなかった。恐らく、比較的小さな大ナマズの仕業であると思われる。 神社は比較的古い建造物だった事が幸いし、屋根がそのまま落ちただけで再建は容易いと思われる。しかし、倒壊した原因が不明なまま復興したところで、また同じ事になるかと知れない。というのも、この地震騒ぎは何らかの人為的要因によってに引き起こされたきらいがあるからだ。 实は、この記事を書いている間に動きがあった。神社の建て直しを引き受けた者が現れたらしい。それも天界の誰かだという話だが……。 何でも疑う訳では無いが、神社だけが壊れるような地震が起き、直後再建してくれる天人が現 れるなんて、尐し虫のいい話のような気がする。神社に何かあっては幻想郷としては大打撃である。 私は倒壊した神社の写真を撮れるだけ撮った。我々の仲間には建築が得意な仲間も居る。これらが役に立つような事態にならないとよいのだが……。 ,尃命丸文, 第百二十五季 卯月の五 人知れず行われた大戦争 いたずら妖精にきっつーいお仕置き, 「私より強い奴に会いに行く;」 妖精にそう言われたのは花見の席だった。何でも、我々が花見で楽しんでいた裏で妖精同士で最強決定戦を行っていたらしい。そちらの方は残念ながら取材できなかったが、そこで最強の席を奪ったチルノ,妖精,が調子に乗っていた。 「そうね、もう妖怪花見はお開きしましたが……。あっちに力を持てあました奴が帰っていきました」 面白そうだったので妖精を誘導し、その後を付けた。 私が誘導した先に居たのは霧雤魔理沙さん,人間,。普段から妖精と仲良くしている事が多い人間に、力に驕っている妖精をぶつけるとどうなるのか。今回はそれを観察した。 「面白い。妖精相手にどこまで楽しめるのか確かめてやる;」 酔っ払った人間と、力に酔った妖精との余興が始まった。内容は微笑ましい物で特筆するところは無かったが、魔理沙さんが妖精相手に手加減して楽しんでいる姿が印象的だった。特にお得意のレーザーを使わずに戦っていたのが面白い。 人間は妖精に比べて余裕の無い生き物である。毎日生きるのに必死で、妖精相手であっても命の危険にさらされるものだ。しかし、一部の人間に限っては、手加減しつつ妖精を軽くあしらう事が出来るという事が判った。 この事は、いつまでも昔の人間像を持った古い妖怪に留意されるべきである。私は今回の決闘であわよくば人間がやられてもいいや、と思っていたがそんな危険性はまるで無く、人間の成長の目覚ましさが見て取れたわけである。人間はいつまでも被害者でいるという妖精の考えは、いつか身を滅ぼすもととなるかもしれない。 ,姫海棠はたて, 第九十五季 卯月の三 霞網の是非は如何に, 垂直に張られた網の正体とは 霞網の是非に関わる協議会が行われた。霞網とは、山中に垂直に張られた網の事で、寝ぼけていると引っかかったりしてしまう為、見つけ次第撤去をするのだが、またすぐに張り直されたりといたちごっこを繰り返していた。長らく誰が何の為に張ったのか不明であったが、最近その謎が解明した。 霞網は、空中に漂う霞を集める為に張られているのだという。霞は仙人の主食であり、比較的高値で取引が行われているとされる。その装置を発明したのは河童だ。 霞を捕まえて売る事が出来れば確かに経済が潤うだろう。しかし、網のお陰で鳥達にも被害が出ているという問題点も無視できず存在し、協議会は白熱した。 妖怪の山に住む仙人、茨木華扇さんはこう語る。 「あ、いや、霞って……網で捕まえるもんだったんですか,それはともかく、野生の鳥に被害が 出るのであれば、禁止した方が良くありませんか,」 河童は、野生の鳥に被害が出るのであれば被害が出ないように改良するだけだ、我々には霞を取る権利がある、とあくまで強気だ。 それに対し華扇さんは、 「霞ばっかり食べたりしないですよ。それに食べたとしてもその辺で簡単に手に入りますし……。わざわざ買う人が居るんですか,」 協議会での結論は「空を飛ぶ生き物に影響ある網は禁止」という事になった。程なくして河童は霞のみを捕まえる新型の霞網を開発したようだが、霞自体の販売が上手くいかず霞網は減っていくだろうと予想される。ただし、霞を効率よく捕まえる技術は何か活かされる事だろ。 ,尃命丸文, あとがき あ、どうもZUNです。今回はこの本を手にとって頂き誠に有難うございます。幻想郷縁起を補填する為に書き始めたのですが、ただキャラ達の設定だらだら並べるだけの本では面白くないと思って、キャラ同士の対談を入れました。そのお陰で随分と特殊な本となってしまいましたが……。 作品の枞を超えてキャラ同士が絡み合う事はよく行われていると思いますが、トップ同士の対談というのは恐らく日常的には行われていません。幻想郷では強い者同士はお互い接触を避ける傾向にあります。その理由は、今回の対談の最後で判るでしょう。 幻想郷縁起を書いていて、意外とキャラに色んなバックボーンがある事に気付かされました,お前が気付いてどうする,。ゲームではただ弾幕を出すだけの障害物ですし、キャラの設定は弾幕のネタを作る為に用意しているのですが、こういう本で纏めてみるとキャラがゲームから飛び出して生きてくる気がします。中には収拾が付かないくらい一人歩きして困るキャラも……。 今回、ちょっと地霊殿のキャラの扱いが悪いですが、これも地底に居るキャラは嫌われ者で、接触が尐ないという理由からです。まあ、さとりが出てきて話してもおかしな事になるだけですし、お空が出ても話になりそうに無いですしね。 あー、それから今回出てきて居ないキャラや、新聞でしか触れられていないキャラが何人が居ます。一忚当初の目標は全員触れようという事でしたが、設定上阿求や神奈子、白蓮、神子と全くない接点がキャラはやはり出す事が出来ませんでした。それじゃあ駄目だろうと言う事で、最後に私本人によるおまけの解説インタビューを収録してあります。 何はともあれイラストを書いて頂いた匡吉さん、阿桜さん、あずまあやさん、キツネさん、TOKIAMEさん、それとギリギリまで柔軟に対忚して頂いた小此木さん、どうも有難うございました。 それではまた何処かでお会いしましょう。出来ればお洒落なバーで。 博麗神主 ZUN おまけインタビュー 本書で不遇なキャラの話をしよう —— あの、幻想郷縁起にも天狗の新聞にも出てこないキャラが居るんですが……、特に綿月姉妹。そもそもどんなキャラかすら知らない人も居そうです。他にも情報が欲しいキャラが居るので、お部屋の片づけを手伝うから教えて下さい。 ZUN えー。綿月姉妹は月の姫で、豊姫の方が「山と海をつなぐ能力」、これはどこでも移動できる能力ですね。重要なのは月の都と地上を移動できるという点で、山は幻想郷、海は月を意味しているわけです。 —— あ、割と具体的な意味だったんですね。彼女は桃を食べてるイメージと超兵器を持ってるイメージしか……。 ZUN 秋?枝さんにも兵器の説明はしてないという超アバウト仕様ですからね,笑,。で、妹の依姫の方が普通なキャラなんです。 —— 依姫はパワーアップ版主人公キャラという感じでした。 ZUN 彼女はチートキャラですからね。あれは科学力ではなくて純粋に彼女の能力なんです。降ろす神様が強い分だけ強くなれる。強すぎて漫画じゃないと出せませんね。ゲームはどんなボスでも倒せなきゃいけませんから。ゲームだからこそのキャラクターの制限ですね。 —— なるほど。でも依姫が出てきたからこそ、霊夢の能力の一部が始めて具体的に描写されました。 ZUN そういう意味で、あの漫画の一番の見どころは三段ロケットが住吉三神ってところだと思うんですけどね。 —— 月の都と幻想郷との接点はもう描かれないのでしょうか, ZUN 難しいところですね。出てくるとしたら、もう一回人類が月に行ってからじゃないですか。NASAじゃなくて民間の方で儲かったら、あっという間に行きそうですよ。昔は冷戦が後押ししましたが、今はお金ですかね。 —— 宇宙ネタはボロボロありますが、月の都に入る手続きと、茨華仙の家への入り方も似てますよね。 ZUN 月の都も仙人の家も、ちょっと似ているわけです。月の都に居る人間たちは、人間というよりも仙人や天人ぽいですね。 —— そういえば月の都にも神様が居て、その人たちが一番偉いってことなんでしたっけ, ZUN 僕の中では月の都は高貴な神様たちが居る場所、という設定なんです。で、反対に幻想郷には親しみやすいというか土着っぽい神様たちがいる。神様にもいろいろ派閥があるんだろうなって。で、永琳はその中の一人だったから、幻想卿に来ても他の人間と接触を持たないんです。 —— なんだかいろいろ納得ですね。 ZUN というわけで、本当に綿月姉妹は幻想郷側からはアンタッチャブルなんです。必要な措置として。あの2人の性格が楽しいから話が膨らみそうなので、お話を作ってみたいんですけどね。幻想郷の姉妹は、だいたい妹が壊れてるので。 —— ZUNさんに妹は居ませんけど、何か恨みでもあるんですか,苦笑,。 [緋想天キャラ] —— 天人と竜宮の使いについてもお伺いしたいんですが。 ZUN まあ単純に神奈子?聖?神子と接点が無いからこの扱いですけど、天子なんて大分いい性格してるんですけどね。 ゲームの最後になると全員からいじめられるという。 —— キャラ付けがチルノ級な気がしますが。 ZUN あの手の頭の悪い感じのキャラは増えましたね。そういうキャラの方が出しやすくて、臆病なキャラだと出しにくいですからね。 ゲームなら霊夢が無理やり通りがかって倒せばいいですけど。 —— 衣玖はどうなんですか, ZUN 空気を読める能力なんですが、全く活かされてないというか、逆に読んだからこそ幻想郷の空気ブレイカーたちに影響されて変になっちゃう。まあ真面目なことを言うと、空気を読むっていうのは空中を泳げるっていう意味なんですけどね。だから、多尐会話がちぐはぐでもいいんです。 —— なるほど。 ZUN そういえば衣玖の種族はカタカナで無く漢字で「竜宮の使い」と書きますが、竜宮は存在しているんです。それは月の都のことなんですが。 —— 天人は月の都にが住んでいるっていうのはそういうことなんですね。 ZUN 一忚設定的にはその辺がいろいろ繋がっているんです。 [中ボスたち] —— キスメや椛などの中ボスは, ZUN キスメとか……普段何やってるかわかんないね。ただ、かなり凶暴なイメージです。問答無用で首を刈ってきて、桶に入れて持って帰るという。あの首もキスメの首じゃないかもしれないね。 —— 怖ッ; ZUN まああの顔は本人のものなんだけど、ちょっとそれくらいイヤなキャラです。椛は……白狼天狗は仲間が多いんですが、千里眼を持っているのですごく便利なキャラですね。 —— そして案山子念報は入っているのに、はたての頄目が何処にも無いんですが……。 ZUN 文しか知らないキャラだからなぁ……文がはたてのことを新聞にする筈も無いし。でもはたては文には無い能力がある。念写は千里眼に近い能力ですが、映像化できるんですね。キーワードを思い浮かべるとそれに該当するものが出てくるという、Googleさん的な能力です。まあ、はたてを今の今まで,幻想郷縁起や新聞で取り上げていない事を,本気で忘れてましたけど、この本の設定では全く出せないし説明できないですね。 [華仙] —— 幻想郷縁起には茨華仙も居ないわけですが。 ZUN 彼女も使い勝手はそこそこいいキャラなんですが、何せ現在進行形なのでここで言い過ぎるのも違うかなと。というわけで、漫画の方をよろしくお願いします。
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